「忘れ物防止タグ」の基礎知識 財布や鍵に付けて安心
忘れ物防止&紛失トラブル解決(上)
「忘れ物防止タグ」と呼ばれるグッズが注目を集めている。通信機能を備えた小型のデバイスを鍵や財布など、なくして困るものに取り付け、紛失時にスマートフォン(スマホ)のアプリなどと連携して場所を特定する仕組みだ。製品選びのポイントや使い方を3回にわたって解説する。
ボタン型にカード型、利用環境に合わせよう
現代人にとって、落とし物のリスクは高まる一方だ。クレジットカードや鍵などが入った財布を紛失すると、犯罪に悪用される恐れがある。職場の入館証やビジネス文書が入ったかばんをなくすのもご法度。多くの人に迷惑がかかり、同僚や得意先からの信用もガタ落ちになる。
こうした大切な物の紛失の予防や、紛失時の探索に使えるのが「忘れ物防止タグ」(図1)。4年ほど前から多数のメーカーが販売してきたが、2021年4月に米Apple(アップル)が大本命ともいうべき「AirTag(エアタグ)」を投入したことで注目度が高まった。

忘れ物防止タグは、AirTagのようなボタン型のほか、スリムなカード型などいくつかのタイプがあり、何と一緒に使うかで向き不向きがある。
例えば、鍵の紛失を防ぎたいなら、小型のボタン型がよい。AirTagの場合はリングを通す穴がないので、専用のキーリングを組み合わせて使う。
一方、財布用にはボタン型だとやや分厚くて使いづらい。小銭入れならそのまま入れることも可能だが、長財布や2つ折り財布には入れにくい。こうした場合はAirTagではなく、別メーカーが販売するカード型の忘れ物防止タグのほうが適している。
入館証の場合はどちらのタイプでも大丈夫。カード型はホルダーに入れて収納でき、ボタン型はキーリングに取り付ければ利用できる。
音や地図、通知などで探す
では、忘れ物防止タグは、どのような方法で取り付けた物を見つけ出すのか。具体例を図2に挙げた。
探し方は、自分がいる付近とそれ以外とで異なる。前者では遠隔操作して音を鳴らしたり、スマホの連携アプリで場所を特定したりして探し出す。後者では、地図上にタグの現在地を表示させることで、どこに置き忘れたのかを把握する。どこにあるのかわかれば、探す場所もわかる。

そもそも忘れ物防止タグは、スマホとペアリングして使うデバイスだ(図3)。通信にはBluetoothを利用するため、機器同士が接続していれば近くにあるとわかる。

さらに後発のAirTagは、超広帯域無線(UWB)も組み合わせ、スマホからAirTagのある方向と距離も提示する(図4)。こうした機能のおかげで、近くで紛失した場合はほぼ100%探し出せる。

遠隔地での紛失は「協力者」の存在が鍵
外出先など遠隔地で紛失した場合は、ほかの利用者の協力が鍵となる(図5)。同じ製品の利用者が紛失したデバイスの電波を検知すると、本来の所有者に通知するためだ。

そこで気になるのが同じ製品の利用者が近くに何人いるか。ちなみに「Tile(タイル)」シリーズで試したところ、東京都西東京市付近で4000人弱の利用者を確認できた(図6)。

協力者が多いのがAirTagだ。iPhoneなどの利用者のほぼ全員が協力者になり得るからだ。国内ではスマホユーザーの約半数がiPhoneといわれる。人々が行き交う街中なら発見される確率は高い(図7)。

ちなみに忘れ物防止タグの情報は、所有者側とそれを検知した協力者側、どちらも匿名化されるているので安心(図8)。互いに誰なのか知ることなく、検知情報だけが受け渡される仕組みだ。

このほか発見確率を高めるため、公共交通機関の遺失物センターなどに検知スポットを置くところもある。積極的なのは「MAMORIO(マモリオ)」シリーズで、前述したTileもタクシーなどを利用する(図9)。

紛失スマホは「探す」機能で見つける
もう1つ、なくすと非常に困るのがスマホだ。スマホに忘れ物防止タグを取り付けるのは難しいので、別の方法で探す。
自宅でスマホをなくした場合には家族に電話をかけてもらえばよいが、厄介なのは外出先で紛失した場合だ。見つけるためには、あらかじめスマホの「探す」機能をオンに設定しておき、紛失時にパソコンからAppleやGoogleのアカウントでログインし、スマホの位置情報を確認する。
データ通信機能があるので、遠くにあっても音を鳴らしたり、全地球測位システム(GPS)などで現在地を所有者に知らせたりできる(図10)。もちろん、これらの機能を利用するには、スマホの電源が入っていることが大前提だ。

図11~図17には、忘れ物防止タグの売れ筋であるAirTagとTile、MAMORIOの3製品を示した。この中でAirTagは形状が1タイプしかなく、取り付けには、アップル純正やサードパーティ製のキーリングなどを併用して対応する。ほかの2製品は、カード型やデバイスに貼り付けて使うタイプがあり、利用する製品によって使い分けができる。
(1)アップル「AirTag」



(2)「Tile」シリーズ


(3)「MAMORIO」シリーズ


(ライター 原如宏)
[日経PC21 2021年10月号掲載記事を再構成]
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