缶詰に野菜や調味料を加えるだけ 充実のレシピ4選
黒川博士の百聞は一缶にしかず(5)

連日猛暑が続いている。こう暑いと、台所にこもって料理をするのがおっくうになってくる。ましてや、火を使う調理なんて! そこで活用したいのが缶詰であります。中身は加熱調理済みだから、火を通す必要がなく、あとは他の食材や調味料を足すだけ。今回はそんな非加熱レシピと、それに合う缶詰4品を紹介したい。
まず一品目は「さばのショウガ焼き風定食」。暑い日でも、味の濃いものを食べたい時があるもので、例えば豚肉のショウガ焼きなどは、ご飯が進み体力が付きそうだ。
とはいえ、生鮮の豚肉を買ってきて焼くのは少々、面倒。そこで活用したいのがキョクヨーの「さばのグリル ジンジャーソース」だ。その味付けはまさに豚肉ショウガ焼きと同じで、ショウガの香りが食欲をそそる。甘辛い味もご飯を求めてやまない。
この缶詰の缶所(勘所の意)は、ジンジャーソースにニンジンも加えているところ。ニンジンは香味野菜なので、サバ特有の匂いがうまく抑えられている。

この缶詰をキャベツ、トマトと合わせ、ご飯を添えれば「さばのショウガ焼き定食風」の出来上がり。作り方は、キャベツの千切りとトマトを盛りつけ、サバの身を乗せる。上から缶汁のジンジャーソースを掛けるだけ。甘辛いサバでご飯が進むのはもちろん、ジンジャーソースが染みたキャベツもたまらない。

二品目はベトナムのサンドイッチ「バインミー」を再現したい。使うのはホテイフーズ(静岡市)の「とりつくね たれ味」。同社は「やきとり たれ味」が有名だけど、2013年に登場したこの商品も素晴らしい。というのも中身は焼き鳥だけでなく、つくねが2個入っているからだ。いわば1缶で2度おいしい缶詰なのであります。
缶所(勘所の意)は、何といってもこだわり製法のつくね。鶏の粗ひき肉にタマネギを加えて、甘みを引き出し、さらに油で揚げてうま味を閉じ込める、という凝りようがすごい。
味付けは「やきとり たれ味」と同じだが、実はこのタレ、16年に焦がししょう油を加えてリニューアル。おかげでがぜん、香ばしさがアップした。

その甘辛いタレを生かせば、ベトナムの「バインミー」のようなサンドイッチになる。缶詰の他に必要な材料は、パンと総菜のナムル。さらにキュウリとベビーリーフがあれば十分だ。
切れ目を入れたパンの内側に缶詰のタレを塗り、スライスしたキュウリ、ベビーリーフ、ナムルと焼き鳥、つくねを挟めば缶成(完成の意)。より本式のバインミーを目指すなら、缶詰のタレに魚醤を加えればいい。

三品目は「たっぷり野菜とサバのサラダ」。同じパンを使った料理でも、野菜をメインにすれば、食べ応えのあるサラダになる。その具に使いたいのが、マルハニチロの「さばフィレ エクストラバージンオイル漬」だ。この缶詰はデザインが美しく、一見すると陶器のよう。もちろん金属缶であり、陶器に見えるような塗装を施してあるだけなのだが、実物を見るとつい触って確かめたくなる。
中身は塩と調味料であっさり味付けしたサバで、エキストラバージン・オリーブ油につけてある。缶所(勘所の意)は皮、骨、血合いを取り除き、フィレ状にしているところだ。この手法はヨーロッパのサバ缶に見られるもので、サバ特有の匂いがほとんどしない。食べてみても、サバなのかアジなのか分からないくらいだ。

缶詰内のエクストラバージン・オリーブ油もおいしいので、ドレッシングを作る手間も省ける。ボウルに缶の油を全量入れ、砂糖小さじ1/2、酢小さじ1、レッドペッパー(赤唐辛子を砕いたものでも可)を加えて、よく混ぜる。
同じボウルに冷蔵庫の残り野菜(今回はレタス、紫タマネギ、カリフラワーを使用。カリフラワーは生でも食べられる)を入れ、食べやすい大きさに切ったサバと食パンも入れて、よく混ぜれば出来上がり。野菜がいくらでも食べられるヘルシーメニューであります。

最後はそばメニューをご紹介。流水ですすぐだけで食べられるシマダヤ(東京都渋谷区)の「流水麺」に缶詰を合わせれば、具の入ったそばがすぐに食べられる。
缶詰は木の屋石巻水産(宮城県石巻市)の「さんま醤油味付」をチョイス。他のサンマ缶でもおいしく作れるが、この缶詰は別格なので紹介したい。
同社は冷凍原料を使わないことが誇りで、このサンマ缶もしかり。宮城県の漁港で水揚げされた旬のサンマを、その日のうちにさばき、缶詰にしている。サンマの鮮度は刺し身でも食べられるレベル。そこまで原料の鮮度にこだわるところが、木の屋石巻水産の缶所(勘所の意)。

缶詰の他に必要な材料は、スーパーやコンビニでそろうものばかり。流水麺のほか、パック入りのすりおろしトロロ(とても便利)、そしてノリと刻みネギ、チューブのワサビ、めんつゆであります。
めんつゆは少量で十分。水を加えて、いつもより薄めに整えたら、缶詰の汁を加えて混ぜる。缶汁にはサンマのうま味も含まれているので、いわばダシが追加されるわけ。
そうして作ったつゆを器にはり、水でほぐしたそば(水気は切る)を入れ、トロロ、刻んだノリ、サンマを乗せ、最後に刻みネギとワサビをトッピングすればOKだ。
全体にオリーブ油を掛ける食べ方もおすすめしたい。僕が個人的に大好きな食べ方で、オリーブ油の鮮烈な香りがしょう油やサンマに実に合う。
(缶詰博士 黒川勇人)
1966年福島市生まれ。東洋大学文学部卒。卒業後は証券会社、出版社などを経験。2004年、幼い頃から好きだった缶詰の魅力を〈缶詰ブログ〉で発信開始。以来、缶詰界の第一人者として日本はもちろん世界50カ国の缶詰もリサーチ。公益社団法人・日本缶詰びん詰レトルト食品協会公認。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連キーワード