食感・口どけ・香りに違い チーズおろし器5種を検証
合羽橋の台所番長が調理道具を徹底比較

東京・合羽橋の老舗料理道具店「飯田屋」の6代目、飯田結太氏がイマドキの調理道具を徹底比較。今回は、人気急上昇中のチーズグレーター(チーズおろし器)を検証する(価格はすべて税込み)。
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こんにちは、飯田結太です。家で過ごす時間が増えてから、料理を始める人、調理道具にこだわる人が増えています。特にチーズに関連する調理道具は人気急上昇中。なかでもチーズグレーターを購入する人が多くなっています。
チーズグレーターは、パルミジャーノ・レッジャーノのようなハード系のチーズを粉状にすりおろすための道具。ピザをはじめ、パスタ、サラダ、グラタン、パンなどの上からさらさらとおろしたてのチーズをふりかけると、家庭料理がレストランでサーブされる料理のようにグレードアップします。おろしたてのチーズは新鮮なので風味豊か。食欲も増しますよね。
チーズグレーターの形は大きく分けて4つのタイプがあります。スタンダードタイプは、棒状や平面状。チーズを押しつけて削るもので、片手でグレーターを持ちながらすりおろしていくので安定しづらいこともあります。
二つ目は、受け皿付きのもの。大根おろし器と同じような形で、グレーターの刃の部分が大根おろし器よりも細かいのが特徴です。日本人にとっては一番なじみがある形ですね。
三つ目は、多面タイプ。一般的なものは4面にそれぞれ大きさや形が異なる刃がついています。台の上に置いてチーズを押し当てておろしていきます。
最後はよくレストランで見かける、チーズの塊を中に入れてハンドルを回しながらすりおろしていくロータリータイプ。手早く大量におろすことができるうえ、エンターテインメント性もあるので、プロに人気です。
今回はこの4タイプの人気のあるチーズグレーターを比較検証します。プロ仕様のものから、手軽におろせるコンパクトサイズまで、デザインや機能もさまざまなチーズグレーター5種類を比較検証しました。
料理別におろし分けができる、クラシックな多面タイプ

青芳の「CASUAL PRODUCT クチーナ 4面チーズグレーター ミニ」は、4種類のおろし方ができるチーズグレーター。以前は、チーズおろしといえば、プロ用はこれでした。それぞれの刃は鋭く、切れ味は良好。リーズナブルなうえ、4種類ものおろし分けができるのでプロに愛用されています。
素早くたくさんおろせて楽しいロータリータイプ

イタリアンレストランなどのテーブルで、料理にチーズをおろす場合によく使われるのが新考社の「ダイヤモンドリナー」。取り外しできるドラムの中にチーズの塊を入れてハンドルを回すと、さらさらとチーズが降ってきます。素早くおろしたいときに便利なうえ、見ているだけでも楽しいので、テーブルでのパフォーマンスとしても使われています。
ダイヤモンドリナーのメリットは、刃に直接触れることなくおろせること。ハンドルは左右どちらにも取り付けられるユニバーサルデザインという点もうれしいですね。

本場イタリアのおおらかなグレーター

イタリアのなかで、おろし金やコーヒーミルの産地として知られるピエモンテ州ペッテナスコに本拠地を置く調理道具メーカー、ビアンキ。イタリアで唯一のおろし金に特化した工場を持つ老舗メーカーです。「ステンレスグレーター L パルミジャーノ」は、まさにチーズを細かく削るために作られたグレーター。どこか武骨な造りが好きという人も多くいます。
世界の料理人がはまったスタンダードタイプ

米国の調理道具メーカー、マイクロプレインは、もともと工具を扱っていたメーカーだったことから、刃を使用したおろし器などが得意。切れ味は工具のように鋭く、グリップも工具のような安定感のある握りやすいデザインが多いのが特徴です。同社の「プレミアム ゼスターグレーター」は料理人にファンが多く、YouTubeでプロの料理家が紹介したことから広く知られるようになりました。切れ味の良さに加え、先端に滑り止めが付いているなど機能性は優秀。種類が多いことも人気の理由です。
日本人のための、きめ細かさを盛り込んだグレーター

手前みそですが、フワフワにおろせることを目指して、私の会社・飯田屋で開発したおろし器が「エバーおろし」です。金型から最後の仕上げまですべて国内で行い、20以上もの試作品を経て作りました。チーズ専用ではなく、ショウガやニンニクなど、フワフワにすりおろしたい食材全般に使えるようにしています。特徴は、一方通行ではなく、往復しておろせること。食材をなでるように動かすだけで削れ、目詰まりもしにくいので、後片付けもラクです。さて、チーズおろしに特化したほかの4商品と、どのような差が出るのでしょうか。
チーズグレーターは食感で選ぶべし

今回は、ハード系のチーズ、パルミジャーノ・レッジャーノを使用し、スピード、細かさ、使いやすさを検証しました。
◆4面チーズグレーター ミニ
取っ手が上にあり、4面になっているため、慣れないと少し使いづらいと思いました。力を入れすぎるとチーズが折れてしまうこともあり、ささっとスピーディーにおろすのは難しいですね。でもおろしチーズの形状や大きさを均等にできるのはさすがにプロ御用達。

◆ダイヤモンドリナー
ハンドル式なので使いやすい。軽く回せて一度にたっぷりおろせるので、大量に使いたいときには便利です。ハンドルを回すほどチーズの香りが広がるのもいいですね。パーティーなどで、テーブルでサーブするならコレですね。


◆ステンレスグレーター L パルミジャーノ
チーズ料理が多い国、イタリアのチーズグレーターは、シンプルでいいのですが、先端に滑り止めがないので、チーズを強く押しつけると滑ってしまい、コツが必要でした。細かくおろせるのですが、周囲に飛び散ることが多いのも残念。

◆プレミアム ゼスターグレーター
ビアンキとデザインが似ているので、飛び散るかなと思ったのですが、ほとんど飛び散ることなく、なめらかな使い心地でした。滑り止めがあるので、力を入れても安定していていいですね。空気を多く含んだフワフワなチーズにおろせました。ただし、裏側にくっついてしまうので、洗うのが大変そうです。


◆エバーおろし
コンパクトなのですが、刃の向きが交互に付いているため、往復しておろせるのでスピーディーにできました。刃の立ち具合の角度が抑えめなぶん、他の4商品に比べてチーズが薄くおろせました。力もほとんど必要なくおろせるので、疲れにくいと思います。

5種類の検証の結果を発表
【スピーディーさ1位】 ダイヤモンドリナー
ハンドル式は使いやすくて速い。大量に使うならこれがおすすめ。
【くちどけ1位】 エバーおろし
とにかく薄くてフワフワでした。みずみずしく、口に入れるとすぐに溶けます。

5商品を比べると、見た目で違いが出ました。ダイヤモンドリナーとプレミアム ゼスターグレーターは糸状の仕上がりに。4面チーズグレーター ミニとステンレスグレーター L パルミジャーノは大きめの粉状に。エバーおろしの仕上がりは薄くなりました。
試食してみると、口に入れてすぐに溶けたのはエバーおろし。次にプレミアム ゼスターグレーター。どちらもフワフワな食感なので、スープなどに合いそうです。チーズの味わいをしっかりかんで楽しみたいなら、ダイヤモンドリナーがおすすめです。4面チーズグレーター ミニとステンレスグレーター L パルミジャーノは、細かいのですが、粒が硬く舌に残る印象がありました。
同じチーズを使っても、グレーターによってこれだけ食感の違いが出たのは面白い結果でした。調理方法に合わせて、または好みの食感に合わせてチーズグレーターを選ぶと、料理のおいしさがぐんと引き立ちますよ。(談)
(文 広瀬敬代、写真 菊池くらげ)
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