福本莉子 「東宝シンデレラ」の記念にヴィトンの財布

沢口靖子さん、長澤まさみさんら人気女優を輩出してきた「東宝シンデレラ」オーディション。その2016年のグランプリに輝き、めきめきと頭角を現しているのが、福本莉子さんだ。20歳の彼女が見せてくれたのは、自らの「原点」という財布だった。
「東宝シンデレラ」の記念に買ったルイ・ヴィトンの財布
「この財布は、私が『東宝シンデレラ』オーディションに受かったときに買ったものです。いただいた賞金で、長く使えるモノを買おうと考えたときに、浮かんだのが財布でした。父と地元・大阪の阪急百貨店に行って、いろんな財布を見ましたね。そこで直感的に『カワイイ!』と思ったのが、このルイ・ヴィトンの財布でした。
お気に入りは、この大きな金のボタン。ほかであまり見ない赤い色も含め、デザインが好きでした。ヴィトンへの憧れもありましたね。周りにお母さんのお下がりでバッグを持っている子が多くて、『大人の女性』っていう感じで、カッコイイなと思ってたんです。この財布は、ヴィトンだけど目立たないというか。『L』と『V』を重ねたモノグラムがさりげないところもいいなと思いました。あとは、大きすぎず、小さすぎないサイズ感も好きなポイントでした」


値段は「税込みで8万円くらい。当時高校1年生の私には、大金でした」と笑う。現金を下ろして購入したというが、今の彼女なら、別の支払い方法も選べる。
「最近、キャッシュレス化が進みましたよね。私もようやくキャッシュレス決済を使い始めて、やっと時代に追いついてきました(笑)。年齢的にそろそろ作ったほうがいいかなと思って、クレジットカードも作ったんですよ。そうすると、スマートフォンにアプリを入れておけば、残高がなくなったときにオートチャージしてくれる。いろんなものをスマホに入れられて、便利だなあと思いました。今は財布を持たない人もいるんじゃないですかね。私も次に財布を買うとしたら、もっと小さいものを選ぶことは間違いないです。
昨日、"いつ、この財布を買い替えるんだろう"と考えたんですよ。でも、まだ使えるし、革だから、使えば使うほど手に馴染んでくる。ヴィトンは、壊れても修理してもらえるんですよね。だからやっぱり、まだまだだなと。それにこの財布を見ると、初心を思い出すんです。これは私の原点。ずっと大切にしていきたいと思っています」


単独初主演映画とともに、和菓子も誕生
公開中の新作は、映画単独初主演作となる『しあわせのマスカット』。「人を幸せにするお菓子を作りたい」と岡山の和菓子メーカーに就職したものの、提携するぶどう農家に配属されてしまう主人公・相馬春奈を演じている。
「撮影は2年前。私が高校を卒業して上京した頃でした。主演への不安やプレッシャーはありましたが、夢に向かって挫折を繰り返す春奈ちゃんと重なる部分があったので、共感しながら演じることができました。ただし、春奈ちゃんは明るく、元気いっぱいの女の子。私自身はわりと落ち着いているほうなので、ギアを上げるのは大変でしたね。

春奈ちゃんは、竹中直人さん演じるぶどう農家の秋吉伸介さんに、マスカット作りを教えてもらいます。撮影で初めてグリーンハウスに入ったときは、感動しました。たくさんのマスカットがきれいだし、都会では土に触れる機会もないので、自然に癒やされました。問題は、ハウスの中で普通に立つと、頭がマスカットにぶつかること。竹中さんとずっと中腰で、『腰、痛いね!』と言いながらお芝居をしていました(笑)」
春奈の就職先は、岡山市に生産拠点がある和菓子メーカー「宗家 源吉兆庵」。映画では、そのモノ作りの現場や販売の裏側を垣間見ることができる。
「源吉兆庵さんには、本社や工場、販売店などを撮影で貸していただきました。そのとき差し入れとして、春奈ちゃんの人生を変える『陸乃宝珠』というお菓子を食べたんです。これが、めちゃくちゃおいしくて、マスカットがまるごと1個入ったぜいたくさがたまらない。私自身、果物が好きなので、ロマンを感じました。
ロマンと言えば、春奈ちゃんがマスカットを使った和菓子を考えて、スケッチブックに描く場面があるんです。今回、その和菓子を源吉兆庵さんが商品化してくださって、うれしかったですね。映画を見て『おいしそうだな』と思った方が本当に食べられるし、お店で和菓子から見た方には『こんな映画があるんだ。見に行こう』と思っていただける。ふわふわでおいしい『しあわせのマスカット』も、ぜひ楽しんでいただきたいです」


手間暇かけて、鍋を育てる
20年は地上波連ドラに初主演。今年は映画単独初主演と順調にキャリアを重ねる。忙しい日々を送る福本さんを、今、幸せにするモノとは?
「食です。私、もともと食べることが好きで、よく1人でランチに行ったりするんですよ。『仕事終わりに、あれを食べよう』と、食をご褒美にがんばることも多いですね。去年のコロナの自粛期間からは、自炊もよくするようになりました。時間があるときは、牛スネ肉を2時間くらい煮込んで、ビーフシチューを作ったり。すごくおいしかったです。
自炊が増えたので、最近、無水調理できるストウブ社の鍋を買ったんです。密閉性が高いから、水を入れなくても、野菜から水分が出る。おいしい料理ができるので、重宝しています。ただ、筋トレができそうなくらい重くて、洗うのもひと苦労なんです。まあ、その重さもまたいいんですけど。長持ちさせるために、『シーズニング』という油ならしの作業をするんですが、そんなふうにひと手間掛かるところも、鍋を育てている感じがして好きです」
成人後の変化として、モノを大事にするようになったという。
「もともとモノ持ちはいいほうなんですけど、より細かいところまで気にするようになりました。例えば、靴。ソールの裏にゴムを貼ると長持ちするので、一斉に裏貼りに出したりしましたね。最近読んだ本に、『モノに接するのと、人に接するのは同じ』というふうに書いてあって、本当にそうだなと思ったんですよ。モノを大事にしない人は、人に対しても同じように接してしまうかもしれない。どちらも丁寧に向き合いたいです。
今、欲しいモノですか? あ、仕事は欲しいです(笑)。私、仕事をして、終わったときにご褒美としてモノを買うタイプなんです。『しあわせのマスカット』の後はアクセサリーを買って、最近はブーツを買いました。ずっと気になっていたブーツで、高いので迷っていたんですけど、勇気を出してお店に行ったら、日本の在庫のラスト1足だったんです。今日履いてきたのは、そのブーツ。カツッカツッカツッと音を鳴らしながら歩いて、気合いが入りました」


しあわせのマスカット
自分がデザインした和菓子で、人を幸せにしたいーー。そう夢を抱いて和菓子メーカーに就職した相馬春奈。しかし配属されたのは、原材料を調達する部署。提携している農家の手伝いに行くと、偏屈で名高いぶどう農家の秋吉伸介に追い返される。それでも毎日通う春奈だったが、伸介はマスカット作りをやめようとしていた…。監督・吉田秋生 脚本・清水有生 出演・福本莉子、中河内雅貴、本仮屋ユイカ、土居裕子、長谷川初範、竹中直人 全国ロードショー中
(文 泊貴洋、写真 藤本和史)
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