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企業人よ 長期休暇「サバティカル」で力を覚醒せよ

インテカー社長 斉藤ウィリアム浩幸

欧州を中心に、長期勤務者に対し1カ月~1年の長期休暇を付与する「サバティカル」という制度を採用する企業が増えています。これは旧約聖書で神が6日間働き世界を創造した後、7日目を安息日(=サバティカス)とした故事にならった制度。良心的な企業は、その期間の最低賃金も保証しているそうです。1年もの自由な時間があったなら、あなたは何をしたいと考えるでしょうか。

私も2004年に9カ月ほどのサバティカルを経験しました。学生時代に立ち上げたベンチャー企業を米マイクロソフトに売却し、10年以上ほとんど休みもとらずに頑張ってきた自分へのご褒美として、セミリタイア生活を満喫することにしたのです。

その間熱中したのは、わさび作り。日本のそば屋さんに譲ってもらったわさびをカリフォルニアで自家栽培し、手打ちしたそばの薬味とする。最高のぜいたくです。この他にも、料理や釣り、スポーツやレジャーなど考えられる限りの遊びを尽くしました。

サバティカルは私にとって、必要なリフレッシュ期間となりました。自分の人生にとって何が大事なことなのか。あるいは、卒業しなければならないことは何か――。宿題がひとつもないクリアな頭で将来を考えた期間があったからこそ、私は今、日本でベンチャー支援という新しい挑戦ができています。サバティカルをとらなければ、今でも前職と同じように、米国で何かしらのプログラムを書いていたかもしれません。

日本には「休みをとってはいけないオーラ」のようなものがまん延しているように感じられますが、果たして労働者の休暇は、社会や企業にとって重い負担なのでしょうか。大型連休やお盆に一斉に短い連休をとり、何十キロメートルもの渋滞の波に巻き込まれていく様子は、外国人の目から見ると気の毒です。

 休み上手と言われる欧州人でも、頭をクリアにして仕事のことを忘れ去るまで2~3日はかかります。混雑の中で休暇を過ごす日本人のマインドがフレッシュとは程遠い状態にあることは推して知るべしでしょう。中には「仕事をしているよりも休みの方が疲れる」という声さえあります。これこそ本末転倒です。

斉藤ウィリアム浩幸

長期休暇は個人を成長させるきっかけです。趣味に打ち込む。見たことのない風景を見る。新しいものに触れる。あるいは、ベンチャーを立ち上げたり、海外で経営学修士号(MBA)を取得したりする。出産・育児をする。いずれも、仕事の現場にとどまっているだけでは得られない経験です。

もし個人が、誰にも負けない武器を身につけたいと考えたら。企業が多様な個性が輝くイノベーティブな文化を醸成したいと考えたら。その近道のひとつは、思い切った長期休暇の制度を整えこれを利用することです。

改めて、あなたは1年もの自由な時間があったら何をしたいと考えるでしょうか。お盆の5日前後の休暇と、1年の休暇であれば、できること、やりたいことの内容は大きく異なるはずです。現在の日本企業で、「1年休みたい」と言い出すのは難しい。しかし、1年くらい外の世界に出て行っていた人たちが、それぞれの体験や視野の変化に基づいて活躍できるような企業があったら、素晴らしくおもしろいですよね。日本には、こうした部分での変化も必要に思います。

(ツイッターアカウント @whsaito)

〔日経産業新聞2014年8月8日付〕

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