ハウスの「夜遅カレー」 低カロリーでカップ入り

レトルトカレーをカップに入れられないか――。そんな小さいようで大きな挑戦に約3年を費やし、ついに商品化を果たしたのが、ハウス食品が2月8日に発売した「やさしく夜遅カレー」だ。加熱・加圧しても壊れないカップ選びと、カレーらしい中身の両立という課題をクリア。レトルトカレーの「空白地帯」である20~30代女性を狙い撃ちする。
手軽に調理できるカレーといえば、パウチと呼ばれる袋に入ったレトルトを思い浮かべるだろう。ご飯を炊いて皿に盛り付け、その上に湯で温めたカレーをかけるだけで完成する。1968年に大塚食品が世界初の市販レトルトカレー「ボンカレー」を発売して以来、半世紀にわたって愛されている。その調理ステップをさらに簡略化するため、ルーをカップに入れ、ご飯が無くても食べられるスープ仕立てにしたのが「やさしく夜遅カレー」だ。ハウス食品がカレーをカップに入れたのは初の試みという。
カップの蓋を少しはがし、500ワットの電子レンジで1分間温めるだけの即席調理。食べ終わったら容器を捨てるだけなので、洗い物の手間も省ける。素材を生かしたレトルトのおいしさと、即席スープの手軽さを併せ持つ商品だ。


味は、「濃厚あめ色玉ねぎ&ブイヨン」と「まろやか完熟トマト&5種の野菜」の2種類。1食170グラムで1日に必要な野菜の3分の1が取れ、油分や小麦粉の使用を最小限にすることで約90キロカロリーに抑えた。一般的なレトルトカレーは約170~200グラムで約160~180キロカロリーの商品が多いが、夜遅カレーのカロリー量はそのおよそ半分だ。
「空白地帯」に挑むために、繰り返したテスト
ハウス食品によると、レトルトカレーの市場規模は14年度の508億円から19年度は612億円に伸長している。主な購入層は40代以上の男性で、20~30代の購入者は少ない。特に女性は「空白地帯」だったという。そこを狙ったのが夜遅カレーだ。ハウス食品で調理済みカレーの企画を担当する磯豪氏は、「手軽に調理できてヘルシーな商品であれば、若い女性にもアプローチできると考えた」と開発意図を明かす。

完成までには、構想が浮かんだ18年春から約3年を要した。レトルトの新製品であればその半分の期間で済むが、カップ選びと中身のバランス調整が難航したのだ。
レトルトカレーは調理した中身を詰めた後、レトルト釜で加圧加熱殺菌される。これにより保存料や添加物を使わず長期間保存できるようになる。カップに蓋をした状態で圧力をかけると、圧力に耐えきれずにカップが壊れてしまう問題があった。様々な形態のカップと中身の組み合わせを試し、圧力や温度、時間を何度も変更してテストを繰り返した。
カップの耐性を考慮しつつ、カレーっぽい風味や食感を出すのも重要な課題だった。19年2月に初めての試作品が完成すると、数カ月に1回のペースで消費者に試食調査を行った。その結果、味の方向性は変わり、「最初はスープっぽさを重視していましたが、試食した方の声を聞くうちに、粘度を上げてカレーっぽさを優先することにしました」(磯氏)。
商品名の通り、「夜遅」の午後10時ごろに「まろやか完熟トマト&5種の野菜」を食べてみた。スパイスの刺激が適度に抑えられ、ポタージュスープのように胃に優しい感じがした。糖質を抑えてご飯を抜いたので、洗い物はスプーンだけ。夜に食べるのは罪悪感があるという人でも、ちょっとした夜食に合うだろう。
ハウス食品は今後、エリアを絞って同商品を通年販売し、年間売り上げ2億~3億円を目指す。販売状況を見つつ、新しい味を追加する考えもあるという。
(日経トレンディ 寺村貴彰)
[日経クロストレンド 2021年2月19日の記事を再構成]
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