涼やか個性派アイスバー10選 柚子・ミカン・メロン…

暦の上では「大暑」を迎え、一年で最も気温が上がる季節を迎えた。夏のおやつの定番、アイスバーでひとときでも涼を楽しみたい。名産品を材料に使い、個性的なおいしさが光るアイスバーを専門家が選んだ。
1位 手しぼりの柚子アイスキャンデー
(高知) 630ポイント ユズと砂糖のみ

原材料はユズと砂糖のみ。11月ごろに収穫する旬のユズを農家から仕入れ、自社工場で1つずつ切れ目を入れて手搾(しぼ)りする。道具を使えば効率よく搾れるが、皮のえぐみが出ないように手作業にこだわる。
飯野修平さんは「雑味のないユズの香りがダイレクトに感じられる」と評価。はなともさんも「さわやかな風味がクセになる」と太鼓判を押す。
(1)1本あたりの税込み価格の目安 173円(2)メーカー 久保田食品(3)URL http://www.kubotaice-shop.jp/shop/
2位 雪師 みかん
(和歌山) 590ポイント 和菓子店の製法生かす

創業120年超のあんこ専門の和菓子店が和歌山ミカンを使ったアイス作りに挑戦した。ミカン果汁に加え、果皮を湯がいてすりつぶしたペーストを入れることにこだわった。下井美奈子さんは「皮のほろ苦さがさわやかさをプラスしている」と話す。
「まるで冷凍ミカンを食べているようなアイス」とシズリーナ荒井さんは表現する。素材から風味を引き出す和菓子製造で培ったノウハウを生かし、香料不使用でもミカンの香りを出せた。
(1)180円(2)きたかわ商店(3)https://issunboushi.buyshop.jp/
3位 茨城メロン100%アイスキャンデー
(茨城) 490ポイント 手作業で果肉くりぬく

メロン生産量日本一の茨城県で初夏に取れた赤肉メロンを手作業でくりぬき、果肉をピューレにして作った。旬は天候などで毎年微妙に変わるため、農家と連絡を取り最適なタイミングを見極めて入荷する。冷やし固める工程まで手で行う。
メーカー担当者が「メロンよりメロンらしい」と話すように、「袋をあけた瞬間からメロンの甘い香りがすごい」(佐藤ひと美さん)。松本学さんは「メロンの果肉を感じさせる豊潤な味わい」と評価する。
(1)220円(2)お菓子のきくち(3)https://kikuchi-okashi.com/
4位 うちだけの味 アイスキャンディー
(静岡) 430ポイント 自慢のとれたてミルクで

静岡県沼津市で60年以上の歴史を持つ牧場の3代目、武井泰章さんが「自慢の牛乳を多くの人に味わってほしい」とゼロからアイス作りを学び、試作を重ねて商品開発した。
牛乳の味を良くするため、牧場で飼う約160頭の牛それぞれの性格を把握して日々観察し、ストレスをためないよう屋根の下を自由に行き来させてのびのびと育てる。
飯野さんは「牧場で飲む牛乳を想起させる味わい」と言い、宇多聡子さんは「さっぱりしつつ濃厚さもあり、お風呂上がりに食べたい」と話す。
(1)160円(2)武井牧場(3)https://www.uchidakenoaji-takeifarm.com/
5位 黒豆アイスバー
(兵庫) 410ポイント 大粒の豆を惜しみなく

「黒い宝石」とも呼ばれる丹波篠山産の黒大豆の餡(あん)と煮汁を練り込み、豆粒も入れた。盆地特有の気候や豊かな土質が柔らかくコクのある大粒の黒豆を生む。霜田奈奈さんは「優しく滋味深いおいしさ。小豆とは違う黒豆のうまみがある」と味を表現する。
手作業の工程にこだわり、豆の風味を損なわないよう50~60度でじっくりと溶解させる。季節や豆の状態で味は変化するため、砂糖や塩の量を微調整しながら整えて完成させる。宝田一夫さんは「商品名からは想像できなかったおいしさ」と話す。
(1)270円(2)丹波篠山食品(3)https://www.ice-sasayama.com/
6位 新潟県産ル レクチエ
(新潟) 350ポイント 独特の香り、年中楽しめる

甘くとろけるような食感と香りが特徴のフランス原産の西洋ナシ「ル レクチエ」は新潟県が全国一の生産量だ。
栽培が難しく、冬前の1カ月ほどしか出回らない希少品でもある。「アイスにして年中楽しめるように」と考えたメーカーが果実の特徴を再現した。
松本さんは「香り、味、食感の全てがル レクチエを感じさせる工夫に感激した」と絶賛する。風味を際立たせるために入れた洋ナシのリキュールが存在感を発揮し、「香りが体中に広がるような上品さがある」(佐藤さん)。
(1)151円(2)セイヒョー(3)https://seihyo.shop-pro.jp/
7位 みかんアイスバー
(和歌山) 330ポイント おいしさ知る農家が味追究

有田ミカンの生産から加工・販売まで手掛ける農家出身のメーカーが「ミカンのおいしさを最大限生かせるように」と果汁を75%使用して作った。産地の有田地域は山の急傾斜が多く、水はけの良い土壌が甘いミカンを育む。原田麻子さんは「ミカンをそのままアイスにした老若男女に好まれる王道の味」と称賛する。
寒天とこんにゃく粉で固めたのが特徴的で、荒井さんは「プルルンとした食感で最後まで楽しく食べられる。あえて口溶けをゆっくりとさせた設計で素材の余韻を楽しめる」と分析する。
(1)210円(2)早和果樹園(3)https://sowakajuen.com/
8位 最高峰の牛乳アイス 特別濃厚ミルク
(北海道) 270ポイント 大地の恵み詰め込む

土、牧草、牛の3要素を研究して試行錯誤を重ね、完全放牧の酪農にこだわる宇野牧場(北海道天塩町)のミルクを使う。
コロナ禍で牛乳の消費が落ち込んだことに胸を痛めた地元経営者らが、酪農家を応援しようとクラウドファンディングで予算を集めて商品化した。
二村英彰さんは「シンプルで生乳のサラサラした感じが良く出ている」と評価する。荒井さんも「口溶けが良くあっさりしていて、口の中でアイスが牛乳になってしまう不思議なアイス」と表現する。
(1)432円(2)w/北海道(3)https://whokkaido.thebase.in/
9位 土佐茶のバーアイス
(香川) 230ポイント ミルクとお茶が優しく調和

地元四国の土佐茶をミルクアイスに混ぜ込んだ。メーカーの親会社が居酒屋も経営しており、カツオのタタキなど高知県の食材を取り扱う関係で、同県内の農家から「うちで作った土佐茶を使って」と持ちかけられた。お茶の香りを引き出す温度管理にこだわり、専門家の指導も受けた。はなともさんは「土佐茶のほろ苦さとミルクの甘さが見事にマッチ」とバランスの良さに驚く。
香川大学農学部が開発した「希少糖」と呼ばれる天然の糖分も使う。佐藤さんは「カヌレ型の個性的な見た目も良い」と話す。
(1)280円(2)アイスビストロヒライ(3)https://icebistrohirai.shop/
10位 宇治抹茶パフェアイスバー
(京都) 200ポイント 豪華さ、味も見た目も

京都府宇治市内の茶房で提供する京都産の宇治抹茶を使った抹茶パフェを、アイスバーとして食べられるように商品化した。粉砕時の摩擦で色や香りが損なわれにくく細かい粒子が特徴の石臼引き抹茶を使う。
パフェに入っているミカンや粒あんがのり、「見た目が豪華で、デコレートしすぎて少し食べづらい」(宝田さん)ほどのインパクトがSNS(交流サイト)上でも人気だ。
佐藤さんは「抹茶のうまみを味わえるだけでなく、舞妓(まいこ)さんを連想させる愛らしい見た目が楽しい」と京都らしさを評価した。
(1)540円(抹茶味)(2)伊藤久右衛門(3)https://www.itohkyuemon.co.jp/
希少な特産素材 地元でアイス化
ご当地の食材とアイスは相性が良い。果物やミルクなどの特産品は収穫の時期や量に限りがある。大量生産する大手アイスメーカーは素材の安定調達が見込めないため取り扱いにくい。地場の氷菓店や和菓子店が顔の見える関係を築いた地元の生産者から材料を仕入れ、手作業でアイスに仕立てるのに適している。
コロナ禍で巣ごもり生活が続くなか、自宅でアイスを楽しむ人は増えている。日本アイスクリーム協会(東京・千代田)が昨年10月に全国の男女1200人に行った調査では、新型コロナウイルスの感染拡大後にアイスの購入機会が増えたと答えた人は全体の28%で、「減った」(9%)を上回った。自宅でアイスを食べる理由(複数回答)は「おいしさや甘みを楽しむ」(67%)ほか、「幸せな気分になる」(37%)「気分転換したり、やる気が出る」(31%)と続いた。
コロナ禍で当面は「ご当地」へ気軽に出掛けにくい。地域おこしの思いもこもったアイスバーを取り寄せて、全国各地の風土を感じてみては。
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今週の専門家
(松浦奈美)
[NIKKEIプラス1 2021年7月31日付]
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