初のトップ10入り千鳥 「楽しい仕事しかしていない」
現在最も勢いのある芸人は、間違いなく千鳥だろう。コンビで持つレギュラーは全部で10番組。その人気を裏付けるかのように、今回のタレントパワーランキング(※)では8位と、初めて総合トップ10に入った。[タレントパワーランキングはタレントの「認知度(顔と名前を知っている)」と「関心度(見たい・聴きたい・知りたい)」の調査を基に、2つのデータを掛け合わせて「タレントパワースコア」を算出、ランキング化したもの]
過去5年で総合トップ10に入った芸人は、19年に総合No.1に上り詰めたサンドウィッチマンの他は、タモリ、博多華丸・大吉、渡辺直美と、いずれも好感度の高さが浸透している面々。どちらかというと男性ウケが中心で、少し荒っぽさがある印象の千鳥が、ここまでど真ん中の評価を得るとは、数年前は誰も想像できなかったに違いない。

支持層を見ると、女性20代が最も多く、次に女性30代、女性10代と続き、実は女性人気が高いことが分かった。
バラエティの中心に躍り出た現在、MCが増えるなどの立場の変化はどう感じているのか。ここで改めて語ってもらった。まずは、タレントパワーの結果について。
ノブ 8位? へぇ~。知名度と関心度ですか? それは早くCMに使ってもらったほうがいいですね(笑)。いいデータですもんね。ありがたいです。でも女性支持って、意外ですね。
大悟 それはまぁ、そこを狙ってましたから。
ノブ どこがやねん! 何が起こってるんだろう。本当、僕らはデビューして、「baseよしもと」っていう劇場でやってた頃から、女子人気なんかあったためしがないんですよ。NON STYLEとかはバレンタインのチョコレートが段ボールで来る感じだったけど、僕らはリアルに5、6個……。理由を聞きたいですね。
まさかの企画で苦情ゼロ!?
取材は『テレビ千鳥』(テレビ朝日系)の収録日だった。『テレビ千鳥』は、TVerのマイリスト登録者数が130万人を超え、実は全バラエティで1位の番組。MCが増えるなかで、"プレーヤー"で居続けられる番組であり、思い入れも強いという。
ノブ 26時台の、めちゃめちゃ深い時間から始まったんですけど、コワイぐらいにやっちゃダメなことがなくて。第1回目に、お互い100円だけ持ってゲーセンに行って、何に使うかっていうだけの企画をやらせてもらって。今2年以上たって、時間も22時台に昇格したんですけど、何も変わっていないんですよ。そこがすごい。
大悟 「こんなんやろうか」って話したとき、「それはやめておきましょう」ということもなく。怒られたらやめるか、みたいな雰囲気。だから1番、僕ら千鳥が好きなことをやっている番組ですね。
ノブ 「まさかこれが通るとは」と思うようなものばかりですからね。人気のブラジャーを当てるまで帰れない、「ブラジャー帰れま3」とか。試着までしてね。少々苦情は来るなと思っていたんですけど全くなく、「下着に向き合う男性が見られて良かったです」という、謎の高評価をもらいまして。独特な視聴者の方が付いてくれてるなと思いました。
22時台になった1発目で、川に丸い石を探しに行くだけの企画をやったんですけど、オープニングで大悟がパンティ被って酒飲みながら出てきたんですよ。あのときはさすがに「大丈夫か?」と思いました。それもね、止めないんですよ。テレ朝の人がどんどん「GO」を出す。
大悟 でも、ノブは知らなかったけど、こっちとしては僕がパンティをはいてるっていう絶対的なオチがあったから。
ノブ いや、もう……(笑)。
大悟 友達と河原に行って、男が「ちょっと濡れたわ」ってズボンをはき替えたときに、パンティはいてたら絶対笑うでしょ。それがあったから。
ノブ 女性用のパンティですから、全部出てるんですよ。それで現場は大笑いだったんですけど。さすがにカットやろなと思ってたら、丸々採用してて。スタッフがちょっと骨太ですよね。22時台で股間にモザイク入ってるの、初めて見ました。
大悟 こっちがお願いしたことで「ごめんな」っていうのは、何回かあったな。わしが頼んだせいで、若いADさんが朝、いろんなパターンで凍らせたパンティを持ってきて、真面目な顔で「思ったより凍り方がいまいちですみません」って謝ってきたっていう(笑)。そのときはちょっと悪いことさせたかなと思った。
ノブ パンティをブーメランにして投げるって競技だったんですけどね。小学生の頃から塾へ行って、しこたま勉強して一流大学に入って、今パンティ凍らせてるんですよ、この番組のスタッフさんは(笑)。
大悟 でも思った以上にそのパンティが飛んだときは、スタッフさんもうれしそうな顔してたんで。
ノブ すごい歓声があがってた。『テレビ千鳥』はレギュラーになるとき本当にうれしかったし、新しい企画もどんどんやれて、千鳥のなかでも大事な番組になってるんですよね。でも特番時代にそそのかされて買ったベンツ、若い兄ちゃんとかに指さされて、「あれノブやで」ってすっごい顔バレするんですよ。そういうヒドイ目に遭ってるぞとは、クレームを言っておきたいです。いいなと思ってるのは、『テレビ千鳥』的な番組が今、増えてる気がして。
大悟 確かに。『かまいガチ』とか、『NEWニューヨーク』(共にテレビ朝日)とかね。
ノブ 何でもアリのロケ企画とか。たぶん芸人はそういう番組をやりたい人が多いはずなので、そんな流れになったのは良かったなと。
ロケで認められて変化が
ここ3年で、コンビでのレギュラーを7番組も増やした(終了したものは含まず)。同時に、タレントパワーも年々上昇。以前はゲスト出演が中心だったが、立ち位置としては迎える側になることが増えた。意識の変化などはあるのか。また、芸人として1つ上の段階に行けたと感じた瞬間は?
大悟 うーん、僕は意識の変化はそんなないかなぁ。ノブは仕切り側でやるから、多少ちゃんとせんとダメなんでしょうけど。
ノブ そうっすねぇ、変わらずやってますけどね。2人とも「ダウンタウンさんになりたい」って始めて、いずれは司会だったり、自分たちの番組を持ちたいっていう夢はあったんで、MCとして迎える側になったときに「うわっ、エライこっちゃ」とか、「こんなことになってる、大変だ!」とかはなかったですね。「ありがたい、よし、よし」みたいな感じで。まぁ本当、楽しんで帰ってほしいっていうのが1番ですね。
ロケとか、クイズ番組とかに来てくれて、長い収録とかしんどいじゃないですか。「意外と面白かった」とか、「また来たい」とか思ってくれたらいいなって、そればかり考えてるかな。ディレクターさんが本来、意図しているものってあるじゃないですか。その要望より、「この人ら、楽しんでるかな」って考えてしまうのは、変化かもしれないですね。前は、「オモロいこと言ってやるぞ」みたいなことで頭がいっぱいでしたけど。
この前、『ノブナカなんなん?』(テレビ朝日系)に、V6の井ノ原(快彦)さんが来てくれたんですよ。V6さんって、僕ら高校のときにずっと見てたスター。『あさイチ』のキャスターで、『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系)の司会者のあの人を、今自分が回して話聞いてるんやと思って、すごい変な感じがしました。うれしかったです。
大悟 僕も、とんねるずの石橋貴明さんとか、子どもの頃から見てた人に会うと、「うわー、本当にテレビに出てるんやなぁ」って、いまだに思いますね。変化といえば、『テレビ千鳥』の影響からか、新しい番組だったり、企画をやるときに「何します?」みたいなところから入ってくるようになったかな。「千鳥さんのやりたいことを」と言ってもらえることが多いです。
以前は番組側が決めたことに乗っかってやるのが基本だったのが。いい線引きはできたかもしれないですね。「ここに千鳥を呼んでもなぁ」という番組には、呼ばれなくなって。やりたくないことなんか、そんなやってないですもん。楽しい仕事をさせてもろうてると思いますね、僕らは。
次回は、やり残していることや今後やってみたいことなどを語ってもらう。
>>後編「千鳥 YouTubeをやらない理由はあの番組があるから」


(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2021年7月号の記事を再構成]
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