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日本に欠けた起業家精神の教育 親の背中を見せよ

伊佐山 元(WiL 共同創業者兼最高経営責任者)

出張で、学校が夏休みに入った日本に来ている。リクルートのような大企業だけでなく、LINE(東京・渋谷)などのIT(情報技術)ベンチャー企業の大型上場も予定されていて、ベンチャー業界も関係者も多いに盛り上がっている。

仕事の世界に子供を入れない日本

ベンチャー業界が元気になることで、ビジネスの世界が活気づいてくるのは確かだ。ただ、盛り上がりを見せるベンチャーへの関心を、一時的な「バブル」で終わらせるのではなく、「文化」にまで高めるにはどうすればよいのだろうか?――。最終的には、いつもその議論に行き当たる。

ベンチャーを社会に根付かせるために不可欠なのは、教育だ。日本でも大学生や社会人向けの「ベンチャー教室」「起業家道場」的なイベントや、ベンチャーを実践する場である「インキュベーションオフィス」なども増えているが、個人的には、もっと若いうちから仕事やビジネスを身近に感じる環境を作るべきだと考えている。

よく言われているように、米国の子ども達は自宅のレモンやオレンジの実を使って、自宅前でジュースを売ったり、よその家の車を洗車したりする経験を通じて、ビジネスのイロハを覚える。特にシリコンバレーの子ども達であれば、スマホのアプリを作って、米アップルのアプリ配信サイト「アップストア」で販売するなど、ビジネスの種類も様々だ。学校でも、ビジネスに興味のある子ども達には、ビジネスプランコンテストなどへの参加を促しているほどだ。

日本では「仕事の世界に子供を入れない」という雰囲気がいまだに一般的だ。しかし「なぜ働くのか?」ということを若いうちにきちんと理解することは「なぜ勉強するのか?」という議論にもつながり、非常に有益なことだと考えている。

実際に、私が現在の会社を設立したときに、シリコンバレーで成功した友人にアドバイスされた。「あなたが起業して、ビジネスプランを書いて、お金を調達して、パソコンを買って、オフィスを借りて、家具を入れて、社員を雇い会社を作ってゆく。そのプロセスをできる限り、あなたの子ども達に見せなさい。それが最良の勉強になるから」

どうやってお金稼ぐのか、興味津々

会社にやたらと子ども達を連れて行くことはできないかもしれないが、週末に作業を手伝わせ、意識して会社の雰囲気を感じてもらうようにすると、確かに子ども達の私のビジネスへの関心度は上がった。見ていないようで、子ども達は親が何をしているのか、どうやってお金を稼いでいるのか、興味津々なのだ。

なぜ私が頻繁に出張するのか? なぜ夜遅くまで電話会議するのか? なぜ人がやらないことをやるのか? 嫌なこともやらなければならないのか? 多くの判断は、完全な情報や計画のない中で進まなくてはならない。

こういったビジネスの要素を少しずつ理解することで、仕事が生きてゆく上で不可欠で、良い仕事をするためには、常に新しいことを学び続け、リスクをとることが大切だと感じているようだ。

子供は親の姿を見て育つ。学校や塾以上に、やはり子供の最大の教師は親だ。せっかくの夏休み、ぎこちなく思うかもしれないが、仕事の話、生きる意味、新しいことに挑戦する意義、そんな話を親子でしてみたらどうだろうか。たわいのない会話でも、子供にとっては夏休みの宿題以上の、最高の勉強になるはずだ。

[日経産業新聞2014年8月5日付]

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