会社辞めたい…悩むなら朝活 クリアな頭で解決策探し
ニューノーマルを生き抜く 「朝1時間」活用塾(5)

新型コロナウイルス禍が続くなか、今の仕事にやりがいを見いだせなかったり、自分が何をしたいかわからなかったりと、今後のキャリアに悩む人が増えています。早起きして様々な活動を実践する「朝活」の伝道師、池田千恵氏が朝活を通じた解決法を解説します。
今回は読者の次の相談に回答します。
A. 今の仕事がつまらない、やりがいが見つけられないときでも、視点を変えれば今の仕事を楽しめるようになるものです。自分が本当にやりたい「別の仕事」を見つけるために朝活するのではなく、まずは「今の仕事」を「次につながる仕事」に変えるために朝活することを考えてみてはどうでしょう。
「夜のクヨクヨより、朝のクヨクヨ」
筆者は「夜のクヨクヨより、朝のクヨクヨ」を提唱しています。朝早起きして網膜に早く光を当てると、心身の安定や安らぎに寄与する脳内の神経伝達物質のひとつ「セロトニン」が分泌されるということが科学的に証明されています。また、睡眠で記憶や感情経験が整理整頓されるため、脳にとって朝がいちばん「飽きない」状態とも言われています。
朝はクリアな頭で生産的な考えや、未来志向の考えを巡らせることができます。同じクヨクヨするのでも、朝なら、物事を感情のフィルターだけでなく、事実のフィルターで冷静に振り返ることができます。そのため効果的な解決策も浮かびやすいのです。だから、今の仕事の悩みは朝にクヨクヨして、朝活で答えを見つけていきましょう。
人間関係のスタンスが変われば会社への不満が減ることも
厚生労働省の2019年版「労働経済の分析」(労働経済白書)によると、仕事上の人間関係が良好になると働きやすくなり、悪くなると働きにくくなる傾向があるそうです。つまり、人間関係が働きやすさに与える影響は大きいようです。
筆者も会社を辞めたいという方の相談に乗る機会が多いのですが、会社を辞めたい理由の多くは突き詰めると人間関係に至ることを実感しています。逆に言うと、人間関係の悩みさえ取り除くことができれば「辞めたい」とまで思い詰めることが少なくなります。とはいえ、言葉で言うのは簡単ですが、人間関係を変えることは簡単ではありませんよね。
そこで、会社を辞めたくなったときに朝時間で考える際におすすめのポイントを2つ紹介します。
2. 朝時間で「今の仕事 <だからこそできる>こと」を探す
試しに会社とは関係がない人がいるコミュニティーに入り、視点を変えてみてはどうでしょう。趣味の会や地域の会、子育てがテーマの会、何でもOKです。今はオンラインだけで参加できるコミュニティーも増えているので、場所の制約もなく気軽につながることができます。会社と家の往復だけだと、「辞めるしかない!」と思いつめてしまうようなことでも、外に目を向けてみるといろいろな方策があることに気づく可能性があります。うまくいかない人間関係のヒントもあるはずです。さらにいえば、
・会社の資源(人、物、情報)をうまく活用しつつ、自分のやりたいことをかなえる人たちがいる
・仕事で培ったスキルを無償で提供する「プロボノ」やコミュニティー運営といった形で本業との相乗効果を出している人がいる
・仕事は仕事、と割り切って淡々とすすめ、一方で趣味の世界で自己実現している人がいる
といったように、様々な人と出会える可能性があります。同じようなテーマで悩んでいる人、解決した人と知り合いになり、人間関係を改善するヒントになるかもしれません。
今の仕事「だからこそできる」と視点を変えてみよう
人工知能(AI)や定型作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の普及によって「誰でもできる仕事は機械に取って代わられる」と言われるようになってきました。特にホワイトカラーといわれる業種では、自分の仕事が数年後になくなってしまうのではないかと漠然とした不安を抱えている方も多いように思います。しかし、あなたの仕事は本当に、まるごとそのまま機械に取って代わられるものなのでしょうか。
そんなはずはありません。例えば事務作業ひとつとっても、現場の事務工程に精通していれば、「機械ができる仕事」「これだけは機械にはできない仕事」の見極めができるはずです。その目利き力を磨くことで、機械にはできない仕事を増やしていくことも可能です。
今の自分の仕事は「つぶしがきかない」と感じるときにモチベーションが下がるという悩みも多く聞きます。だとすれば、あなたが「つぶしがきく」と考えている仕事の要素を今の仕事に導入することはできないかと考えると、道が開ける可能性はあります。
例えばあなたにとって営業は「つぶしがきく」と思えるとすれば、営業のどの要素が「つぶしがきく」のかを考えてみましょう。その要素にあたるものが、仮に「コミュニケーション力」だとしたら、今の職場でも「コミュニケーション力」の要素を取り入れた働き方ができないかを考えてみるのもいいでしょう。
就業時間の合間にこうしたことを考えるのは難しいもの。朝時間だからこそ、自分の仕事を見つめ直すことができます。今の自分「だからこそできる」こと、今の仕事「だからこそできる」ことを探してみましょう。
別のコミュニティーで人間関係を見直した朝キャリメンバー
筆者が運営する「攻めの朝活」コミュニティー「朝キャリ」メンバーでIT(情報技術)企業に勤務している瀧勇史さんは若手社員のころ、転職を考えたことがあります。しかし、会社とは別のコミュニティーに所属して視点を変えることで、転職を思いとどまりました。
瀧さんは10年前、27歳の時に技術職からマーケティング職へジョブチェンジを行いました。そして異動してからの2年間は全く成果を出せず「元の部署に戻りたい、会社をやめたい」と思い、意気消沈していました。
そんなとき、仕事がスローペースになったのをきっかけに瀧さんは朝の時間で自分を見つめ直し、以前から興味があった仕事以外のコミュニティーに参加するようになりました。キャンプや課外授業、アウトドア体験ツアーのインストラクターとして子供の体験活動のサポートをするボランティアに参加し、まずは人間関係を構築することに。社外の様々な立場の方と触れ合うことで多角的な視点を得られ、今まで見えてこなかった自分勝手な思い込みがたくさん見えるようになりました。
そして「プライベートの活動ではうまくいくのに、なぜ仕事では結果が出せない?」と疑問を感じるようになったといいます。よく考えてみると、ボランティアでは「素の自分」を出せていたのに、仕事では出せていなかったことに気づきました。そこで仕事でも意識的に素の自分を出すようにしました。そうすると人間関係が円滑になり、仕事でも結果を出せるようになったのです。そして1年半後には見事昇進することができました。
自分は必要とされていないと思っていたけれど、案外必要とされていることがわかったり、「腹を割って話せない」と思っていた人と、意思疎通できることに気づいたりしたそうです。
会社とは別のコミュニティーでつながりを持ち、朝時間に「内省」を深めることで、今の仕事の問題を解決したのです。
「当時のキツイ経験は、その後の社会人基礎体力として非常に重要でした」と瀧さんは振り返ります。
「だからこそできる」と発想転換した朝キャリメンバー
ベンチャー企業で顧客対応をしている「朝キャリ」メンバーの品川美穂さんは、社内のシステムが整備しきれていないために起こるトラブルに悩まされていました。たとえば、オペレーターのパフォーマンス低下、数字の分析やモニタリングにまつわる問題、FAQ(よくある質問と回答)の一元管理にかかわることなどです。
品川さんの会社は、人がいない、システムがない、という「ないない尽くし」の小さなベンチャー企業でした。初めはこうした環境に不満を抱いていました。
そこで朝時間で自分の仕事についてじっくり考えてみることにしました。そして「人がいないからできない」「システムがないからできない」とマイナス思考で考えるのをやめて、「人がいないからこそできること」「システムがないからこそできること」をプラス思考で捉えてみることにしたのです。
具体的な「だからこそできること」は、例えばこんなことです。
・専用システムがないから、他のシステムで代用できないかを考えて試した結果、いくつか代用することに成功した
・自社で経験した人がいなくてわからなかったことを、他社の人に相談してみた。それによって他社との交流が増え、人脈も広がり、学びや気づきを得られる機会が増えた
・新人研修にシステムを利用できないからこそ、OJT(職場内訓練)で密にコミュニケーションがとれるプラスの面を考えるようになった
・何もないが故に、何もないところからひとつずつ仕組みをつくっていくことで実績を積み上げるチャンスをもらっていると考えるようになった
・システム導入検討を進めるには大きなお金が動くことを理解し、コスト意識が高まった
辞める前にできることは結構ある
転職したい、今の会社から一刻も早く離れたい、今の仕事は嫌だ……。そんな気持ちのとき、夜眠る前に考えようとすると気持ちが重くなりますし、ついネガティブな方向に考えてしまいがちになります。ところが朝時間なら建設的な考えに至ることが多いのです。
今回紹介した2つのポイント、(1) 朝活で会社とは別のコミュニティーに属し視点を変える(2)朝時間で「今の仕事 <だからこそできる>こと」を探す、を意識して、始業前の1時間を実りあるものにしていきましょう。

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。