横浜・三ツ沢の傾斜マンション、応急工事へ協議

住友不動産が2003年に分譲した横浜市内のマンション「パークスクエア三ツ沢公園」の全5棟中、B南棟が傾斜している問題で、同社は調査結果を踏まえ、B南棟で8本、隣接するB東棟で1本、合計9本の基礎杭が支持地盤に届いていないことを認めた。2014年7月27日に開いた住民説明会で明らかにした。
B南棟とB東棟とをつなぐ渡り廊下の手すりが10cm程度ずれていたことなどを不審に思った管理組合が14年3月、ボーリング調査を実施。その結果、一部の基礎杭が支持地盤に届いていない疑いが浮上した。住友不動産と設計・施工者の熊谷組もボーリング調査を実施。その結果から基礎杭の瑕疵(かし)を認め、住友不動産が6月9日に施工ミスを公表した。

「施工中から傾斜の可能性も」
住友不動産は住民説明会で、傾いているB南棟に加えて、新たに基礎杭の瑕疵が判明したB東棟の住民の希望者に対しても買い取りに応じると発表した。販売価格を全額返還する。不動産取得税や修繕積立金など購入や保有に要した実費も支払う考えだ。既にB南棟では全住戸の仮住まいの転居先が決定している。
B南棟について同社は、当面の応急工事として支持地盤未達の基礎杭の周辺に、鋼管杭を増設することを提案した。応急工事の内容は既に、耐震診断の評定などを行う一般社団法人の建築研究振興協会(建振協)に審査を依頼。「大地震時の転倒防止などに有効」との見解を得ていることも住民らに伝えた。
同社は瑕疵が発生した原因について、「直接の原因は杭の施工不良だが、設計時に十分な地盤調査を実施していれば防げた可能性がある」と言及。「施工中から傾斜していたことも考えられる」と設計・施工者である熊谷組への不信感をあらわにした。

建基法違反の説明不足に不信
住民説明会の質疑応答では、管理組合の理事会が冒頭、住友不動産などの説明不足を指摘。「現況のB南棟の構造計算書を精査すると、部材に生じる最大応力が許容応力度の9.99倍となっている部分があった。建築基準法上の一次設計が成立していないのに、その説明がない」と住民軽視の姿勢を批判した。
熊谷組は一次設計が成立していない違法状態であることを認めたうえで、「地盤の反力などを考慮した工学的検証の結果、B南棟は大地震でも倒壊しないとの結論に達した」と発言。住民が、「倒壊の可能性がないのにもかかわらず、なぜ応急工事が必要なのか」と質問すると、「一次設計が成立していない以上、応急工事が必要だという横浜市の指示に従った」と回答した。
住友不動産は今後も、支持地盤に到達していない可能性がある他の基礎杭の調査を継続する。調査結果の発表時期は未定だ。
(日経アーキテクチュア 高市清治)
[ケンプラッツ 2014年8月4日掲載]