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摩擦も克服 シリコンバレー流「革新」の起こし方

ブランドン・ヒル(米ビートラックスCEO)

ここ数年、サンフランシスコやシリコンバレーでは「破壊的イノベーション」と表現されるサービスが躍進している。破壊的イノベーションとは、既存のビジネスに対し、インターネットやスマートフォン(スマホ)などの最新テクノロジーを使い全く新しいコンセプトで常識を覆すサービスを提供することだ。

とりあえずやる文化

代表的な例としては、スマホアプリで近くにいるハイヤーを検索し、自分がいる場所に呼べる「ウーバー」。東京でも2014年3月3日に正式にサービスがスタートしている。また、ウーバーの対抗馬とされるユーザー同士の自動車乗り合いサービス「リフト」や、ユーザー間で自動車の貸し借りを可能にする「ゲットアラウンド」、そして無料で音楽のストリーミングサービスを提供している「スポッティファイ」などがあげられる。

これらのサービスは、既存のビジネスの仕組みに当てはめてみると、営業許可や著作権の面での合法性が議論になる。日本の感覚で考えれば「企業にとって、少しでも法的なリスクがある事業は避ける」のが常識。だが米国では、既存の規制にとらわれないことがイノベーションを生み出すために不可欠な要素と考えられている。そして、その考えが最も顕著なサンフランシスコやシリコンバレーでは、日々多くのベンチャー企業がビジネスを創出している。法律的にグレーゾーンと思われる内容でも、とりあえずはやってみる企業が多い。

背景の一つに、最新のテクノロジーを活用したサービスに関わる法律や規制、判例が整っていないことがある。サービスが規制のグレーゾーンにあったとしても、それが本当に素晴らしければ断行してしまうのがシリコンバレー流。その後、制度と擦り合わせながら急成長を遂げてゆく。場合によっては、サービスを大きくヒットさせた後、公的規制に働きかけることも珍しくない。

強制退去の事例も

既存の法律や規制との摩擦懸念が高まっているサービスが、エアbnb(ビーアンドビー)である。エアbnbは、オンライン上で一般の個人宅を旅行者に貸しだせるサービス。09年のサービス開始直後より急成長を遂げ、現在では全世界に展開。13年度の売上高は440億円を超えた。その一方で、個人同士が有料で部屋を貸し借りすることに対し、ホテル業免許の必要性、宿泊税の有無、アパートのまた貸しに対しての規制などへの抵触の懸念もある。

実際にサンフランシスコ市内のアパートの賃貸主が自身の物件を他のユーザーに貸したことが問題になり、強制退去させられた事例も出てきている。これにより、現在サンフランシスコでは、同サービスで部屋を貸すのは市の規制に抵触しているという見解が一般的だ。そんな中で、先日サンフランシスコにあるエアbnbの本社でユーザーミーティングが開かれた。

このイベントは、同社の創始者を含むスタッフとユーザーが議論し、サンフランシスコの市会議員と市長にサービスの理解と規制の撤廃を働きかけるのが目的。議員へのメールの書き方の説明や、署名活動も行われた。力強い味方であるユーザーを巻き込み、政府に働きかける。米国ではベンチャー企業が世の中に与える影響力は小さくない。新しいものを作り出す際に、既存のビジネスや仕組み、制度との摩擦は避けられない。イノベーションを作り出すためには、旧態依然とした制度の改革が不可欠だ。日本の企業もぜひ既存の概念にとらわれることなく、今までに存在しない新しいタイプのビジネスにチャレンジしてほしい。

[日経産業新聞2014年8月12日付]

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