商用車で世界トップの独ダイムラーは、2025年までに高速道路での自動運転トラックの実用化を目指す。長時間運転から解放される運転手は、車載端末を活用し、オフィスのホワイトカラーのような事務作業にあたることができる。"トラック野郎"の仕事が様変わりしそうだ。
「これからドライバーはトランスポートマネジャーになります」。3日、独東部マクデブルク郊外で開いた会見で、ダイムラーのヴォルフガング・ベルンハルト取締役は「貨物輸送の新時代の幕開け」と宣言。ダイムラーが"運送革命"を主導する姿勢を示した。
ダイムラーは、延伸工事中の高速道路「アウトバーン」を貸し切り、自動運転トラックのイベントを開いた。同社の強みはメルセデス・ベンツの乗用車の自動運転技術を応用できる点にある。
すでに「Sクラス」でドイツの公道100万キロを走破し、昨年9月にはディーター・ツェッチェ社長が「20年までに実用化」と表明済みだ。ドイツと並行し、米シリコンバレーにも戦略拠点を置き、日本勢や米グーグルなどとの水面下の開発競争を繰り広げる。
■商用車効率よく
乗用車の自動運転との違いはどこにあるのか。「トラックは走る楽しみより経済性が重要」と語るベルンハルト氏は「効率、安全、コネクティビティー」の3つの要素を追求していくという。
車両にはセンサーを車両前方など500メートルの範囲まで届くWi-Fiを車両間、インフラ間用にそれぞれ設置。車両前方には100メートル先、45度まで対応するステレオカメラ、さらに最大250メートルまで感知するレーダーなどを設置した。高速道路を最高時速85キロメートルで車線を感知しながら走り、障害物やパトカーの接近を知ると自動的によける。先に下り坂があるとわかれば余計な加速を避け、燃費は5%改善できるという。こうした経済効果は「走行距離が長い商用車のユーザーの方が敏感だ」(ダイムラー)。
自動運転が実現すれば、トラック運転手の働き方も大きく変わる。ダイムラーの自動運転トラックの運転席は右に45度回転。広いスペースでタブレット型の車載画面をなぞりながら、インターネットを介して発注先や納入先との情報交換をする。自動運転中は事務作業に専念し、営業活動も可能だ。サービスエリアの駐車やレストランでの食事の予約もできる。