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高収益で低コスト スマートベータ型投信を知る

 市場平均並みの投資成績では不満だが、運用担当者の腕に任せれば勝てるとも限らない――。そう悩む投資家が注目するのが「賢い指数(スマートベータ)」と呼ばれる考え方に基づく投資信託だ。賢い使い方を探った。

「個人が買えるスマートベータ型投信が増えているらしいので、成績などを調べてみたい」。国内外に分散投資を続けている都内在住の不動産鑑定士、下山俊一さん(40)はそう話す。

GPIFが採用

スマートベータとはここ数年、米国の運用業界を中心に広がっている新しいタイプの指数をいう。指数算出会社などが様々な戦略を考え、それを指数の形にしたうえで機関投資家向けに提案している。

国内でも今春、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が株式投資の基準の一つとして採用して脚光を浴びている。個人向けでもスマートベータに基づいて運用する投信が増えている。

スマートベータ型投信は、これまでの投信と何が違うのか。特定の指数やルールによって組み入れ銘柄や比率を機械的に決める点では「インデックス型」に似ている。「決定的に異なるのは、市場平均を上回る成績を目指すことにある」(ニッセイ基礎研究所の井出真吾主任研究員)。

もう一つ新しいのは、銘柄の組み入れに際して時価総額に縛られないようにした点だ。国内のインデックス型投信の多くは、東証株価指数(TOPIX)を基準にしている。

これを基に機械的に運用すると、株価上昇で時価総額が大きくなった銘柄を多く買うことになる。その反対もある。結果的に、割高株を多く抱え、割安株を少ししか持たないことにもなりかねなかった。

伝統的な指数運用から脱却し、より高い収益を目指そうというのがスマートベータ型投信。運用担当者がリサーチなどに基づいて銘柄を選別する手間がかかるアクティブ型投信に比べると、運用コストが低めだという利点もある。

表Aに示したスマートベータ型投信は、それぞれ特定の戦略に基づいて運用。企業の財務指標や経営効率などを重視して、銘柄や比率を決める商品が目立つ。

運用履歴が比較的長い「野村RAFI日本株投信」の運用成績を見ると、過去7年強で、TOPIXを6ポイント上回る(グラフB)。野村RAFIでは、株主資本や当期利益などから見た企業規模を重視。「時価総額の変動の影響を受けないため割高株を買わない効果がある」(野村アセットマネジメント)という。

同様の戦略で新興国株に投資する「ダイワ・インデックスセレクト新興国株式」は昨年末に設定。連動対象の指数は、代表的な新興国株指数を2000年以降で2倍弱上回る。両投信の信託報酬(運用管理費用)はそれぞれ年約1.1%、0.65%。アクティブ型投信の平均よりかなり低い。

低リスクで高収益

戦略としては「低リスク型」も知られる。伝統的な投資理論ではリスク(値動きのブレ)が高いほどリターンも大きいとされてきた。しかし運用の現場では「リスクを抑えた方がリターンが高くなりがち」(DIAMアセットマネジメントの菊地尚文上席ポートフォリオマネジャー)との指摘が増えている。

リスクが小さくなるよう銘柄を組み合わせ、ファンド全体の収益向上を目指すのが低リスク型戦略。個人向けにDIAMが11年に「新興国中小型株ファンド」を設定。逆風相場の中で下振れが小さいことが寄与し、やはり新興国の株式指数を上回っている。

自己資本利益率(ROE)が高い銘柄などで構成し公的年金が採用を決めたJPX日経インデックス400も、スマートベータの一種と見ることが可能。JPX日経400は今年に入り、ROEへの関心の高まりを映すように、TOPIXを上回って推移している。

米国では企業の配当力で選ぶ指数も多くある。例えば25年以上続けて増配している企業で構成する「配当貴族指数」は、運用成績が長期で市場平均を上回ってきた。日本でも同指数に連動する「三菱UFJ米国配当成長株ファンド」が販売されている。

すべての銘柄を等しい金額で持つ「等金額投資」戦略もある。株価が上がった銘柄は一部を売却することになり、割高株を持ち続けなくてすむ効果がある。「野村日本株高配当70」は高配当の銘柄を選んだ上で等金額で持つ。指数はやはりTOPIXを長期で大きく上回っている(グラフC)。

グラフDは、過去20年間の株価データを基に、井出氏が各戦略ごとのリターンとリスクを試算した結果。リターンはいずれもTOPIXを上回っている。リスクを考慮しても全般に成績は上々。ただし井出氏は「1年ごとに見ると戦略ごとに好不調がある。あくまで長期の投資手段として考えたい」と見る。

これまでの効果が今後も続くかは未知数だ。たとえばみんなが「低リスク銘柄」に投資すれば割高になり、この戦略の効果は薄れる。投資しっぱなしではなく効果の持続力に目配りも必要だ。(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞朝刊2014年8月13日付]

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