五輪イヤーに売れるご当地ワイン 日本のおすすめ9本
エンジョイ・ワイン(35)

開催が2020年から1年延期された東京五輪・パラリンピック。昨年来のコロナ禍で、その開催の行方には今なお注目が集まっているが、それはさておき、日本には五輪の年には開催国のワインが売れるという法則がある。開催地への関心の高まりが、ご当地ワインへの興味をいざなうからにちがいない。世界中で造られ、飲み続けられてきたワインだからこそ可能な楽しみ方でもある。その法則に従えば、今年は日本ワインが注目だ。そこで今回は、品ぞろえが豊富なワインショップ3店のいち押し日本ワインをご紹介しよう。
やや古いが、東京税関が2004年10月にまとめた「ボトル・ワインの輸入」という資料がある。小さい文字や数字がびっしりと詰まったお堅いものではなく、カラフルなグラフやイラストをちりばめ、ホットワインの作り方や飲み切れなかったワインの上手な利用法なども紹介してあり、資料というより手作り感満載のニュースレターといった趣のものだ。きっと、ワイン好きな税関職員が精魂込めて作ったものに違いない。
この中に「ボトル・ワインのオリンピック開催年輸入状況」という項目がある。2004年にはアテネ五輪が開催されたことにちなみ、資料作成を思いついたのかもしれない。2004年のギリシャワイン、シドニー五輪の年(2000年)のオーストラリアワイン、バルセロナ五輪の年(1992年)のスペインワインの4~8月の輸入量をそれぞれ前年と比較している。なぜかアトランタ五輪の年(1996年)の米国ワインのデータは載っていないが、堅い話は抜きにしてデータを見てみると、確かに輸入量の増加が顕著だ。
ギリシャワインは5カ月間で91万本が輸入され、前年同期比で8.1倍も伸びた。特に開幕直前の6月と7月は各11.0倍、9.3倍と伸びが激しい。それと比べると劣るが、オーストラリアワイン、スペインワインもそれぞれ58%増、85%増と、普通でない増え方だ。ギリシャワインの伸びが大きいのは、ふだんあまり飲まないため、関心が高まったせいかもしれない。
ふだんあまり飲まないと言えば、国産ブドウ100%で造る日本ワインも一緒だ。ここ数年、人気が高まってきたとは言え、海外の有名産地のワインと比べるとなじみが薄い。とはいえ、このコラムで何度も書いているように、最近の日本ワインの品質の向上は目覚ましく、ワイナリー数の増加に伴い、味わいも多様化している。
そこで、日本ワイン専門や日本ワインの品ぞろえが充実したワインショップ3店に、中でもおすすめの日本ワインを3本ずつ選んでもらった。
一番手は昨年12月にオープンした日本ワイン専門のオンライン・ワインショップ「wa-syu」(https://wa-syu.com/)。運営会社はアパレル大手のジュンだが、同社は1979年から山梨県でワイナリー「シャトージュン」を経営するなど、ワインビジネスの歴史は長い。

岩崎醸造【岩崎醸造×wa-syu】IWAI KAMOSHI -SPARKLING No.1(税込み5940円)
山梨県甲州市勝沼町のワイナリー岩崎醸造が手掛ける甲州種100%の辛口スパークリングワイン。「フレッシュな柑橘(かんきつ)系のアロマと酵母由来のトーストのような香りのバランスが心地よく、ジューシーな口当たりで飲みやすい」
シャトー勝沼【wa-syu限定】シュール・リー甲州スパークリング2018(税込み5500円)
勝沼町の中でも特に銘醸地として評判のよい鳥居平や菱山地区に自社畑を持つ老舗ワイナリーが醸す甲州種100%のやや辛口スパークリングワイン。「甲州は水っぽいと思っている人がこのワインを飲んだら、きっとイメージが変わる1本」
島之内フジマル醸造所 大阪デラウェア2020(税込み2860円)
大阪市内のワイナリーが醸造する辛口白ワイン。「デラウェアの優しい甘い香り、種ありデラウェアならではの酸味とうま味のバランスが見事。2020年の新酒らしいフレッシュ感がありつつ複雑みもあり、幅広い料理と合う」
カーヴドリラックス(https://www.cavederelax.com/)は国内外のワインを豊富に取りそろえ、ワイン愛好家の利用も多い。

機山洋酒工業 キザンワイン 白 2019(税抜き1450円)
山梨県甲州市にある家族経営のワイナリーが造る甲州種100%の辛口白ワイン。「白桃やグレープフルーツのようなアロマと、ナッツの香ばしさなどが感じられ、和洋中さまざまな料理に合うが、特に照り焼きや煮物、味噌を使った料理などとの相性がよい」
タケダワイナリー サン・スフル赤 2018(税抜き2100円)
マスカット・ベーリーA種から造る山形県産の辛口赤ワイン。サン・スフルは亜硫酸(酸化防止剤)無添加の意味。「フレッシュな酸とバランスのよいボディー、ブドウそのもの素晴らしさが実感できる。うま味がギュッと詰まっており、身体にすっと染み渡るワイン」
ココ・ファーム・ワイナリー プティ・マンサン 2018(税抜き3700円)
プティ・マンサンはフランスなどで使われる白ブドウ。「りんご、かりん、黄桃、パイナップルに加え、発酵バター、クリーム、蜂蜜やドライアプリコットの香りがする。凝縮感のある果実味、きれいに伸びる豊かな酸とほんのり感じる心地良い甘みのバランスが絶妙」
最後はIMADEYA(https://www.imaday.jp/)。日本酒のラインアップが充実しているが、日本ワインも実店舗に生産者を招いて試飲会を開くなど力を入れている。
平川ワイナリー【IMADEYA限定ワイン】サンパ オリジナル ブラン 2019(税抜き5840円)
2015年に北海道余市町にオープンした新興ワイナリーの白ワイン。凛(りん)とした酸が特徴のケルナーとアロマティック品種のゲヴュルツトラミネールのブレンド。「白桃やアンズ、花の蜜を連想させるような味わい深い果実味を持った、濃密感、凝縮感に優れたワイン」

都農ワイン キャンブルスコ・ロゼ ペティアン 2019(税抜き2130円)
宮崎県のワイナリーがキャンベル・アーリー種から造る辛口の微発泡ロゼワイン。「低アルコール(8%)で、フルーティーな香りとプチプチとした泡が特徴。リピーターがとても多い」
勝沼醸造 アルガーノ モンテ 赤 2018(税抜き3000円)
山梨県甲府盆地の北西に位置する丘陵地帯で育ったマスカット・ベーリーAを発酵後、フレンチオークの樽(たる)で熟成させた辛口赤ワイン。「ベリー系の香りと豊かな果実味に加え、ほのかなタンニン(渋み)が、優しい味わいの料理に寄り添う」
今回、紹介したワイン以外にも各ショップおすすめの日本ワインはたくさんある。おいしい日本ワインを飲みながら東京五輪・パラリンピックを観戦すれば、きっと応援にも一段と熱が入ることだろう。
(ライター 猪瀬聖)
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