2019年1月24日(木)

日の丸半導体 衰退招いた「分業嫌い」の真相
電子立国は、なぜ凋落したか(4)

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2014/8/21 7:00
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日経テクノロジーオンライン

 日本の電子産業の衰退に歯止めがかからない。特に凋落を一般社会に印象づけたのは、2012年におけるテレビ事業の極度の不振だ。テレビの内需と生産は2010年にピークに達したが、2011年と2012年には壊滅的に急減した。元・日経エレクトロニクス編集長で技術ジャーナリストの西村吉雄氏が、政策・経済のマクロ動向、産業史、電子技術の変遷などの多面的な視点で、電子立国の凋落の真相を解き明かしていく連載「電子立国は、なぜ凋落したか」。第4回と次回(第5回)では、1980年代後半に世界出荷の半数のシェアを誇り、日本経済成長のけん引役だった半導体産業の衰退について検証する。

1980年代後半ごろから電子産業では新たな分業がいくつか発展した。工場を持たないテレビ・メーカーを実現した米ビジオ、米アップルの「iPhone」をめぐるグローバルな分業、そしてパソコンにおける水平分業などが、その例である(図1)。そして半導体産業でも、設計と製造の分業が盛んになった。

図1 米国の大手テレビメーカーのビジオ(左)も、「iPhone」でスマートフォン市場を創った米アップル(右)も、製造を外部に委託しているファブレス企業である

図1 米国の大手テレビメーカーのビジオ(左)も、「iPhone」でスマートフォン市場を創った米アップル(右)も、製造を外部に委託しているファブレス企業である

■ファブレスとファウンドリの分業

1980年代後半から、半導体分野で設計と製造を別々の企業が担うという分業が発展する。半導体工場を持たない「ファブレス」の設計会社と、半導体製造サービスに特化した「シリコン・ファウンドリ」による分業、これが次第に広まる。

なおファブレス(fabless)という言葉は、「fabrication less」から来ている。「製造工場を持たない」という意味である。またファウンドリ(foundry)には本来、鋳物、鋳物工場という意味がある。「鋳物を鋳造するように、シリコンで半導体製品を製造する工場」といったところか。

純粋のファウンドリは、自社ブランドの半導体製品を持たない。その意味で、ファウンドリは製造を受注するサービス業であって、メーカーではない。製品ブランドは発注者(ファブレス設計会社)が持つ。製造工場を持っていなくても、「メーカー」は発注者である。製造者責任も発注者に帰する。

日本の半導体メーカーは、この設計と製造の分業を嫌った。設計と製造を統合した事業形態(IDM:Integrated Device Manufacturer)に最近まで固執し続ける。これが日本半導体産業の衰退の一因、筆者はそう考えている。

■ファブレスとファウンドリの存在感大きく

米調査会社のIC Insightsが実施した、ファウンドリも含めた2013年の半導体売上高調査によると、ランキングの1位は米インテルで、売上高は483億ドル(米ドル、以下同じ)だった。

2位は韓国サムスン電子で売上高は344億ドルである。3位は台湾のファウンドリTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.)で、売上高は199億ドル、4位にはファブレスの米クアルコムが入り、売上高は172億ドルである。ファウンドリとファブレスが、それぞれ3位と4位を占めるに至っている。

なお5位には、メモリー・メーカーの米マイクロンテクノロジーが入った。前年10位だったマイクロンのランキング上昇は、日本のエルピーダメモリを買収した効果である。

成長率はファウンドリとファブレスが高く、統合メーカーは低調だった。2012年に対する成長率はそれぞれ、インテルは2%減、サムスン7%増、TSMC17%増、クアルコム31%増である。中期的にもファウンドリとファブレスの成長率が統合メーカーより高いと、複数の調査会社が予測する。これまで統合メーカーだったところが、自社生産を減らし、ファウンドリへの生産委託を増やしている。

さらにパソコンからモバイル機器への市場転換は、インテルの存在感を小さくし、ファブレス企業(特にクアルコム)の躍進につながっている。ファブレスの躍進は当然ファウンドリに有利に働く。設計と製造の分業、すなわちファブレスとファウンドリの組み合わせは、存在感をますます大きくしている。

■インテルやサムスンもファウンドリ事業に積極的

半導体メーカー・ランキングの上位2社、インテルとサムスン電子は、設計と製造の統合を基本としてきた。インテルはパソコン向けマイクロプロセッサー、サムスン電子は同じくパソコン向けメモリーの最大手だ。その生産規模によって自社生産ラインの償却が可能だった。

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