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食中毒撃退の3原則 カレーはまず冷やして作り置きに

NIKKEI STYLE

食品のまとめ買いやデリバリー、テークアウトなどが日常的になり、これまで以上に食中毒に気を配る必要性が増している。梅雨と夏場に向け、食中毒を防ぐ注意点を専門家に聞いた。

食中毒は年間を通じて発生するが、O157で知られる腸管出血性大腸菌や、サルモネラ菌などの細菌は、気温25~30度で増えやすい。気温や湿度が上がる5月以降、こうした細菌が増殖し、食中毒の原因になる。

東京農業大学教授で日本食品衛生学会の副会長を務める小西良子さんは「まずは菌を付けない、増やさない、やっつける、という食中毒予防の3原則を守ってほしい」と話す。

(1)「付けない」 食材に菌を付けないための大前提は、食品を扱う前に手指を洗うことだ。肉や魚を保存するときは、ラップやポリ袋で包み、他の食材にドリップ(汁)などが付かないようにする。

肉や魚を切ったまな板や包丁はしっかり洗う。野菜を切ってから肉や魚を切るようしたり、野菜、肉・魚で、まな板や包丁を変えたりするなど、調理の順序に気を配ることも大切だ。

(2)「増やさない」 細菌が増殖する環境に食品を置かないようにすること。食材はすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れる。その際に詰め込みすぎない。庫内に長く置かず、早く食べるなど。

(3)「やっつける」 殺菌・消毒で菌を死滅させること。多くの細菌は75度以上で1分以上加熱すると死滅するので、食材の中心部までしっかりと火を通して食べるようにする。使い終えた調理器具を洗剤でよく洗う動作は、ここでも大切だ。

夏はカレーの食中毒が多発する。100度の高温で加熱調理しても死滅しない細菌もあり、冷める過程で細菌が増殖しやすい。カレーやシチューなどの煮込み料理、チャーハンやパスタなどの米・小麦料理は、調理後室温で放置すると菌が増えやすい。

「作り置きする場合は冷ますのに時間をかけてはダメ。鍋ごと冷水に浸すか、耐熱性の保存容器に小分けして速やかに冷まし、冷蔵または冷凍で保存するのがいい」と小西さんは勧める。

キャンプなどでカレーを作り、翌日食べて食中毒が起きるという事故も多い。冷蔵保存ができない場合は食べる前、高温になるまで十分に再加熱しよう。「口当たりがよい程度の温め方では足りない。特に肉の入ったカレーやシチューは要注意。酸素が嫌いな菌が増えやすいので、よくかき混ぜながら加熱することも大切」(小西さん)

冷蔵庫内など温度の低い場所が好きな細菌もいる。たとえばリステリア菌は4度以下の低温でも増え、食中毒になると妊婦が流産することもあるという。「ナチュラルチーズ、生ハムなどで食中毒の事例があるので、妊娠中は食べない」

鶏肉などの食肉に付着しているカンピロバクターという細菌も、冷蔵庫内を好む。75度以上で1分以上加熱すると死滅するので、食材は中心部までしっかり火を通すこと。

冷凍のメンチカツで食中毒が起きたこともある。揚げ方が足りず、中まで火が通っていなかったからだ。メンチカツや鶏の唐揚げなどは、自宅で揚げた場合も、総菜として買ってきた場合でも、肉の色が茶色くなり、中まで火が通っているか、切って確かめると安心だ。

スーパーやコンビニエンスストアの総菜や弁当は、どんな点に注意すればよいのか。

コンビニ弁当などは食品添加物を多用して食中毒事故を防いでいると考える人もいるが、一概にそうとは言えないという。例えばローソンのオリジナル商品は「合成着色料・保存料は使わず、加熱後や盛り付け時、販売時の温度管理を徹底することで細菌の増殖を防ぎ、安全・安心な商品を提供している」(ローソン品質管理部の三森伸二郎さん)。それだけに、購入時は商品に記載がある保存方法をチェックし、消費期限内に食べるように心がけることが大切だ。

また「最近主流になっている『チルド』管理の弁当類は冷蔵保管が必要なので、すぐに食べない場合は冷蔵庫で保管してほしい」(同)。

日々の食中毒予防に気を使い、暑い季節にも安全においしく食事を楽しもう。

◇  ◇  ◇

買い物やデリバリーも気を配る

買い物に出かけるときは肉や魚の生鮮食品を最後のほうに買い、持ち歩く時間をできるだけ短くする。保冷バッグなどを携帯し、冷たい状態をキープする習慣もしっかり身につけたい=写真。

また、コンビニなどで店内調理されている唐揚げなどの揚げ物を夏場に持ち帰った場合は、常温放置せず、2時間以内に食べるようにしよう。デリバリーされた食品も、できるだけすぐに食べる。要冷蔵と記載があるのに冷えていなかったり、容器が破損していたりする場合は食べるのを避けるといった配慮も必要だ。

(ライター 土井 ゆう子)

[NIKKEIプラス1 2021年5月1日付]

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