2018年9月23日(日)

ジャストインタイムで半導体適量生産 日の丸の夢

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2014/8/11 7:00
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 クリーンルームを使わず、直径2分の1インチのウエハーから半導体を1つずつ作る、日本発の半導体生産システム「ミニマルファブ」が動き出した。トヨタ自動車グループのジェイテクトが半導体の研究用に初めて採用した。装置を作ったのは産業技術総合研究所と全国各地の中堅・中小企業。巨額投資にあらがう逆転の発想は成功するか。

■初めて採用したのはジェイテクト

2分の1インチのウエハー(右)とそれを格納するミニマルシャトル

2分の1インチのウエハー(右)とそれを格納するミニマルシャトル

 奈良県橿原市のジェイテクト研究開発本部。部外者が入れない部屋に今年、ひっそりと5台の装置が搬入された。レジストの塗布装置、露光装置、現像装置と洗浄装置だ。同社はこれらの装置を使い、写真の現像の要領で半導体回路を描くフォトリソグラフィーの研究を始める。車のパワーステアリングや工作機械を生産する同社がミニマル装置を入れるのはなぜか。車の電装化はパワーステアリングも例外ではなく、半導体を数多く使う。その結果、「デバイスの構造を熟知しないと、開発競争に後れをとる」(長瀬茂樹パワーエレクトロニクス研究室長)。現在はユニットレベルの研究だが「半導体素子まで入り込むことで、競争に勝つ」のが目的だ。そのためには1台が2000万円程度のミニマルファブは敷居が低い。メガファブ用の半導体製造装置は1台数億円以上するのはざらだからだ。それだけではない。長瀬氏はトヨタグループの一員として、必要な時に必要なだけ作るジャストインタイムの発想から「半導体生産は無駄が多い」と感じていた。

 ミニマルファブは高さ140センチほどの細長い箱型の装置をいくつも並べ、半導体を作る。作るものの種類によって装置を簡単に並べ変えられるため、製造工程に無駄がない。この構想を提唱する産総研の原史朗ミニマルシステムグループ長は「半導体のサプライチェーンには大いなる無駄がある」と主張する。まずは半導体の設計段階で検証に多大なコストがかかる。また、多種多様な半導体を作るため「製造装置コストの7~8割がソフトの検証に費やされる」と言う。そしてユーザーが実感する発注単位の大きさ。巨額の半導体投資を回収するには、大量生産しないと割に合わない。よって、数個から数百個単位の発注は受けてもらえない。ユーザーは無駄な在庫を抱えることになる。

 中小企業ほどその悩みは深い。ジェイテクトに露光装置のマスクアライナーを納めた三明(静岡市)もその1社。内藤義之社長は原氏からミニマルファブの構想を初めて聞いた時、「まさにその通り」と思った。グループ会社の三明電子産業(静岡市)の半導体調達でまったく同じ思いをしていたからだ。

 「産業機械のオーダーは多くても100台。しかし、そんな数ではどこも売ってくれない。社内在庫の山を抱えて商売することになる」。しかも、半導体産業の寡占化が進み「事態はどんどん悪化している」という。同社はミニマル装置に共通する搬送機構のPLADも開発。各社に納めている。

 ミニマルファブは半導体の製造そのものは従来のプロセスと同じだ。新しい仕組みではない。しかし、装置の開発は簡単ではなかった。

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