コロナ休業支援金、5つの誤解解く 従業員の申請OK
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新型コロナウイルスの感染拡大を理由に、勤務先から休業を命じられる人が少なくありません。休業する場合、本来は勤務先から休業手当が支払われますが、受けられないケースも。野村総合研究所の調査によれば、2020年12月時点で新型コロナウイルス感染症の影響でシフトが減少しているパート・アルバイト女性の24.3%しか休業手当を受け取っていないことが明らかになりました(野村総合研究所「コロナによる休業・シフト減のパート・アルバイト女性の実態に関する調査」より)。
休業手当が支払われない人のために、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」制度が設けられていますが、その利用が思うように進んでいません。予算5442億円のうち、2月4日時点の累計支給決定額は約701億円と、わずか13%。もし新型コロナウイルスの影響で休業し、何ら手当を受けていない場合は、ご自身が対象者として申請できるか、ぜひ本稿で確認ください。
支給の対象となる人とは
労働基準法では、使用者の責に帰すべき事由により労働者を休業させる場合、平均賃金の60%以上の休業手当を支払うことを義務付けています(同法第26条)。新型コロナウイルス感染症の影響による休業はどうなのか、という意見も聞かれます。たとえば、勤務先の店舗が入居しているショッピングモールなどの施設全体が休館して休業となった場合など、外的な事業運営環境の変化による場合であっても、事業主が労働者を休業させたことに当たります。
休業手当を支払う企業には、国に「雇用調整助成金」を申請すれば、休業手当の一部または全部が補助される仕組みがあります。しかし、手続きが複雑なために申請を断念する企業も多く、結果として休業手当が十分に支給されていない実情があります。
この「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下、休業支援金)」は、次の2つの条件いずれも該当する人が対象となります。
(2)その休業に対する賃金(休業手当)を受けることができない方
(※1)厚生労働省は12日、緊急事態宣言の影響を受けた大企業に勤める非正規雇用労働者も対象に追加することを発表。なお対象となる期間は、20年4月1日から6月30日までの休業および21年1月8日以降の休業を含む。ただし、20年11月7日以降に時短要請を発令した都道府県は、それぞれの要請の始期以降の休業も含む。
これらの条件に該当する方に、休業の実績に応じて、休業前賃金の8割(日額上限1万1000円。ただし、大企業の非正規雇用労働者で20年4月から6月末までは休業前の賃金の6割を予定)が支給されます。なお、病気による欠勤や労働者本人の事情による休暇を取った日などは支給対象とはなりません。
休業に関しては、労使で共同して作成した支給要件確認書により確認できれば、労働契約書などの添付書類は不要です。
申請スケジュールは、休業した期間が20年10~12月の場合は、21年3月31日が締め切り、休業した期間が21年1月から緊急事態宣言が解除された月の翌月末までの期間は、対象期間の末日の月が属する月の3カ月後の末日が締め切り(いずれも郵送の場合は締め切り日必着)となります。
なお、シフト制や日々雇用、登録型派遣など(※2)で20年4~9月に休業した人の申請期限については、1月31日から3月31日に延長されました。
(※2) 20年10月30日公表のリーフレットの対象者
また、大企業に勤める非正規雇用労働者の受け付け開始時期は現在調整中です。
休業支援金にまつわる5つの誤解
この休業支援金について、筆者も周囲にヒアリングしたところ、様々な誤解があると感じました。正しく理解するためにも、ポイントを絞って解説します。
休業支援金は、事業主が従業員の分をまとめて申請することもできますが、労働者本人が申請できます。原則として、労働者と事業主が共同して作成した「支給要件確認書」で、支給対象となる休業があったことを確認しますが、もし事業主の協力が得られない場合でも諦める必要はありません。
「事業主記入欄」に押印や休業の証明がなくとも、事業主の協力を得られない旨などを記載して、シフト表や給与明細などを添付することで申請することができます。この場合、都道府県労働局から事業主に確認や協力依頼が行われます。
会社側からすれば、この休業支援金を申請することで休業手当を支給していないことを認めると、労働基準法違反になってあとで罰せられるのではないかと考え、尻込みしてしまうケースもあるようです。
しかし、厚生労働省はリーフレットにおいて、「この支給要件確認書の記載は、休業支援金の支給要件を確認するためのものであり、労働基準法第26条の休業手当の支払義務の該当性について判断するものではありません」と明示しています。事業主の費用負担もありません。
この制度については、雇用保険に加入する正社員や契約社員ばかりでなく、雇用保険に加入していないパートやアルバイトの方も対象となります。もちろん外国籍の方も対象です。
雇用保険の一般被保険者になるには、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあることが要件ですが、20時間未満で働く方は多数います。また、昼間学生は学業が本分のため雇用保険には加入できません。こうした方たちについても、救済される仕組みになっています。
休業前の就労実態を踏まえて、申請対象期間に事業主が休業させたことについて労使の認識が一致したうえで支給要件確認書を作成すれば、シフト制で働く方や日々雇用者も休業支援金の対象になります。
本来は労働条件通知書に始業・終業時刻を記載するのが原則ですが、何パターンものシフトがある場合、「シフト表による」といった具合で所定労働時間が記載されていないケースは珍しくありません。申請対象月のシフト表がある場合や、労働条件通知書に「週〇日勤務」など具体的な勤務日が記載されていて、内容に誤りがなければ対象となります。
また、休業開始月前の給与明細などにより、6カ月以上の間、原則として月4日以上の勤務がある事実が確認可能で、かつ、事業主に対して、新型コロナウイルスの影響がなければ申請対象月において同様の勤務を続けさせていた意向が確認できるケースも対象になります。
一部の地域では緊急事態宣言によって夜の営業を取りやめるなど時短営業の動きが広がっています。こうした時短営業によって、勤務時間が減らされてしまうことなどもありますが、全日休業でない場合でも休業支援金の対象になります。
たとえば、もともと1日8時間のシフトが3時間に減ってしまう場合など、1日4時間未満の就労であれば、0.5日休業したものとして対象になります。ただし、4時間未満の就労であっても、所定労働時間が4時間未満の場合に、所定労働時間どおりに就労している場合は1日としてカウントします(たとえば、所定労働時間が3時間の場合で、3時間就労した場合は1日としてカウント。2時間就労し、1時間休業の場合は 0.5 日としてカウント)。また、週5日から週3日勤務になるなど、月の一部分の休業も対象となります。
オンライン申請可能、積極的な活用を
前述の野村総合研究所の調査によると、コロナによる休業支援金のことを知っている人は、パート・アルバイト女性の16.1%しかおらず、実際に申請して受け取っている人は8.5%にすぎません。「自分が申請対象になるのか分からなかった」(66.5%)と回答しており、本来届けたい人に、必要な情報が届いていないことが浮き彫りになりました。
残念なことに、20年の自殺者数は2万919人(警察庁と厚労省が21年1月22日発表の速報値)にのぼり、リーマン・ショック直後の09年以来、11年ぶりの増加に転じました。なかでも女性や若者の増加が目立ちます。
特に、非正規女性労働者に大きな打撃を与えており、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済的な困窮は深刻です。
休業支援金の申請を自分で行うのは難しいのでは? と尻込みする方もいるかもしれませんが、手続きはそれほど複雑なものではなく、オンライン申請も可能です。厚生労働省の説明動画も参考になるでしょう。不明点はコールセンター(0120-221-276)で対応していますので、ぜひ要件に該当する多くの方に活用していただきたいと思います。
https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html

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