2019年3月26日(火)

中国、拝金主義が断つ社会の絆 家族のあり方にも影
編集委員 後藤康浩

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2014/8/3 7:00
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北京中心部には「胡同(フートン)」と呼ばれる細い路地が入り組んだ古い街並みがある。「四合院」と呼ばれ、かつては立派だった家も少なくないが、新中国においては庶民が密集して暮らす住宅地だ。1990年代末に北京に駐在していた頃、時折、そんな街を歩いた。老人が玄関前に洗面器を運んで、顔を洗い、その横を小さな子供たちが元気に走り回り、奥では野菜を刻む包丁の音が響く――。家族がしっかり肩を寄せ合って生きている街だった。

■豊かでもすさむ心

だが、2000年代に入ると、北京の中心部には高層ビルが林立するようになり、急増した車に合わせて道路の拡張工事も進んだため、胡同は次々に取り壊されていった。その頃から中国では家族の問題が少しずつ、いろいろな場面で語られるようになった。

中国の「痛勤」ラッシュの風景

中国の「痛勤」ラッシュの風景

農業で食べられなくなった農民が沿海都市部の工場に出稼ぎに行く「農民工」は家族が離ればなれになる核家族化を加速し、一人っ子政策によって子供は希少な存在となり、大人たちからチヤホヤされるようになった。経済水準が急上昇し、収入が増えるにつれ、人々はカネを基準にしか物事をみなくなった。拝金主義の横行だ。経済格差は拡大し、平均的にも豊かになったにもかかわらず、人の心はすさんでいった。

数年前に広東省のある街で、目の前で車にひかれた幼児が倒れていても、道行く大人は誰も助けようともしないという事件があり、中国全土で大きな話題になった。「助けても何の得にもならない」という心理もあっただろうが、その数カ月前に別の省で、転んだお年寄りを助け上げた若者がそのお年寄りから傷を負わされたと訴えられた事件があったからだ。

「大躍進(1958~60年に飢餓などを引き起こした無謀な経済政策)」、文化大革命、唐山大地震、天安門事件など様々な苦難を乗り越えてきた中国の支えは家族の絆だったが、今はその家族に問題が噴出し、それが社会の安定にも響きかねない要素になりかけている。

結婚はいつの時代でも人生の大きく、複雑なテーマだが、今の中国では単純だ。相手の人柄や考え、親との関係、仕事の将来性などを子細に探り、分析しなくても、資産だけに着目すればいいからだ。お金持ちのみが集まる都市部の結婚情報サービスには女性が殺到し、当然のごとく農村に若い女性は残らない。男女関係の市場経済化が進んだ。

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