核のごみ、埋設後に回収可能か 残る技術的課題
編集委員 久保田啓介

2014/8/2 7:00
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原子力発電で生じる「核のごみ」の処分をどう進めるか。政府が新たな方針を示し体制づくりを急いでいる。4月に決めたエネルギー基本計画は「国が前に出て処分地を選ぶ」と明記。事業主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)の経営陣も刷新した。新方針は「(処分地の理解を得るため)埋設後の回収も検討する」としたが、技術的な課題が残る。

■処分地選び、国主導で本格化

地下350メートルの幌延深地層研究センター

地下350メートルの幌延深地層研究センター

原発の使用済み核燃料を再処理して生じる核のごみ(高レベル放射性廃棄物)は強い放射線を出し、安全なレベルに下がるまで数万年以上かかる。廃棄物を地下深くに埋めるのが「地層処分」。地殻変動の影響を受けにくく、地下水が安定した場所が候補地になる。

電力業界は2000年にNUMOを設け、自治体からの公募で処分地選びを進めてきた。だが進展がなく、7月1日には新理事長に近藤駿介前原子力委員長を充てるなど役員8人を交代。「国と電力業界の責任分担があいまい」と批判されてきた体制を見直し、国主導で候補地選びを本格化する。

処分方法についてもエネルギー基本計画で「回収可能性を担保する」とした。将来、地層処分に代わる技術が開発される可能性も考慮し、政策変更の余地を残すものだ。候補地を絞り込む段階では地元から「数万年以上も安全を確保できるのか」と反発が出ることも予想され、それを和らげる狙いもあるとみられる。

核のごみ埋設時には専用容器(中央の小さな円筒)を粘土層などで多重に覆う(NUMOが製作した模型)

核のごみ埋設時には専用容器(中央の小さな円筒)を粘土層などで多重に覆う(NUMOが製作した模型)

回収の考え方自体は日本独自のものではない。先進各国が処分地選びに悩むなか、唯一処分場が決まり建設が始まったフィンランド・オルキルオトでも国の安全規制に「回収可能性の維持」が盛られている。だが廃棄物を埋設後に安全に回収する技術は確立されているわけではない。

日本でも地層処分の研究は新たな局面に入った。日本原子力研究開発機構の「深地層研究センター」(北海道幌延町)で6月、地下350メートルに掘った水平坑道が完成。地元との約束で核のごみ自体は持ち込まないが、模擬容器を使った実験が今夏から本格化する。

■鋼鉄の腐食、1000年で最大3センチ

核のごみはガラスで固めた後、金属容器に収めて保管する。地下に埋める際には厚さ約20センチの炭素鋼で包み、さらに分厚い粘土層で覆う。放射線を遮り、地下水による放射能の拡散を防ぐためで「人工バリア」と呼ばれる。廃棄物はセ氏300度近い熱を出すため、実験では模擬容器の周りにヒーターを埋めて発熱を再現。発熱で粘土層や地下水に影響が出ないか調べる。

こうして多重に覆った廃棄物を再び回収できるのか。専門家には「炭素鋼の腐食がなければ問題ない」との見方もある。古代遺跡の調査では鋼鉄の腐食は1千年間で最大3センチとされ、炭素鋼はそれに耐える厚さになっているためという。

ただ発熱や化学変化による粘土層の固着などはないのか、地下深くの狭い坑道で遠隔ロボットを使って回収作業ができるのかといった課題が残る。原子力機構の関係者は「いまはどんな技術が必要か洗い出している段階」と認める。

原発が「トイレなきマンション」から脱するため、核のごみの処分は避けて通れない。政府は昨年12月、関係閣僚会議を設けて「処分の実現へ国民的な議論を深める」とした。だが今年になってから会議は開かれず、地層処分自体に国民の理解が得られているとは言いがたい。国はまず回収の技術的課題を提示したうえで、核のごみをどうするか議論を深める必要がある。

[日経産業新聞2014年7月31日付]

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