世代交代進む男性ソロシンガーTOP30 2位優里、1位は
米津玄師、優里、菅田将暉――今、音楽界で男性ソロシンガーが盛り上がりを見せている。ビルボードジャパンが発表している、年間楽曲チャート「TOP100」に占める、男性シンガーの総数と曲数を、2014年から21年の上半期まで調べた。すると、昨年頃から大きく増加しており、調査期間のなかで21年上半期は、総数11人、曲数21曲と共に最高値となっている。

特に、無名の新人だった瑛人が昨年『香水』を大ヒットさせ『NHK紅白歌合戦』に出場したり、昨年メジャーデビューした優里の『ドライフラワー』が21年上半期のビルボード総合チャートで1位になるなど、若手男性シンガーの台頭が目覚ましい。彼らのブレイクにはTikTokが大きく影響しており、一般ユーザーの「歌ってみた」動画が拡散して話題となり、ストリーミングで聴かれ、新人ヒットが生まれるという方程式も出来上がりつつある。
本記事では、現在活躍する男性シンガーを探りつつ、注目の若手を紹介していく。そこでまず、ビルボードジャパンの、CD、ストリーミング、ダウンロード、ツイッター、カラオケなどの8指標からなる「アーティストランキング」から、男性ソロをピックアップした「男性シンガーランキング」を作成した(19年12月30日~21年6月27日)。
米津玄師は7部門で1位に
「男性シンガーランキング」を見ると、上位の多くはいずれもブレイクから10年未満で、トップ10の平均デビュー年は2017年。18位から20位に、宮本浩次、平井堅、福山雅治といった25年以上のベテラン勢が並ぶ。ここ数年で、人気の男性ソロが一新していることが分かる。

1位は米津玄師。09年頃からボカロPとして活動し、12年に自身名義でボーカルも務めるようになり、13年にメジャーデビュー。18年発表の『Lemon』は300万ダウンロードを突破し、平成生まれのアーティスト史上初のトリプルミリオンセールスとなった。
そして、20年8月に発表したアルバム『STRAY SHEEP』はCDとダウンロード併せて200万セールスを達成し、ここ10年間のオリジナル作品としては最大のヒットに。CD、ダウンロード以外にも、ストリーミング、ラジオ、ミュージックビデオ、カラオケなど、ツイッターを除く全部門で男性ソロトップとなっている。
2位は、優里。20年にメジャーデビューした、ハスキーな高音ボーカルが印象的なシンガーソングライターだ。19年12月に配信リリースした、アコギで弾き語った失恋ソング『かくれんぼ』が、TikTokで「歌ってみた」動画に使われ、一躍注目の的に。
20年10月にはそのアンサーソングとなる『ドライフラワー』をリリース。これが『かくれんぼ』以上にストリーミングで大ヒット。再生数が1億回、2億回と超える度に大きく報道されて再生数をさらに伸ばし、今年6月に男性ソロ史上初の3億回を突破。「ストリーミング再生数ランキング」でも1位となった。
3位は、俳優としても活躍する菅田将暉。ソロとしての歌手デビューは17年で、18年『さよならエレジー』、19年『まちがいさがし』、20年『虹』と、毎年のようにヒット曲を生み出している。彼の場合もダウンロードやストリーミングでのヒットが報道されることが多いが、項目別で最も順位が高いのがカラオケ。ハイトーンな楽曲やラップなどで注目されるアーティストも多いなかで、"自分なら歌えるかも"と思わせる親しみのあるボーカルと、抜群のタレントパワーも人気の要因だろう。
4位には、ウクレレ&アコースティックギターの弾き語りスタイルの平井大。耳心地のいいサーフミュージックが若い世代からも人気を集める。昨年9月リリースの『Stand by me,Stand by you.』はTikTokで多数使われ、「ストリーミングランキング」で4位に入った。
5位は、作詞、作曲、アレンジに加え、映像ディレクションも手掛ける現役大学生のVaundy。19年からYouTubeに上げ始めたジャンルにとらわれない楽曲を、川谷絵音などのミュージシャンが取り上げ、瞬く間にSNSで話題に。昨年CDデビューも果たした。「ストリーミング再生数TOP30」には4曲が入る。
アコギ系のヒットが続出
6位には、瑛人がランクイン。昨年はメジャーデビューも果たし、ブレイクの年に。『香水』はストリーミングの累計数が2億回を突破し、「ストリーミングランキング」で2位に入る。瑛人や優里のように、アコースティックのサウンドを得意とし、TikTokにカバー動画が多数上がったことがヒットのきっかけとなったアーティストは、11位以下にも複数いる。

13位のもさを。は、女性目線のラブソング『ぎゅっと。』で注目を集める非顔出し系のシンガー。14位の川崎鷹也は、ディズニーの『アラジン』がモチーフの純愛ラブソング『魔法の絨毯』(18年)がロングセラーとなった。サビで「♪愛しているMyra~」と歌う失恋ソング『Myra』で注目のTani Yuukiも16位に。
また近年、若者たちの間で盛り上がりを見せるジャンルのヒップホップ系も3組が入った。11位のラッパーRin音は、『snow jam』が「ストリーミングランキング」で7位に入るほどのヒットとなり、昨年末には日本レコード大賞新人賞を獲得。17位のラッパーの空音は、『Hug feat. kojikoji』が「ストリーミングランキング」で14位に。21位の¥ellow Bucksは、ラッパーオーディション番組で優勝した、名古屋を拠点に活躍するラッパーだ。
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後編「男性ソロのストリーミング トップ30に4曲入った2人は」ではストリーミングの再生回数、CDシングルとCDアルバムのセールスから男性シンガーの人気を分析する。
(ライター 臼井孝)
[日経エンタテインメント! 2021年9月号の記事を再構成]
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