パナソニック新Let's note スリム×14型画面×拡張性
戸田覚の最新デジタル機器レビュー

パナソニックからノートパソコン「Let's note(レッツノート)」の新モデル「Let's note FV」がリリースされた。価格は直販モデルで27万6100円からと最近のパソコンとしてはかなり高価だが、それだけの価値のある製品となっている。今回はその魅力を詳しく紹介していこう。
外観は、一見これまでのLet's noteと似ているのだが、実物を手にすると大きな違いに気が付く。本体が非常にスリムに設計されており、厚さは18.2ミリとLet's noteとしてはとても薄いのだ。それでも、天板は従来モデルと同じく、表面に凸凹をつける「ボンネット構造」を採用して強度を確保するなど、「らしさ」を堅持している。


狭額縁の3対2ディスプレー
Let's note FVは、14インチディスプレーを搭載するモバイルノートだが、これまでの機種とは異なり、画面の縦横比は3対2だ。
16対9のVAIO Zと比較すると明らかに縦方向に画面が大きいことがわかる。その分横幅がやや狭くなり、正方形に近くなる。
ディスプレーの大きさは対角線の距離をインチで示している。同じサイズなら正方形に近いほうが面積は大きい。つまり、Let's note FVは、16対9の14インチモデルより画面が広い。

画面が縦方向に広いと仕事がしやすい。A4判の書類を表示する際にもムダなスペースがなくなる。また、ExcelやWordのメニューは標準では画面上部に表示されるので、横長のディスプレーだとどうしても編集できる領域が狭くなってしまうが、そうした点も解消される。逆に映画を見る際は、16対9の方が適している。
ディスプレーの解像度は2160×1440ドット。4Kまではいかないがそれなりに高精細だ。これまでLet's noteは解像度の高いディスプレーをあまり採用してこなかったので、これも大きく進化した点だ。
ディスプレーの横のベゼル(額縁)が狭いので、かばんへの納まりもよい。Let's noteといえば、堅ろう性を重視しているのが大きな特徴だが、設計に工夫をこらして狭額縁でも壊れにくさを堅持している。
変わらない素晴らしさ
Let's noteシリーズが堅持しているコンセプトがある。一つは拡張性の高さ。仕事で使うとなると、どうしても古い周辺機器を使わざるを得ないことがある。例えばオフィスビルに据え付けの古いプロジェクターなどは、いまだにVGAで接続しなければならない。Let's noteシリーズがいまだにVGA端子を搭載するのはそうした理由からだ。さらに有線LAN端子も装備する。


こうした古い端子を維持しながらも、Let's note FVは最新の規格にも対応している。USB Type-C端子は、最新のデータ転送規格「Thunderbolt 4」に対応する。モデルによっては高速データ通信の「5G」モジュールも内蔵可能だ(5Gはまだ不要というユーザー向けには、LTE搭載モデルも選択できる)。
バッテリーが交換できるのも昔からの特徴だ。このためバッテリーが劣化して交換が必要なときも、いちいち修理に出す必要がない。最近はバッテリーを交換できるノートパソコンがとても少なくなっているので希少だ。


キーボードは非常に打ちやすい
キーボードもLet's noteらしいデザインと配列だ。「リーフキー」と呼ぶ形状のキートップは、木の葉のように2方向(キーの左上と右下)の角が丸められている。矢印キーが他のキーよりも1段下がった配列は、ずっと変化していない。キーストロークは2ミリを確保しており、打ち心地は非常によい。

逆に変わったのがホイールパッドだ。Let's noteの円形のパッドは、円周をなぞるように回すとスクロールができる。Let's note FVではパッドのサイズが大きくなったので、画面が広くなっても操作しやすい。

キーボード面に指紋センサーを搭載するほか、顔認証によるログインにも対応する。コロナ禍でマスクをしているケースも多く、両方の手段でログインできるのはうれしい限りだ。

ネックは価格だけ
CPU(中央演算処理装置)は11世代のインテルCore iシリーズを搭載する。大容量ファンを2つ内蔵するなど徹底して冷却にこだわっており、高いパフォーマンスを長時間維持できよう工夫をこらしている。
モデルによっては、充電器が2つ付属する。専用のACアダプターに加え、100ワットのUSB PD対応充電器が付いてくる。この充電器が軽量で持ち運びやすい。

このようにLet's noteらしさを維持した上で、最軽量モデルは999グラムと1キロを切っているのは素晴らしい。そもそも、キーストロークの深さやバッテリー交換などを諦めればさらに薄く軽く作れるだろうが、それをしないのがLet's noteなのだ。
仕事向けのモバイルノートとしてはベストに近いと言える製品で、国内生産の安心感も強い。懸念されるのは価格の高さだけ。写真の最上位モデルは直販で39万8200円と簡単には手を出せない。だが、長年使えることは間違いなく、決してコストパフォーマンスが悪いわけではない。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は150点以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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