パソコンの動作なぜ鈍く?「見えない」アプリにも注意

OS(基本ソフト)やアプリの動作が重くなるのはなぜか。これはパソコンユーザー共通の疑問だろう。フリーソフトなどによる速度改善手法もあるが、それはいわば対症療法。本格的に取り組むには、遅さの原因をしっかりと理解しておく必要がある。アプリが遅くなる原因はさまざまだが、ここではCPU(中央演算処理装置)での処理に焦点を当ててみよう。
エクセルやブラウザーなどのプログラムは、パソコン内部のCPUが実行している。CPUはパソコンの「頭脳」として、ユーザーの操作に応じて結果を出す複雑な計算処理を行っている。
プログラムは何万というCPU命令(機械語)で構成されているが、CPUは原則、一度に1つの命令しか実行できない。だが実際には、複数のプログラムを極めて短時間で切り替えて実行しているため、見た目には複数のアプリが同時に動いているように映る(図1)。

複数のプログラムを順に実行、どれかが滞ると重くなる
それを実現しているのが高い動作クロックだ。例えば1ギガヘルツ(ギガは10億)のCPUは、大ざっぱに1秒間に約10億回の処理を実行できる(厳密には違う)。最近のCPUは2ギガ~4ギガヘルツが一般的。それだけの処理性能があれば、1秒間に何十というプログラムを切り替えても、同時実行のように見える。
ここからが本題だ。CPUはスケジュールされたタスク(予定)に従って、実行するプログラムを切り替える。タスクが滞りなく進めば、パソコンが重くなる心配はない。しかし、何らかの障害で特定のタスクが一定時間内に完了しないと、そのタスクは後回しにされ、次に順番待ちしているプログラムへと切り替わる。この一連の流れを「ラウンドロビン方式」と呼ぶ。問題は、一部の処理遅れが顕著になったり、処理遅れが多数発生した場合だ。ほかの順番待ちのプログラムにも影響が出てしまう。
CPUの使用率は「タスクマネージャー」で確認できる。この値が低いならCPUには余裕がある。だが、前述の処理遅れが多発すると、断続的に100%が続いてしまい、パソコンの動作が重くなる(図2、図3)。


ひどい状態になるとマウスポインターの動きがカクカクしたり、キーを押した文字が遅れて入力されたりする。また、パソコン内部のCPU冷却ファンが音を出して高速回転しているときも、100%になっている可能性が高い。なお、アプリの起動時などは一時的に100%に達することがあるが、100%が継続しないなら問題はない。
「見えない」アプリにも注意、CPUを消費しているかも
CPUを消費するのはエクセルやブラウザーなど、自分で起動したアプリだけではない。ウインドウを持たずに水面下で動作する「バックグラウンドプロセス」「ウィンドウズプロセス」といったアプリにも注意しよう(図4)。それらが原因でパソコンが重くなるケースもある。自動実行されるウイルススキャンやOSのメンテナンス機能などが典型だ。

負荷の高い作業でCPU使用率が急上昇するケースもある。ファイル圧縮がいい例で、圧縮が始まった途端にCPU使用率が急上昇して完了するまで下がらない(図5)。

圧縮と同時にウイルススキャンを実行すると、さらに使用率が上がり、図6の例では100%に達してしまった。

(ライター 石坂勇三)
[日経PC21 2021年7月号掲載記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。