さとうほなみ 撮影のご褒美にトカゲのブレスレット

人気バンド「ゲスの極み乙女。」のドラマー「ほな・いこか」として知られ、近年は俳優としても活躍している、さとうほなみさん。Netflix映画『彼女』の撮影を乗り越えて購入したのは、トカゲをかたどったブレスレットだった。
手首を這(は)うトカゲのブレスレット
「私は生き物をモチーフにしたアクセサリーが好きで、黒い蛇のネックレスとか、ホウセキゾウムシの指輪とか、いろいろ集めてるんです。きっかけは20代前半に、ヤモリの指輪を買ったこと。それが、とっても可愛(かわい)くて、そこからハマりました。特に好きなのは、爬虫(はちゅう)類。なかでも一番好きなのが蛇です。本物の蛇とはまだ触れ合ったことがないんですけど、『何を飼いたいか?』と言われたら、蛇って答えます。

このトカゲのブレスレットは、前から欲しいと思っていたものです。でも、気軽に手を出せる値段じゃないので、いつか買おうと狙っていて。今回『彼女』への出演が決まったタイミングで、『ハードな撮影になるだろうから、乗りきったときのご褒美にしよう』と思いました」
『彼女』は、中村珍さんのマンガ『羣青(ぐんじょう)』を、『ヴァイブレータ』(03年)、『余命1ヶ月の花嫁』(09年)の名匠・廣木隆一監督が、Netflixと組んで映画化した作品(Netflixで世界独占配信中)。さとうさんは、自分に好意を寄せていた高校の同級生・永澤レイ(水原希子)に"夫殺し"を依頼し、ともに逃避行をする篠田七恵を演じている。
「『羣青』は数年前に読んでいて、すごく好きなマンガだったんです。波乱続きの2人の気持ちが、ずっと相いれないというか。通じ合うものはあると思うんですけど、どっちかが歩み寄ると、どっちかが下がるというやりとりが、とても心に響いて。もしこれを映像化するのであれば、絶対に携わらせていただきたいなと思っていました。だから今回のお話をいただいたときは、なんとも言葉にできない気持ちになりましたね。
七恵という女性は、両親がおらず、友だちもいなくて、結婚したと思ったら旦那に暴力をふるわれ……と、誰にも甘えたり、弱さを打ち明けたりできずに生きてきた人。でも、レイに弱さを知られて、彼女にはだんだん心を開いていくようになる。今回はクランクイン前に、水原希子さんと何回かリハーサルをさせていただきました。監督は、お芝居を見て『こうしてほしい』と言うのではなく、『どうしてそうなったの?』と聞いてくれる。考える機会を与えて、一緒に考えてくれる廣木監督のやり方は、すごく素敵(すてき)だなと思いました」


順撮りで役を生きた『彼女』
予算やスケジュールの都合上、日本映画ではロケ地が近いシーンなどをまとめて撮ることが多い。そのためオープニングとラストカットを同日に撮るようなことも起こるが、『彼女』は、脚本の流れに沿って撮っていく"順撮り"で撮影されている。それによってリアルに変化していく2人の空気感と、身も心もさらけ出すクライマックスが見どころだ。
「順撮りできたことがすごく大きかったですし、撮影期間中は誰とも連絡を取らなかったので、自分というか、七恵の中で、レイの存在がどんどん大きくなっていきました。そんな気持ちの変化が、画面にそのまま出てるんじゃないかと思います。クライマックスの撮影は、ストーリーの終わりに向かって全力で走っている感じだったんです。だから、あのとき起きた出来事に対して以外、何も考えられなかったというか。緊張とか、恥ずかしいとか、そんなことも考えられないくらい、役に入り込んでいました。

今回、一番大変だったのは運転です。車のシーンは全部、自分で運転しているんですよ。例えばBMWの赤いオープンカーでレイを迎えに行くシーンも、夜の高速道路をギリギリまで飛ばしている。どんなふうに映るのか想像できなかったんですけど、映像を見たらキレイなシーンに仕上がっていて、うれしかったです。完成した作品は、このキャスト、スタッフのチームでないと成し得なかった、心に響くものになったと思っています」
そして『彼女』のクランクアップとともに購入したのが、トカゲ形のブレスレットとなる。
「自分へのご褒美として何かを買うのは、これが初めて。手にしたときは本当にうれしかったですね。着け心地ですか? うーん、カワイイです。本当にカワイイ(笑)。大切なので普段使いはなかなかできなくて、着けるときを選んでます。……と言いつつ、今、カバンに戻すときに投げちゃったんですけど(笑)」


欲しいのは、危険ゼロの料理グッズ
「さとうほなみ」名義で俳優活動を開始したのは、2017年から。自らオーディションに出向いて舞台に出演するなど精力的に活動し、20年は行定勲監督の『窮鼠(きゅうそ)はチーズの夢を見る』で映画に初出演を果たした。私生活では「料理はまったくしない」と言う。
「ライブの前に包丁で指を切ったりしていたので、なるべく料理をしない。火も使わないように生きている毎日です。だから、ゆで卵も作れなかったんですよ。でも最近、電子レンジでゆで卵が4つまで作れる容器の存在を知って。確実に手に入れたいと思って、ネットで購入しました。すごく便利です。
今欲しいものも、火を使わず、おいしいご飯ができる料理グッズです。もう、ハウスキーパーさんを雇ったほうがいいんじゃないかと思われるかもですが、料理以外の家事は好きなんです。だから、シェフを雇ったほうがいいのかな(笑)」
今後もミュージシャンと俳優の二足のわらじでやっていくという。
「私が生きていく上で思ってることは、ずっと変わってなくて。それは、ただひたすら、自分が楽しいと思えることをやっていたいということ。お芝居は今、本当に楽しいんです。その楽しむ姿勢を忘れないように、音楽との両輪でやっていきたいと思います」


Netflix映画『彼女』
美容整形外科医として働く永澤レイに、ある日、高校時代に思いを寄せていた同級生・篠田七恵から電話が入る。会うと、七恵は夫から激しい家庭内暴力を受けていた。夫殺しを依頼されたレイは、七恵のために刃物を持って実行。2人は逃避行の旅に出る。監督・廣木隆一 脚本・吉川菜美 原作・中村珍『羣青』(小学館IKKIコミックス) 出演・水原希子、さとうほなみ、真木よう子、鈴木杏、田中哲司、南沙良、植村友結、新納慎也、田中俊介、烏丸せつこ
Netflixにて全世界独占配信中
(文 泊貴洋、写真 藤本和史)
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