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サイバー藤田氏、再び大勝負 大量配置転換の勝算

サイバーエージェントがブログやゲームなどのネットサービスを手掛ける「Ameba(アメーバ)」事業の人員を、1600人から800人に半減する構造改革を1日付で実施した。アメーバは藤田晋社長が手塩にかけて育てた注力事業だが、ネット利用のスマートフォン(スマホ)シフトが進む中、成長に陰りが見えていた。今回の決断は成長が見込める事業構造に柔軟に変化する藤田流の「アメーバ経営」といえそうだ。

スマホ普及のあおり受け、主力事業に陰り

藤田晋 サイバーエージェント社長

「今日一番のトピックスになる」――。7月24日、藤田社長は2013年10月~14年6月期の決算説明会でこう切り出し、アメーバ事業の構造改革を発表した。同事業の売上高は全体の約2割だが、正社員の3割が携わっている。その人員を半減し、スマホアプリの開発など成長分野に経営資源を振り向ける。

アメーバは04年にブログサービスとして始まった。ネット広告を主力事業とするサイバーエージェントは2000年に藤田社長が当時最年少で株式上場を果たした。だが、直後にネットバブルが崩壊。苦境に陥った藤田社長が「これでダメなら責任をとって会社を辞める」と、進退をかけてアメーバを立ち上げた。

有名人のブログ開設で知名度を上げて会員を拡大。ソーシャルゲームや仮想空間のキャラクターで交流するアバターサービスなどに事業領域を広げた。会員数は3000万人を超え、日本有数の交流サイト(SNS)に成長した。

ゲームなどの課金と広告収入で売り上げも好調に推移。09年9月期に33億円だったアメーバ事業の売上高は年間約2倍のペースで増え、12年9月期には254億円になった。だが、13年9月期には前の期比14%増の289億円と鈍化傾向が出てきた。

逆風になったのがスマホの普及だ。アメーバはもともとはパソコン用のブラウザーの利用を前提としていた。一方、スマホの普及で、アプリを使ってネットサービスを楽しむ層が増えてきた。友人との交流はミニブログの「ツイッター」や無料対話アプリ「LINE」に移行。ゲームも閲覧ソフト(ブラウザー)で遊ぶカードゲームから、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」などのアプリが台頭している。

サイバーエージェントもスマホシフトの流れを黙って見ていたわけではない。11年から「スマホ企業への転換」を掲げて関連事業を強化し、スマホ広告の取扱高では国内の約3割を占めるトップシェアを獲得した。スマホゲームでも「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト」や「ガールフレンド(仮)」などヒット作を飛ばした。

アメーバもスマホ用のブラウザーで見やすくしたサイトを12年8月に開設。14年春までに約100億円の広告宣伝費を投じて「アメーバスマホ」のテレビCMなどを展開し、スマホ利用者の取り込みを図った。藤田社長は14年4月に開いた13年10月~14年3月期の決算説明会では「アメーバ事業は先行投資を終え、収穫期に入る」と自信を示していた。

800人を配置転換、音楽定額聴き放題など開発へ

だが、直近の四半期業績である14年4~6月期決算では、アメーバ事業の営業利益は2億円にとどまり、予想していた15億円を大きく下回った。これがアメーバ事業の構造改革の直接の引き金になった。サイバーエージェントには事業開始から1年半で業績が好転しない事業は撤退するルールがある。藤田社長が自ら「総合プロデューサー」を務めるアメーバ事業も例外ではなかった。

「グーグルやアップルの支配力が強まっており、ブラウザー(上で展開するサービス)でヒットを飛ばすのは難しい」。藤田社長は7月の決算説明会で、ネットビジネスの現状をこう分析した。アメーバはパソコンのブラウザーでは一定の成功を収めたが、グーグルやアップルのスマホアプリを通じてサービスを提供するプラットフォーム(基盤)では飛躍的な成長は見込めないと判断した。

1600人いたアメーバの人員は事業が2~3倍に成長するのを前提とした陣容という。「今後は緩やかな成長になるので適正サイズに戻す」(藤田社長)。配置転換となる800人はスマホアプリを使った新規事業の開発などに振り向ける。

念頭に置くのが世界で利用者が約5億人に膨らんだLINEのビジネスモデルだ。多くの人が利用するプラットフォームとなる無料アプリを打ち出し、関連サービスに誘導して課金収入を得る。

藤田社長は新サービスの構想の一端も明らかにした。英スポティファイやアップルが買収した米ビーツ・エレクトロニクスが手掛ける音楽のストリーミング配信だ。様々な音楽が定額で聴き放題となるサービスは欧米で普及しているが、日本にはまだ上陸していない。サイバーエージェントは既に複数の音楽ソフト会社と交渉しており、2015年にもサービスを始めるという。

アメーバはネットサービスのブランド名だが、企業ロゴにも採用しているサイバーエージェントのシンボルだ。アメーバの語源はギリシャ語の「変化」を意味する言葉とされる。

京セラ創業者の稲盛和夫名誉会長が提唱する「アメーバ経営」は小規模な組織に権限を与え、自己管理のもとで全員参加で経営を行っていくというもの。これに対し、藤田流はネットビジネスを軸に、アメーバのように柔軟に形を変えながら成長していく企業像を表している。

「アメーバ事業はじり貧ではないが先手を打った」という藤田社長。サイバーエージェントの代名詞ともなった事業に一区切りをつけ、次の成長の形を作り上げることができるのか。藤田社長の新たな挑戦が始まっている。

(村松洋兵)

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