子どものケガや病気、医療費は 使える助成に地域で差

子育てにまつわるお金というと、教育費や養育費の心配ばかりしてしまいがちですが、「医療」にかかるお金も忘れてはいけません。子どもはよく熱を出したり、おなかが痛くなったり、ケガをしたりします。病院にもよく通いますから、その都度かかる医療費も気になります。
基本的に健康保険の自己負担は、就学前の子どもは2割、就学後~70歳までは3割。ただ、子どもの場合はこの自己負担をそのまま払うケースは少なく、各自治体の「子ども医療費助成」でかなり軽減されます。自治体により助成の内容は異なりますが、対象の子どもは医療費が無料になったり、金額や回数を決めて助成されたりするのです。
対象となる子どもは?どんな助成を受けられる?
子ども医療費助成を利用できるのは、公的医療保険に加入している子。年齢は自治体により異なりますが、都道府県単位でみると多くは小学校入学前までです。市区町村で独自の上乗せをしているケースもあり、自治体により助成の内容や対象者が異なります。
対象者の年齢は東京都内の市区町村の多くは中学卒業までですが、北区は18歳まで一部の助成を利用できます。全国的にみると、20歳や22歳までの学生を対象にしているところもあります。また、所得制限を設けている自治体もあります。助成の内容は、保険診療については全て無料というところもあれば、条件により助成する金額や回数を決めているというところもあります。実に様々なのです。
私が以前住んでいた札幌市では、児童手当相当の所得制限があり、一部自己負担をする形での助成でした。対象者ははじめ未就学の子どもだけでしたが、2009年1月に小学生(入院時)も対象になりました。初診時に一部負担金として医科は580円、歯科は510円かかり、再診や調剤薬局の薬などは無料でした。(※私の転居後、さらに対象が拡大され、現在は小学生は入院・通院時、中学生は入院時の医療費が対象になっているようです)
転居してきた東京都杉並区では、対象は中学3年生までで、医科歯科の病院医療費、調剤薬局は初・再診にかかわらず無料。所得制限はありません。
このほか、自治体によっては医療費の1割が自己負担(2割分を助成)だったり、高校を卒業するまで助成の一部を利用することができたりするなど、かなりばらつきがあります。自治体の特色といってもよいのかもしれません。ですから、転居をされる方は新しくお住まいの自治体の助成内容を確認しておいたほうがよいでしょう。
お住まいの都道府県以外、または市区町村以外で診療を受けた場合は、医療費はいったん立て替え払いとなり、後日、還付請求ができる仕組みになっている自治体が多いようです。
助成の対象にならないものは?
子どもの医療費を助成する「子ども医療費助成制度」ですが、対象にならないものもあります。これも自治体により違いがあり、主に保険診療外のものは自己負担となります。
具体的には
・保険診療に該当しないもの(差額ベッド代、薬の容器代、文書料、予防接種代、健診料など)
・交通事故など第三者行為によるもの
・学校、幼稚園、保育園の管理下でのけがによるもの(日本スポーツ振興センター法が適用される医療費)
・各健康保険組合等から支給される高額療養費、付加給付金に該当するもの
・特定の疾病で他の医療費助成制度で助成を受けられるもの(小児慢性疾患など)
このうち、学校などの教育施設でのケガなどにかかる医療費は、一時的に医療費の2割、3割といった健康保険の自己負担分を立て替え払いする必要があります。ですが、日本スポーツ振興センターの書式による診断書を学校などに提出することで、後日、医療費の4割が振り込みで戻ってくる仕組みです。自己負担した医療費より少し多く戻ってくるのです。
授業中、部活動中のケガなどは子ども医療費助成の医療証を使って受診すると、手続きが複雑になる場合もありますから、学校と相談してから受診するようにしましょう。
慢性疾患の医療費も子ども医療費助成が使えるのか
お子さんが慢性疾患で定期的に医療を受ける必要があるという方もいらっしゃるでしょう。心身に障害があるという場合もあるでしょう。その場合、疾患によっては小児慢性特定疾病医療費助成制度、自立支援医療制度といった公費負担の医療制度を利用できる可能性があります。
これらは「子ども医療費助成」よりも優先的に使われる制度で、これを利用してもなお、自己負担が発生する場合には、子ども医療費助成を併用して支援を受けることができます。
待望のお子さんが生まれた後、病気や障害などで医療的ケアが必要になることもあるでしょう。金銭的にも不安になると思います。ですが、このように日本では子どもの医療費を助成してくれる制度が整っていますから、必要な医療を、しっかりと受けさせてあげたいものです。

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