解凍いらず、ローソンの新スイーツ 素材と原料を工夫

ローソンが2021年4月27日に発売したのが、解凍いらずですぐに食べられる冷凍スイーツだ。「アップルパイ」「ドライフルーツとナッツのカッサータ」「ティラミス」(それぞれ2個入り、税込み399円)の3種。発売直後にゴールデンウイークに入ったが、一部の店舗では品切れになるほど好調な出足だという。

冷凍スイーツ自体は珍しくないが、冷凍庫から出してすぐに食べられるのが画期的。ローソンによると、解凍時間を減らしたいという消費者の声を意識して開発したという。「新しい冷凍技術を生み出したわけではありません。原料や素材の組み合わせを工夫することで、冷凍しても硬くなり過ぎないようにしています」(ローソン)
コロナ禍における消費者行動の変化を受け、ターゲット層を厳選。「外出自粛などでまとめ買いをする人が増えました。自宅でストックし、食べたいときにすぐ食べられるシーンを想定し、20~40代の女性をターゲットに開発しました」と話す。
狙いは見事に的中した。販売実績を見ると、購入者の約8割が女性。中でも20~40代の購入者がやはり多いというデータが出ている。
思いがけず、ヘルシー志向の人にもヒット
実は狙ったわけではなかったが、スイーツとしてはカロリーが控えめなのも奏功した。ローソンのデザート類は、200~300キロカロリーのラインアップが中心。それに対し、ドライフルーツとナッツのカッサータ(1個27グラム)は84キロカロリー、ティラミス(1個39グラム)は116キロカロリー、アップルパイ(1個52グラム)は155キロカロリー。カロリーを気にする人でも購入しやすくなっている。

「長時間保存したい」「解凍する時間は無駄」といった効率を重視する層に加え、「カロリーを抑えたい」という健康志向の層にも思いがけず刺さった格好だ。
解凍いらずの冷凍スイーツに目を付けたきっかけは、コロナ禍で冷凍食品の売り上げが伸びていたことだった。21年4月の1店舗当たりの冷凍食品販売高は、新型コロナウイルス感染症拡大前の19年4月と比べて約2割伸長。特に総菜系や冷凍フルーツの伸びが顕著だったという。そこに、冷凍スイーツ市場拡大の可能性を見いだした。
解凍いらずということではアイスクリームもあるが、「利用シーンに大きな違いはありません。ただ、アイスが溶けてしまうのに対し、冷凍スイーツはゆっくりと落ち着いて食べられます。気分によって食べ分けられるのではないでしょうか」(ローソン)。

実際に食べてみると、アイスケーキの感覚に近い。ファミリーレストランで注文するとクリームがカチカチに固まっていてすぐに食べられないことがあるが、そんな「お預け」をされることはない。適度な硬さに抑えられ、フォークを入れて簡単に一口サイズにできた。解凍の待ち時間がない快適さは、思った以上だ。低カロリーなので、「罪悪感」がなく食べられるのもうれしいポイントだった。
ローソンは3商品の売れ行きを踏まえ、ラインアップを拡充するかを判断するという。長時間保存できて、すぐにおいしく食べられる。そんなトレンドに乗った商品が盛り上がりを見せそうだ。
(日経トレンディ 寺村貴彰)
[日経クロストレンド 2021年5月14日の記事を再構成]
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