爽快なドライブを楽しむ橋10選 絶景の中を駆け抜ける

青い空と碧い海の間を縫うように駆け抜ける――。新型コロナウイルス禍が終息したら訪れたい、そこにしかない景色。ドライブして爽快な橋を専門家が選んだ。
1位 角島(つのしま)大橋
山口県 740ポイント 心を奪う青の美しさ
空と海の境目が分からなくなるような一面の青。本州と角島を結ぶ道路の一部である全長1780メートルの角島大橋をドライブする人は、どこまでも続く雄大な「青」に心を奪われる。本州側のエメラルドグリーンの海はやがてコバルトブルーに。「南国とも見間違うほど」(bowさん)というすがすがしい海の色を楽しめる。
「晴れた日にさえ渡るコバルトブルーの海士ヶ瀬(あまがせ)を走る気分は最高に爽快」(藤島知子さん)との声が相次いだ。アップダウンと曲線が魅力で「空を望み、海を見下ろし、橋そのものの建築美を眺められる。直線的な橋では得られない楽しみの一つ」と藤島さんは語る。
その景観美から、数々の自動車のCMや映画、ドラマなどの撮影にも使われた。掘井滋則さんは「まるでコバルトブルーの海にダイブするかのような爽快なドライブウエー。小さな島の脇を通り抜けたり、緩やかなアップダウンがあったりと変化があって楽しい」とこの橋ならではのドライブの楽しさを説明する。橋自体のデザインが風景に溶け込んでいるのも評価のポイントだという。
自動車の愛好家にとっては憧れの橋でもあるようで「行く度に何度も往復してしまう」(国沢光宏さん)という声も。
橋のたもとにある海士ヶ瀬公園には展望台もあり、角島大橋を一望することができる絶景ポイントだ。ただ、連休など人出が多い時期は渋滞も発生しやすく、訪れる時期には注意しよう。橋を見に来た観光客のマナーの悪さが問題になったこともあるため、気を配りたい。
(1)所在地 下関市豊北町神田~角島(2)開通年 2000年(3)全長 1780メートル
2位 伊良部大橋
沖縄県 690ポイント サンゴ礁の海をクルージング

「まるでサンゴ礁の海をクルージングしているかのよう」と掘井さんは伊良部大橋のドライブを振り返る。沖縄県宮古島と伊良部島を結ぶ全長3540メートルの橋は、無料で渡れる橋としては日本最長だ。美しい海を渡るドライブウエーは、どこまでも続いていきそうな感覚になる。
船舶を通すためにアーチ状に高くなっている部分があり、起伏があることから「下っている時の橋、島、海、空の景色を一度で楽しめる」(御領原勇己さん)。晴れた暖かい日に「窓を開けて沖縄の空気を楽しみながら、潮風を受けて走る気分は爽快」で、日ごろの憂さを忘れられそうだ。
この橋を渡るために宮古島に行くという人もいるというほど。吉田由美さんは橋に行ったら「ずっと走り続けたい」と思うのだという。宮古空港から車で約15分とアクセスもいい。
(1)宮古島~伊良部島(2)2015年(3)3540メートル
3位 明石海峡大橋
兵庫県 600ポイント 海峡をまたぐ壮麗な建築美

神戸市と淡路島にかかる、「ロマンチックに輝く世界最長のつり橋」(藪下秀樹さん)。古谷充孝さんは「船が往来する海峡と美しいつり橋、神戸の夜景や六甲山の山並みなど景色がいい」と見どころを紹介する。一方で「眼下の明石海峡を見るとジェットコースターに乗っているような気分になり、高所恐怖症の人は要注意」とも指摘する。
海峡をまたぐ壮麗な建築美も見どころだ。海面から約300mという高さを誇る主塔は「下から見上げると感動する。オープンカーで走りたい」(菰田潔さん)。
藤島さんは「塔の頂上にむかってカーブを描くたくましいケーブルなどダイナミックな建築物を前にすると、人間ってちっぽけな存在だな」と感じるという。
橋は当時の最新技術を結集。建設中に起きた阪神大震災を乗り越え、10年の歳月をかけて完成した。
(1)神戸市~淡路島(2)1998年(3)3911メートル
4位 来島海峡大橋
愛媛県 580ポイント 瀬戸内海に浮かぶ島々を堪能

瀬戸内海のしまなみ海道の一部で、来島海峡に架かる3つのつり橋の総称だ。「車で走れば爽快感抜群なうえ、青い海に点々とある島々、広い空も楽しめる」(ミズサワカノンさん)。穏やかな瀬戸内海に浮かぶ島々の「景色の良さは想像以上。世界初の三連つり橋にも注目で、繰り返し通過する主塔はどこまでも橋が続いていきそうな感覚」(bowさん)だ。
藪下さんは「多島美の海を黄金色に染めて沈む夕日は他に類を見ない美しさ」と表現する。来島海峡は日本三大急潮のひとつで「橋上からは渦潮を見ることもできる」(古谷さん)。原動機付き自転車や自転車・歩行者専用の道路も設けられている。
(1)大島~今治市(2)1999年(3)約4.1キロメートル
5位 瀬戸大橋
香川県・岡山県 560ポイント 夕焼けの美しさに息をのむ

瀬戸内海を渡る6つの橋の総称でもあり「つり橋、斜張橋、トラス橋など多様な橋の建築様式を眺められるのは自然の中の博物館にいるよう」(藤島さん)。塩飽(しわく)諸島を経由し、本州と四国をつなぐ。「瀬戸内海全体の多島景観が楽しめる」(平野暉雄さん)。ドライブは、距離も長いので満足感も高い。
大きな橋が連なる姿は壮観で「ライトアップされた姿もお薦め」(御領原さん)。ミズサワさんも「なんと言っても沈みゆく夕日が美しい。橋も車もうっすら赤く染まり、映画のワンシーンのよう」と日没時の魅力に注目する。パーキングエリアの展望台から橋を間近で眺めることもできる。
(1)岡山県倉敷市~香川県坂出市(2)1988年(3)約9.4キロメートル
6位 古宇利(こうり)大橋
沖縄県 460ポイント エメラルドグリーンの感動

沖縄本島から屋我地島(やがじしま)を経て、小さな離島・古宇利島に行くためのエメラルドグリーンの海にかかる橋。古い言い伝えから古宇利島は「恋島」とも呼ばれる。
「沖縄の海の色は格別。その上を通る橋は最高」と吉田さんは評価する。「周辺の海域はエメラルドグリーンに輝き、橋が視界に入ってきたときには感動的な光景が待っている」(bowさん)
夕日や星空もいいというミズサワさんは「とにかく視界のすべてが美しい。ただ車を走らせるだけですがすがしい気分を味わえる」と強調する。国沢さんによると「この橋を渡るためだけにレンタカーを借りる人も」。
(1)沖縄県屋我地島~古宇利島(2)2005年(3)1960メートル
7位 レインボーブリッジ
東京都 410ポイント 巨大都市東京の夜景が絶品

首都・東京のシンボルの一つ。都心への交通の集中を緩和するために建設されたが、いつしか東京の名所に。首位に推した菰田さんは「走って良し、眺めて良し」と評価する。ビルに明かりがつく日没時には「巨大都市東京の美しい姿が橋の上から眺められる」。東京タワーや高層ビル群の都会の夜景は「100万ドルならぬ300万ドルくらいの価値がありそう」(吉田さん)との声もあがる。
橋自体のライトアップも美しいが「夜間のドライブで周囲に広がる光は、まるで電脳都市」(藤島さん)。御領原さんは「海と高層ビルなどが織りなす景観は東京らしさを感じられ、わくわくしながら車窓を楽しめる」と推す。
(1)東京・港(2)1993年(3)798メートル
8位 東京湾アクアブリッジ
千葉県 320ポイント 東京湾の360度パノラマ

東京湾を横断する東京湾アクアラインを構成する日本一長い橋。「視界を遮るものがないため、360度の東京湾のパノラマをゆっくり楽しめる」(掘井さん)。開放的な海を渡る爽快感はたまらない。「木更津から川崎方面に走っていると左手には横浜の街並みや富士山が、右手には東京スカイツリーが、そして頭上には羽田空港に着陸する飛行機が迫ってくる」(掘井さん)
「長い海底トンネルを抜けたときの別世界感、達成感など様々な楽しみ方ができる」(御領原さん)。「天候や海況によって雰囲気が変わって楽しい」(国沢さん)との声も。人工島・海ほたるには東京湾を一望できる展望台もある。
(1)千葉県木更津市(2)1997年(3)4.4キロメートル
9位 東京ゲートブリッジ
東京都 290ポイント 飛行機と共に駆け抜ける

そのいかつい奇抜な容貌から「恐竜橋」「ザウルス」の愛称でも親しまれる、東京・湾岸の新名所。お薦めのドライブデートコースだという吉田さんは「夕方は羽田空港方面に向かうと景色が開け、大きな夕日が沈むところが見られる。タイミングが良ければ真上を飛行機が通る」という。
船舶を通すために中央部が盛り上がっており「ジェットコースターのようにのぼっていく。西に向かって走る時、頂上付近から見る景色は新しい都会の姿」(菰田さん)と、レインボーブリッジとはひと味違う東京の風景を楽しめる。
(1)江東区若洲~中央防波堤外側埋立地(2)2012年(3)2618メートル
10位 横浜ベイブリッジ
神奈川県 280ポイント 港町横浜の美しさに見とれる

港町横浜を代表するだけあって「みなとみらいエリアを象徴する横浜ランドマークタワーや大観覧車などの景色をダイナミックに望むことができ、客船や運搬船が行き来する様子を眺められる」(藤島さん)。観光都市・横浜ならではの、首都・東京とは異なる都会のドライブが楽しめるのが魅力だ。
菰田さんは夕暮れ時に渡るとみなとみらいの街並みの美しさが強調され「大黒パーキングエリアから、下から見上げる橋全体の景色もいい」と薦める。9月5日まで東京五輪・パラリンピックの特別ライトアップを実施中。「豪華客船や大型貨物船が通過する姿は大迫力」(古谷さん)で港の風情が感じられるドライブになるだろう。
(1)横浜市(2)1989年(3)860メートル
全国で出合える技術と美の融合
海にかかる橋を渡っていくドライブは爽快そのもの。憂さやストレスからひととき解放される瞬間はたまらない。コロナ禍の今は写真で眺めるしかないが、いつか訪れたい橋を取り上げた。
長大な橋の数々には、建設当時の最新の技術が投入されている。東京湾アクアブリッジを含む東京湾アクアラインは、多くの新技術や新工法が実用化されたことから「土木のアポロ計画」と呼ばれた。その総事業費は約1兆4400億円にのぼる。
国内には北海道から沖縄まで、ドライブに最適で風光明媚(めいび)な海上にかかる橋はたくさんある。北海道の室蘭には「湖畔にたたずむ大きな白鳥のような美しさ」(ミズサワカノンさん)という白鳥大橋があり「夜間に走ると幻想的で不思議な感覚を味わえる」。鹿児島県には2020年に県内一長い甑(こしき)大橋が開通し「長いトンネルを抜けた瞬間に海の上。秘境ムードが満点」(bowさん)と注目されている。沖縄県宮古島には伊良部大橋以外にも離島をつなぐ池間大橋や来間大橋など、鮮やかなエメラルドグリーンの海の上をドライブできる長い橋がある。
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(高橋里奈)
[NIKKEIプラス1 2021年8月14日付]
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