目にも鮮やか新感覚羊羹10選 フルーツにショコラも

羊羹(ようかん)は古くから愛されてきた和菓子。最近は素材づかいや風味に工夫を凝らし、見た目も鮮やかなものが目立つ。目で見て、食べてみて二重に驚く、新感覚の羊羹を専門家が選んだ。
1位 ドライフルーツの羊羹(wagashi asobi)
670ポイント 断面にイチジク美しく

こだわりのあんに黒糖やラム酒を練り合わせ、ドライフルーツのイチゴやイチジク、クルミを組み合わせた。滑らかな舌触りや粒々とした食感が楽しめる。専門家からは「ドライフルーツへのラム酒のきかせ加減が最高」(来住昌美さん)、「イチジクなどがのぞく断面も楽しい」(原亜樹子さん)など、その味わいと見た目の美しさをともに評価する声が集まった。
2011年の開店当初からこの羊羹と「ハーブのらくがん」の2種類だけを扱ってきた。老舗和菓子店で経験を積んだ創業メンバーの職人、浅野理生さんは「切ったときの美しさや味を磨くことに注力している」と話す。最近も中のイチジクをより大きなものに変え、切ったところでばらつきが出ないようにするなど、改良を重ねる。
「テリーヌのよう。クリームチーズなどと合わせて食べてみたい」(弓納持清美さん)という意見も。店によると、パンやマスカルポーネとも相性がいいという。アルコールでは赤ワインや辛口の日本酒、ブランデーなどと合わせても楽しめるそうだ。
(1)税込み価格(おおよその内容量) 2300円(400グラム)(2)公式・販売サイト https://wagashi-asobi.com/item/item_a.html(3)所在地 東京都大田区
2位 燦々(さんさん)(季(とき)のせ)
600ポイント かんきつの酸味とバランスよく

福岡の宇美八幡宮の境内に店を構える和菓子店が燦々(さんさん)と輝く太陽をイメージしてつくった。輪切りにしたオレンジに加え、マンゴーやクランベリー、パイナップルなど計7種類のドライフルーツをモヒートのリキュール、白あんと合わせて仕上げている。夏季(5~9月)限定販売で、冷やせばさっぱりと味わえる。
「見た目が美しい。ぜいたくにフルーツが入っているのはうれしい驚き」(松田智華さん)、「輪切りオレンジのインパクトが大きい。かんきつの酸味のバランスがいいので食べ飽きない」(三村健二さん)。
国内外で活躍している画家の松岡亮さんがデザインしたカラフルなパッケージにも「羊羹の味を連想させる爽やかな印象を受ける箱。これをもらった人はとても楽しい気分になるのではないか」(林周作さん)。贈り物に使いたくなる一品だ。要冷蔵なので注意。
10~4月には燦々と入れ替わりでチョコレートベースの羊羹にフルーツを加えた「煌々(こうこう)」が登場する。
(1)1836円(300グラム)(2)https://shop.tokinose.co.jp/(3)福岡県宇美町
3位 羊羹ショコラ(ショコラトリー カルヴァ 北鎌倉 門前)
580ポイント あんとチョコの味が一体化

和のあん、洋のチョコレートの組み合わせを追求して生まれた一品。口に入れてみると、それぞれの違った味わいが存分に楽しめる。
専門家からも「違和感なく口の中で一体化するのに驚いた」(君島佐和子さん)、「滑らかな舌触りと甘さ控えめの上品な味わいが良い。男女問わず好まれる」(安原伶香さん)といった声が聞かれた。
古都の風情が残る北鎌倉の地で腕を振るうオーナーシェフ、田中二朗さんの「日本人のショコラティエとして、自分にしかできないものをつくりたい」という思いが詰まっている。例えばガナッシュはチョコに生クリームを合わせてつくるケースが多いが、この羊羹のときには水と混ぜ合わせてカカオの風味が広がりやすいようにしているという。
箱にはチョコレートの結晶をイメージした店のロゴが刻印されている。鎌倉土産として買い求めていく人も多いそうだ。冷蔵保存が必要。
(1)2484円(320グラム)(2)http://chocolaterie.calva.jp/(3)神奈川県鎌倉市
4位 回/Re-Fruit(五勝手屋本舗)
450ポイント 乾燥イチジクにあん注入

乾燥させたイチジクに、シュークリームと似たやり方であんを入れている。乾燥させた果物がみずみずしさを取り戻すイメージから「回」と命名。「シンプルだがインパクトのある見た目」(渡辺さとしさん)が特徴だ。
羊羹とイチジクそれぞれの個性が味わえるように工夫。7種のスパイスを混ぜ合わせたガラムマサラをイチジクにかけることで、甘さが引き立つのだという。「プチプチとした歯触りが楽しく、一口食べてびっくり。コーヒーやワインにも合いそう」(中島久枝さん)な一品だ。
(1)4428円(10個入り、1個25グラム以上)(2)http://www.gokatteya.co.jp/refruit/index.html(3)北海道江差町
5位 羊羹ファンタジア Fly Me to The Moon(会津長門屋)
440ポイント 鳥や月、幻想的な風景

寒天を煮溶かして固めた透明な錦玉羹(きんぎょくかん)の中に、練り羊羹の鳥や月。切ると幻想的な景色が広がる。「一枚の絵のよう。感動すると思う」(本多純さん)
錦玉羹はシャンパン、鳥や月はレモンで味付け。小豆の羊羹で挟み、鬼くるみやクランベリーなどがのっている。「味わいの異なる層がバランスよくまとまっていて、見ても食べても幸せな気持ちになる」(原さん)
東日本大震災を経て新たな可能性を模索する中で生まれた。英語の名は有名なジャズナンバーにちなむ。
(1)3500円(500グラム)(2)https://nagatoya.net/?pid=151939531(3)福島県会津若松市
6位 柚衣(ゆずごろも)(彩雲堂)
430ポイント さわやかなユズとあんの調和

中身をくりぬいて蜜に漬けたユズに、皮をむいた小豆でつくるあんなどを流し込んでつくる。「ユズのさわやかさとあんの調和が抜群。2つ3つと食べたくなる」(芹沢賢次さん)。見た目も鮮やかで、夏は冷やすとおいしいという。職人の技を感じられるといった声も聞かれた。8月中旬から10月末は販売休止となるので要注意。
明治創業の彩雲堂では動物をかたどった生菓子を動画をみながらつくる体験キットを販売するなど、新たな取り組みにも力を入れている。
(1)2430円(6個入り、1個50グラム)(2)https://netshop.saiundo.co.jp/?mode=cate&cbid=1886920&csid=10(3)松江市
7位 羊羹みのり(五條堂)
400ポイント ハチミツの香り、贈り物にも

クランベリーやピスタチオ、栗のハチミツなど様々な素材がちりばめられ、見た目も鮮やかな羊羹。「色々な素材が入っていて味変、食感の面白さがある」(渡辺さん)、「ハチミツの華やかな香りが他にない優しい味わいを生む」(芹沢さん)。社長の柴田彩さんは「添加物を使わず、朝食にも食べられる羊羹を目指した」と話す。
「容器がかわいらしく、サイズもちょうどいい。見た目や味わい含め、どれをとっても大人の女性に喜ばれそう」(三村さん)。贈り物にも使われる。要冷蔵。
(1)2051円(6個入り、1個60グラム)(2)https://gojodosweets.com/?mode=cate&csid=0&cbid=2275432(3)大阪府東大阪市
8位 りぶれ(乃し梅本舗 佐藤屋)
390ポイント レモンの酸味、絶妙なバランス

愛媛県怒和(ぬわ)島の農園で採れたこだわりのレモンを薄く切って寒天の透明な層をつくり、ラム酒や黒糖で味付けした羊羹に重ねた。「軽やかなレモンの酸味、ピールの苦みとコクのある黒糖のバランスが絶妙」(林さん)、「クリア×黄色×濃い茶色という見た目のバランスも美しい」(来住さん)といった意見が集まった。
冷やせばレモン、常温でラム酒の香りがたち、ジンと一緒に味わうのがおすすめだという。山形市内ではバーで酒と、カフェでコーヒーと一緒に出されている。
(1)1296円(480グラム)(2)https://satoya-matsubei.shop-pro.jp/(3)山形市
9位 フルーツの羊羹(UCHU wagashi)
380ポイント 色とりどりのフルーツ浮かぶ

色とりどりの甘夏やブドウ、モモの羊羹が卵白を加えた白あんの中に浮かぶ。「羊羹なの?と思わせるふんわりとしたかわいらしい見た目に新しさを感じる」(安原さん)、「パステルカラーに心引かれる」(中島さん)。その見た目に驚く専門家が多かった。
香料を使っておらず、「ゼリーのフルーツの甘酸っぱさがアクセントになり、子どもも喜びそう」(本多さん)。2020年には新ブランド「NEXT 100 YEARS」を立ち上げ、デザイン性の高い和菓子づくりに力を入れる。
(1)1730円(250グラム)(2)http://uchu-wagashi.jp/?pid=150748507(3)京都市
10位 カカオ水ようかん(ショコラティエ パレ ド オール)
300ポイント カカオ豆の香り、金箔も

水羊羹が好きだというショコラティエの三枝俊介さんがカカオ豆との組み合わせを研究して生まれた。箱の中にはこしあんと白あん、ユズの3種類の羊羹。フランス語で「金の円盤」を意味する店名にたがわず、金箔もちりばめられている。
「味の強さや濃さを求めすぎず、ギリギリの状態に抑えたことで生まれたおいしさ。素晴らしい」(君島さん)、「食後のデザートにもおすすめしたい」(松田さん)と推薦する声が集まった。
(1)4860円(9個入り、1個120グラム)(2)http://www.palet-dor.com(3)東京都千代田区
老舗継いだ若手 羊羹に新たな風
羊羹といえば、主に小豆を使ったあんを寒天で固めた伝統の和菓子。老舗も多い。今回のランキングでは羊羹のイメージが変わるような斬新な見た目や風味、素材づかいに工夫を凝らしたものを対象に選んでみた。三越伊勢丹で和菓子のバイヤーをしている弓納持清美さんは「和菓子の伝統的な技法や文化を生かしつつ、現代に合った和菓子をつくる新世代の作り手が増えてきた」と話す。
新顔が続々登場する背景には店を引き継いだ若手経営者の存在がある。7位に入った五條堂の2代目、柴田彩さんは「ニューヨークの街中で現地の人が羊羹をかじりながら自転車に乗る時代が来れば」と話す。8位の佐藤屋8代目、佐藤慎太郎さんも「若い人に手をのばしやすいイメージを持ってもらえるように頑張りたい」と意気込む。
海外の有名パティスリーと組んだ洋風仕立ての羊羹を期間限定で販売する動きも。ピエール・エルメ・パリ日本法人のリシャール・ルデュ社長は「非常に可能性に満ちた菓子」と語る。羊羹の新潮流に今後も注目したい。
ランキングの見方
調査の方法
今週の専門家
(荒牧寛人)
[NIKKEIプラス1 2021年7月10日付]
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