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日本でも開始 Apple Watchの心電図機能を使ってみた

NIKKEI STYLE

新型コロナウイルスの影響が広がる中、自宅で過ごす時間が長くなった人々の間に健康志向が高まっている。そこで今回は、2021年1月27日にアップルがOSのアップデートによりスマートウオッチのApple Watchに追加したヘルスケア系の新機能を紹介したい。

使い方は簡単、ヘルスケア系の新機能が日本上陸

Apple WatchはiPhoneにペアリングして、メールやメッセージの確認からアクティビティーのトラッキング、そしてヘルスケアまで幅広く活用できるスマートウオッチだ。アップルが定期的に提供するwatchOSをアップデートすると新しい機能が使えるようになり、バグ修正などが行われて基本動作が安定する。

今回リリースされたApple Watchユーザー向け、ヘルスケア系の2つの新機能は、一つが「心電図アプリ」、もう一つが「不規則な心拍の通知」だ。watchOS 7.3以降のApple Watchと、iOS 14.4以降のiPhoneによるペアが基本の動作環境になる。

どちらも海外では18年から北米を皮切りにリリースされ、以後アップルが世界の国や地域に展開してきた。このほどソフトウエアの技術により実現する2つの機能が厚生労働省の所管機関である独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)から管理医療機器として承認を受けて日本でのサービス実現を果たした。

筆者はこれまでに受診した健康診断で幾度か「心拍に雑音あり」という結果をもらったことがあり、小型の心電図計測器を終日身に着けて過ごす検査も何度か体験した。一度はとても暑い夏に検査を受けて非常につらい思いをした。以来自身の心臓のケアには気を配るようになったが、今回Apple Watchに新機能が加わったことに歓喜している。ただ、2つの機能には「できること・できないこと」がある。それぞれ正しく理解したうえで上手に使いたい。

心拍の状態を測って心房細動の兆候を検知する

心電図アプリは名前の通り、Apple Watchのセンサーを使って心電図を記録する。不規則な心拍の通知機能はユーザーが安静にしている間に様々なタスクのバックグラウンドで時々実行される。アップルの説明では1日にチェックする回数はユーザーの活動パターンによっても変わるとされている。

心電図アプリは電気式心拍センサーを内蔵するApple Watch Series 6/Series 5/Series 4の3機種が対応する。不規則な心拍の通知は光学式心拍センサーを搭載するApple Watch Series 3以降のApple Watch SEを含む各機種で使える機能だ。各セットアップはiOSのヘルスケアアプリで行う。

どちらの機能も不整脈として診断される心疾患の一種である「心房細動」の兆候を検知することに特化したものだ。毎日身に着けて使うスマートウオッチで心房細動の兆候が調べられるのはとても画期的だと思う。ただし、2つの機能が、すべての心臓発作の兆候を検知して予防のための効果を発揮するものではないことは十分に理解したうえで活用したい。

心電図アプリ/不規則な心拍の通知機能の使い方

心電図アプリの使い方を紹介する。まずApple Watchで心電図アプリを起動する。続いて本体側面のDigital Crownに軽く指を添えた状態で静かに腕を動かさず30秒間計測する。

結果は心拍リズムが正常であることを示す「洞調律」のほかに「心房細動」と「高心拍数または低心拍数」だった場合にこれをApple Watchの画面に表示して、同時にiOSのヘルスケアアプリにPDFファイルとして出力もできるよう記録を残す。

不規則な心拍の通知は、iOSのヘルスケアアプリに並ぶメニューにアクセスして「通知をオン」に切り替える。設定はこれだけで、非常にシンプルだ。計測はバックグラウンドで行われ、心房細動の可能性がある不規則な心拍が続けて検知された場合に、Apple Watchに結果を表示。iPhoneにも同時に結果が表示されてデータを記録する。

何事もない健康な状態のときには通知が発生しないため、正しく計測が行われているか心配になるかもしれない。ヘルスケアアプリの機能ページを確認すると通知機能がオンの状態であることや、直近で計測と解析が実行された日時も表示されている。

在宅ワークにも役立つApple Watchの機能に再注目

Apple Watchのように誰もが気軽に身に着けられるスマートウオッチにより、少なくとも心房細動の兆候をユーザー自身で見張れることの安心感はとても大きい。筆者はまだ不規則な心拍の通知機能を使い始めて日が浅いが、これをオンにしてもApple Watchのバッテリーの減りが早くなるようなことはなさそうだ。自分には関係ないと思う方も機能をオンにして一度は使ってみてほしい。

2つの機能が新規に使えるようになったことで、Apple Watchユーザーの健康維持・増進に役立つ機能が再び注目されるだろう。例えば「フィットネス」アプリの「スタンド」計測や歩数計、規則正しい生活リズムのバロメーターにもなる睡眠記録など、Apple Watchが搭載する体と心のメンテナンスに役立つ機能は、在宅ワークが長く続くビジネスパーソンの健康管理・維持にも役立つ便利な機能なので、ぜひ使ってみることをおすすめする。

あくまでもフィットネスとウェルネスのツールに

ただし、不規則な心拍の通知機能をオンにしてApple Watchを身に着けてさえいれば心疾患の兆候がすべて把握できるわけではない。胸の痛みや圧迫感など、体調がすぐれない時にはApple Watchに通知が届いていなくても、自分の判断で適切な時に病院や医師を訪ねるようにしたい。

心電図データはPDFファイルとして出力して、メールやLINEに添付して送ることもできる。かかりつけの医師が心電図のデータを健康相談の材料として受け付けて、親身に話を聞いてくれれば何よりだが、すべての医療機関や医師がオープンに対応してくれるとは限らない。今後はApple Watchの機能を、オンライン診療などにも効果的に役立てられるような医師と患者の関係、仕組みができるのか注目しなければならないだろう。

山本敦
フリーランスライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経て独立。AI・IoTに関わるスマートオーディオ、4KにVODまで幅広いカテゴリーに精通する。堪能な英語と仏語を活かし、国内から海外のイベント取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。

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