/

アートや読書で快適おこもり 箱根のユニークな宿3選

NIKKEI STYLE

険しい山々が連なり、豊かな湯が湧く神奈川県の箱根。古くは東海道を行き交う人々の憩の地として賑わいを見せてきた。現代のリゾート地の一つとして、客室に温泉風呂を備え、じっくりと湯にひたりつつアートや読書、極上のスパなどが楽しめる箱根のユニークな「おこもりの宿」を今回は紹介しよう。

箱根登山鉄道の中強羅駅から徒歩で約5分。「箱根本箱」は、その名の通り、1万2000冊の本に囲まれて泊まれるブックホテルだ。各界で活躍中の人たちによるこだわりの選書が面白い「あの人の本箱」には、石田衣良さんら著名な作家や女優、料理研究家、アーティストなど多士済々約70人の愛読書と、それにまつわるコメントがずらりと並ぶ。本は購入することもでき、部屋に持ち込み読みふけりたくなってくる。

大浴場はもちろん、全室に露天風呂があり、宮城野を源泉とする塩泉が楽しめる。湯上がりにはラウンジのコーヒー(無料)で一服したり、世界の珠玉のショートショートを24時間上映しているシアターをのぞいてみたり。打ちっ放しの壁と木製の本箱、北欧を中心とした家具でどこか外国に来たかのような時間がゆったりと流れる。

夕食は相模湾と駿河湾の海の幸や、箱根の山の幸を生かしたイタリア料理だが、そこにみょうがや大葉など和のアクセントが絶妙なハーモニーを奏でる。元は出版の取次大手、日販の保養所だったが、ユニークな本と出会えるホテルになって食事もひと味違う。今は食事の立ち寄りは神奈川県版緊急事態宣言の発令下で難しそうだが、一日も早くまた楽しめるようになるのを願う。

ポーラ美術館や箱根彫刻の森美術館、岡田美術館など多くの美術館が点在する箱根の仙石原高原にあるアトリエ温泉旅館が「星野リゾート 界 仙石原」だ。開業時にはアート・イン・レジデンスを開催し、国内外12名のアーティストが滞在、創作活動を行った。その時の作品が今も客室や館内に展示されている。

大きな窓やテラスにある露天風呂から仙石原の緑が望める客室では、昼は明るい室内を飾るアート作品を、夜には小田原の作家のガラス作品やランプシェードの光が美しい。

地下のアトリエライブラリーの壁には、色とりどりの顔料や筆、約2000本の色鉛筆がずらりと並ぶ。スケッチブックも置かれており、仙石原の思い出を色鉛筆で描いてみることも。また、毎日2回、型染め作家によるオリジナル手ぬぐいへの絵付け・色付け体験が無料で楽しめる。仙石原の野鳥や草花、箱根の宿場町など6種類のデザインに、布クレヨンなどで色をのせたり、絵を描いたり。いつの間にか夢中になっている自分に気づく。完成後は持ち帰ることができ、思い出にもなる。

大浴場には、大涌谷の源泉をひいた「あつ湯」と、その後に肌を落ち着かさせる「ぬる湯」が並ぶ内湯、四季の眺めが美しい露天風呂がある。あつ湯の酸性値は、レモンと同じぐらいで入浴後はすべすべした肌感に。湯上がり処には冷たい飲み物やアイスキャンデーも用意されている。

各地の「星野リゾート 界」では8月末まで、ふわっとした食感のかき氷用「純氷」で作るご当地かき氷を提供している。「界 仙石原」では、真っ白な氷に色とりどりのシロップをかける「アートかき氷」がこれまた楽しい。

歴史ある温泉地の箱根のレトロ感と、洗練されたホテルの雰囲気が見事に融合しているのが2020年1月にオープンしたIHGホテルズ&リゾーツのライフスタイル・ブティックホテルブランドの「ホテルインディゴ箱根強羅」。日本初上陸で、そのブランドコンセプトはご当地の自然、文化、歴史を織り込んだネイバーフッドストーリーだ。

一歩ホテルに足を踏み入れれば、寄せ木細工や浮世絵、古民家の家具、アンティークや古い写真など古き良き箱根がモダンなインテリアの中に溶け込み、タイムトリップしたような非日常感に魅了される。

すべての客室に温泉水和式風呂を備え、全98室中リバービューの80室では部屋の露天風呂でくつろげる。ユニークなのはクア施設のように水着着用の温泉大浴場。季節の風景や花火などのデジタルアート映像が流れる大スクリーン、歩いて楽しめる1.2メートルの深さの立ち湯、ジェットバスやサウナなどもあり、何しろ楽しめる温泉になっている。

東日本では初めて(国内2カ所目)開業したタイ発の有名スパ「HARNN (ハーン)」も人気だ。ホテルインディゴ箱根強羅のオリジナルメニューである箱根センセーションでは、桜や柚子(ユズ)とタイハーブのエッセンシャルオイルを使った香りが魅惑的。

腕や肘も使っての強弱自在なマッサージは夢心地にしてくれる。フェイシャルメニューもあり、アロマの香りとタッピングなど丁寧な施術で癒やされルこと間違いなしだ。

12月15日まで、このハーンのトリートメント2回、Vuudh(ヴッド)のルームディフューザーまたはルームスプレーとサシェ(プランによる)に、スパセラピストによるウェルネスワークショップかティーテイスティングがつく「HARNNコンセプトルーム in 箱根」というプランもある。

ローカルな食材を利用しビタミン豊富で美肌によさそうな食事のメニューもあり、おこもりで心身を整えられそうなパッケージプランになっている。

新型コロナウイルスの影響が今なお続いているが、いずれも東京から2時間ほどで行ける先。温泉+アルファの魅力で、おこもりしながら一味違う滞在が楽しめるスポットだ。

小野アムスデン道子
世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスに。東京と米国・ポートランドのデュアルライフを送りながら、旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、プロデュース多数。日本旅行作家協会会員。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

関連企業・業界

業界:

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません