ガッキー&朝ドラ女優2人 ぜいたく起用、コーセーCM
売れるCMキャラクター探偵団

コーセーのスキンケアブランド「雪肌精」が発売35周年を迎えた2020年に、ブランド初の刷新を行った。英字ロゴ「SEKKISEI」と新シリーズ「雪肌精 クリアウェルネス」の導入は、雪肌精ユーザーのみならず多くの美容好きを驚かせた。リブランディングに際し、12年からミューズを務める新垣結衣に加えて、永野芽郁、清原果耶を新シリーズミューズに起用。有名女優を3人もぜいたくに起用した雪肌精の狙いとは。
35年で変化した消費者ニーズ
夜明けの地球の美しさをイメージした空間で水色のドレスを着た新垣結衣が、透明感のあるりんとした表情で「雪肌精が生まれ変わります」と宣言する。みずみずしい自然をバックに「肌の透明感と地球の青さは遠いようでもつながっているから。これからの化粧品はその両方を思うものでありたい」と続ける。新スキンケア成分配合に加え、サステナビリティー(持続可能性)にも配慮した独自価値の新ブランド「雪肌精 クリアウェルネス(以下、クリアウェルネス)」の誕生と、メッセージとなる「肌と地球を10年先まで美しく」という世界観を表現した。
1985年の発売以来、初のリブランディングという転機を迎えた「雪肌精」。特徴的な青いボトルと白のキャップは、中国を中心に海外でも支持されるようになった。今後見込まれるさらなるグローバル化を見据え、漢字のみだった製品ロゴは、英字の「SEKKISEI」がメインに切り替わった。世界的に高まっている「安全・安心」や「環境へのやさしさ(サステナビリティー)」へのニーズにも対応すべく、新シリーズのクリアウェルネスを新たに立ち上げた。
クリアウェルネスはClean & Skin Wellnessが製品コンセプト。植物由来の成分で独自開発したスキンケア成分「ITOWA」を配合し、肌のうるおいを守るバリア機能を向上させた。青いパッケージの「効能タイプ」と、低刺激処方で白いボトルの「フリータイプ」の2種類をそろえた。
上記の通り環境への配慮も重視。外装の一部に植物由来の原料を用い、プラスチックの使用量も削減した。外箱には段ボール素材を用いて、環境負荷の少ないバイオマスインキで印字した。さらに製品に同こんされる説明書や店頭パンフレットは、QRコードによる読み取り式にして紙の使用量を減らした。

ガッキーで脱・お母さんブランド
雪肌精は和漢植物由来の美容成分が特徴で、最初は化粧品専門店で販売員によるカウンセリング化粧品として売られていた。品質の良さと効能が人気を呼び、07年には松嶋菜々子を初めてミューズとして起用し、テレビCMも放映。認知が一気に広がり、ドラッグストアでも取り扱われるようになったことで、インバウンド客も獲得した。とりわけ漢方が根付く中国人客からは、漢字ロゴへの親和性も相まって熱烈に支持された。
一方、根強いファンを獲得しユーザーの離脱率が低くなれば、購買層の高齢化は避けられない。いつしか雪肌精は「お母さんが使うブランド」として若い層から認知されるようになった。そこで12年に若年層からの支持が高く、ブランドの世界観とも合致する新垣をミューズに起用し、ブランドの若返りを図った。「ガッキー効果」により、若年層に「自分たちのブランドだ」と認識させることに成功、その認知度は8~9割に上った。

インバウンド需要の追い風もあり右肩上がりの成長を続けていたが、「中国での人気が落ち着き、売上高300億円を記録した15年をピークに踊り場状態に入った」と、コーセーの山内鞠那氏は明かす。
その一方で、日本国内での人気は維持できていたため、リブランディングで積極策に打って出ることにした。ただ、コーセーを代表する35年もの歴史を持つブランドをリブランディングするのは、そう簡単ではない。「ロゴを英字にすること1つ取っても、消極的な声はあった」(山内氏)。しかし丹念に説得を繰り返し、何とか実現にこぎ着けた。
そんな肝煎りのリブランディングだけに、力が入るのも当然だろう。新垣結衣という国民的女優をブランドのミューズに起用しつつ、さらにこちらも朝ドラ女優として国民の認知度が高い永野・清原の2人を追加で起用したコーセーの狙いは何なのか。


分担して製品特徴を明確に
先述の通りクリアウェルネスは青の「効能」と白の「フリー」の2ラインで展開する。CMでは、青のラインを永野が、白のラインを清原が担当する。
「さらなる若年層の獲得を目指して2人を起用しました。ブランドの安心感と信頼感を訴求するために、若い人の憧れの存在であり、実力とともにピュアな透明感のあることが決め手です。2つの製品ラインの違いと特徴がはっきりと伝わるように、それぞれのイメージに寄り添って配役をしました」と、山内氏はなんともぜいたくな起用の理由を明かす。
リブランディング後はCMによる認知拡大とともに、店頭でのタッチアップ(試し使い)を想定していた。だが、コロナ禍でそれがかなわず、代替案としてウェブ上でのサンプリングを定期的に実施しており、サンプルを試した人の購入につながっているという。
他にもデジタル施策として、ユーザーがより身近に感じられるインフルエンサーによるPRを展開。「最近はネット上のPR案件に敏感なユーザーが増えてきたため、(信頼性を担保するため)既存の雪肌精ユーザーを中心に依頼した」(山内氏)
山内氏によると、テレビCMで憧れを抱き、SNS(交流サイト)で商品をチェックして購入につながるケースが多いという。一大転機における3人のミューズ起用の効果はじわじわと効いてきている。

(ライター 北川聖恵、写真提供 コーセー)
[日経クロストレンド 2021年6月15日の記事を再構成]
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