在宅勤務の着こなし 信頼感高めたいなら紺、色を意識

コロナ禍でテレワークが定着したが、自宅で仕事をするときの着こなしに悩む人は多い。リモート会議で「失礼にならない」着こなしや、相手に好印象を与えるファッションについて専門家に聞いた。
在宅勤務の服装には「これが正解」という明確なルールがまだない。ビジネスパーソンの着こなしに詳しい服のコンサルタント、森井良行エレカジ代表は「ビジネススーツはオフィスのような無機質な空間でこそ似合うもの。自宅の場合はいくら片付けても生活感がにじむ」と指摘する。つまりテレワーク時代は「今までの『かっちりした見た目こそが正解』というビジネスファッションの常識が通用しない」のだ。
たしかに、部屋着のようなゆったりした服から、会社にいるのと変わらないフォーマルな服まで、リモート会議でみる装いはさまざまだ。プライベートな空間である家ではリラックスして仕事したい。しかしビジネスの場にそぐわないような悪目立ちはしたくない――。そんな"葛藤"も透けて見えるようだ。
そんな悩めるビジネスパーソンの味方が「アクティブスーツ」だ。伸縮性のある素材を使い、アクティブに動いても長時間座っていても快適。それでいてリモート会議でも違和感のない服装の総称だ。スポーツ用品メーカーや紳士服量販店で販売されていたが、テレワークの普及で一気に需要が高まった。今年2月にAOKIが発売した「アクティブワークスーツ」は上下で5000円程度という価格も注目されて完売。現在は夏向けの涼しい素材を使った第5弾の予約販売を受け付け中だ。

リモートワークの服装はビジネスに向く色を押さえたい。「基本色である黒、紺、グレーから選ぶと失敗がありません」(森井さん)。中に着るシャツは白が基本だが、淡い水色やピンクも画面映えするのでOKという。
自宅などからバーチャル背景を使って会議に出席する機会も増えた。そこで気をつけたいのは背景選び。せっかくビジネスにふさわしい服を選んでも「アウトドアやリゾートを背景にしてしまうと会議では浮いた感じに見える」(同)。カフェやホテルなど、実際のビジネスで使う場所の画像を選ぶと違和感がない。
商談などで直接会っているときは服装だけでなく、表情や声や姿勢など相手のさまざまな情報から「どんな人なのか?」を探っているもの。しかし画面越しではその情報量も限られる。それを補うため、会話の糸口になる小物やアクセサリーを「あえて」着用するのもおすすめだ。
男性は、特にビジネスの場では周囲から浮かないベーシックな着こなしが良いとされてきた。しかし世の中はテレワーク時代。小物やアクセサリーを身に着ければ「今日のこの時間を大切に思っています」というメッセージが伝わり、相手の好感度を高めやすい。そこから会話が広がったり、商談が円滑に進んだりすることもあるだろう。
ファッションの自由度が男性より高い女性の場合は「自分をどう見せたいか」を服で演出することもできる。オンラインファッションサロン『服装心理lab.』を運営するスタイリストの鴨井咲子さんは「色は人の心や行動に大きな影響を与えます」と強調する。たとえば自分が中心となって進めるプレゼンテーションや会議がある日は情熱的な赤を、同僚や部下の相談の聞き手になる日は柔らかいピンク、若々しくてフレッシュな印象を与えたい日には緑、信頼感を高めたいときは紺色の服を選ぶ。そうすることで画面を通じて「自分がその日相手に伝えたいと思っている雰囲気やイメージが伝わりやすくなる」(鴨井さん)。
これからの季節は白いシャツやTシャツを着る機会が多くなる。そのときに背景も真っ白にしてしまうと、カメラの自動補正機能で画面が暗くなってしまうことも。白い服の上に他の色のカーディガンをはおって色味を足したり、カラフルなストールを巻くことで調整しよう。
リモート会議では「自分がどう見えるか、どう見せたいのか」をよく考え、その日に着たいものをただ選ぶのではなく、相手に好感度を与えるような装いを心がけたい。
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ブートニエールに注目

上半身しか映らず、リアルな会議よりコミュニケーションが希薄になりがちなリモート会議。特に初対面の相手や、お互いをよく知らない関係性の人と話をするときは、相手の目に留まるようなものを身に着けると、そこからスムーズに会話が広がることもある。
なかでも男性の上着の襟元のボタン穴にさす「ブートニエール」(写真)は、いま注目のアイテムだ。女性でもつける人が増えているので、会話のきっかけになることも。上着だけでなくシャツにつけてボタン代わりに見せるのもおしゃれに見える。
(ライター 藍原 育子)
[NIKKEIプラス1 2021年5月22日付]
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