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アップル、グーグルも導入 米国で足場固める燃料電池

日経BPクリーンテック研究所
燃料電池のコストダウンと性能向上が進み、日本では1kWレベルの家庭向けコージェネレーションシステムなどの市場が立ち上がりはじめた。燃料電池自動車の実用化も秒読み段階だ。そんな中、米国では数100k~数MWクラスの大型燃料電池を使い、事業者や電力会社向けに、単に装置をモノ売りしたり設計・施工を手掛けるだけでなく、サービスまで手掛けるビジネスモデルが活発化してきた。

燃料電池にはいくつかの種類があるが、米国で注目されるのは、数百kWクラスの「固体酸化物型燃料電池(SOFC)」と数MWクラスの「溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)」である。

量産効果や技術開発によって装置自体のコストダウンが進むとともに、燃料の天然ガスの価格が「シェールガス革命」などによって北米では下がり、採算が取りやすくなってきた。

サービスモデルの典型例は、オンサイトサービスの燃料電池版である。燃料電池事業者が設置のための資金を調達し、設計・施工から、長期の運営・管理までを担い、ユーザーとは固定価格で15~20年といった長期の電力購入契約を結ぶ。

データセンター向けに普及

図1 米アドビシステムズへの設置例(出典:Bloom Energy)

代表例は、カリフォルニア州に本社を置く燃料電池ベンチャー企業Bloom Energy(ブルーム・エナジー)だ。顧客の敷地に同社が燃料電池を設置し、15年間、固定料金で電力を供給・販売する。顧客は、敷地を提供するだけで、初期投資なしで、毎月の電気代を削減できる。発電効率の高さを維持するために、常に定格で運転して排熱を使わない。需要家の電力需要のベース電源を担うサービスを提供する。

バイオガスを使った場合には二酸化炭素(CO2)発生量はゼロに抑えられ、天然ガスを使った場合にも従来の化石燃料を使った発電よりも低減できる。また、燃焼しないことから窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)などの汚染物質も排出しないことからクリーンな電源としてアピールしている。

米国では、こうしたクリーンエネルギーとしてのメリットのほか、停電時にも安定供給できる点が評価され、普及している。主要顧客は、アップル、グーグル、アドビ・システムズ、バンク・オブ・アメリカ、ウォルマート、AT&T、フェデックスなどで、データセンター用の自家発電装置を中心に導入が進んでいる(図1)。

長期固定価格契約に挑戦するソフトバンク

日本では2013年5月に、Bloom Energyとソフトバンクの折半出資によって、Bloom Energy Japanが設立された。同社のビジネスモデルは、米国のものを踏襲する。需要家の敷地に燃料電池を設置して、ベース電源のみを供給するサービスをスタートさせた。

その際、初期投資不要の長期電力供給契約のほか、燃料電池を顧客が買い取ってメンテナンス契約とガス契約を結ぶ方式、燃料電池をリースしてメンテナンス契約とガス契約を結ぶ方式も提案する。

日本の天然ガス価格は、米国に比べて数倍も高いため、一般電気事業者より低価格で電力を提供するのは難しい。そこで、単価はやや高くなるものの長期固定の料金にすることで、災害時の停電と電気代の値上がりという2つのリスクの軽減メリットを電力需要家に打ち出していく。2014年6月の記者会見でソフトバンクの孫正義社長は、「10年間25円/kWhにする」と公言した。

日本ではこれまでに、福岡市にあるソフトバンクグループ企業のオフィスビル、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス、東京汐留にあるソフトバンク本社ビルの研究施設に各々200kWタイプが導入されている。

このうち本社ビルに設置したSOFCシステムによって、街灯への給電、750台のスマートフォン(スマホ)に対する同時充電設備、電気自動車(EV)の充電設備の設置など、災害時における対応策を東京都と話し合って実施しているという。同社は今後、こうした災害対応と長期固定価格をテコに企業や官公庁向けに販促してく考えだ。

電力会社向けに設計・施工

MWクラスのMCFCでビジネスを展開しているのは、コネチカット州に本社を持つFuelCell Energyである。同社の事業で特徴的なのは、電力会社向けにMCFCの設計・施工と共にO&M(運転管理・保守点検)契約を結んでいることである。

例えばFuelCell Energyは、コネチカット州ブリッジポートにある出力14.93MWの燃料電池発電所「Bridgeport Fuel Cell Park」を設計・施工し、大手電力会社のDominionに販売するとともに、O&M契約を結んでいる(図2)。Dominionは、ここで発電した電力をコネチカット州の地域電力会社であるCL&P(Connecticut Light & Power)に15年の固定価格で販売する、長期電力購入契約を結んでいる。

図2 MCFC燃料電池発電所。2.8MWのMCFCモジュール「DFC3000」を5基、カ氏700度(371.1℃)の排熱を回収して0.93Mの蒸気タービンで追加発電することで、合計14.93MWの出力を得る。燃料である天然ガスを脱硫して加温、パイプでMCFCに投入する機械系システム(MBOP:Mechanical Balance of Plant)、発電した直流を交流に変えるインバーター、変圧器などの電気系システム(EBOP:Electrical Balance of Plant)から成る(撮影:日経BPクリーンテック研究所)

同発電所では、MCFC自体の発電効率は47%だが、排熱回収によるコンバインド発電によって52%にまで上げている。固定価格などのコストは明らかにしていないが、FuelCell Energyによると、発電コストは12セント/kWhになるとしている(このプラントと同規模の発電所で現在の米国の平均的価格である6ドル/100万BTUの天然ガスを使った場合)。

この発電コストは原子力や火力発電に比べるとまだ高い。しかし、「ベースロード電源であることと、スケーラブル(拡張が容易)であること、分散電源としてレジリエンス(Resilience:頑丈で非常時に回復力を持つこと)が高まるなどのメリットがあり、多様な電源ポートフォリオの一つとして位置付けられることが分かった」とDominionは評価している。

クリーンエネルギーに行政の支援

もっとも、同燃料電池発電所の実現には行政が深く関わっている。コネチカット州とCEFIA(Clean Energy Finance and Investment Authority)が進める「Project150」の対象電源に指定されたのだ。

CEFIAはクリーンエネルギー向けに設立された官民ファンドで、「Project150」はコネチカット州に150MWの再生可能エネルギーまたはクリーンエネルギーを導入しようというプロジェクトである。MCFCは燃料に化石燃料である天然ガスを使うためCO2を発生するが、米国の化石燃料を使う火力発電所の平均と比べて半分以下で、NOx、SOx、PM10(10μm径以下の微粒子)などの汚染物質をほとんど排出しないことなどが評価された。

ブリッジポート市からも税制上の優遇策を受けている。同燃料電池を設置した地域は元工場であり、ブリッジポート市にとっては、固定資産税などの税収が見込めるほか、前述の災害時の対応や荒廃した工場跡地がクリーンな発電所に変わることによる地区の美観向上にも満足しているという。

さらに同地区は、2012年10月に米国東部を襲ったハリケーン「サンディ」の影響で停電が多発したが、停電時に燃料電池から市の重要施設に電気を供給できるような仕組みも組み込んだという。ブリッジポート市は、同施設がニューヨーク・ボストン間を走る鉄道沿線にあることから、旅客向けに看板を設置して燃料電池発電所のメリットをアピールしている(図3)。

図3 ブリッジポート市が設置した看板。「クリーンエネルギー生む北米最大の燃料電池発電所、ブリッジポート市にようこそ」の文字が躍る(撮影:日経BPクリーンテック研究所)
(日経BPクリーンテック研究所 藤堂安人)

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