台所番長がお薦め 除菌・抗菌に優れたまな板3選
合羽橋の台所番長が料理道具を徹底比較

合羽橋の老舗料理道具店「飯田屋」の6代目、飯田結太氏がイマドキの調理道具を徹底比較。今回は、除菌、抗菌が当たり前になってきたまな板についてご紹介する。(価格はすべて税別)
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こんにちは、飯田結太です。新しい生活様式が浸透してきて、家で過ごす時間が増えた方は多いでしょう。そして、料理をもっと楽しもう、本物を取り入れようと考える方も増えているようです。そんな傾向は料理道具にも反映され、プロ用と家庭用の境目がだんだんなくなってきました。品質が良く、使いやすいのは当たり前。さらにメンテナンスを繰り返すことで長く使えるものが人気です。特に、抗菌、除菌という機能を持つ道具は注目度が高くなっています。それが最も顕著に表れているのが「まな板」です。
昔から使われている抗菌作用がある木製が見直され、定番の木製まな板に最新の技術で抗菌性が加えられたものや、今までなかった素材も登場しています。
今回は、大きな3つの流れをけん引するまな板を紹介します。
煮沸除菌できる高級シリコーン製まな板

まな板の素材としては珍しいシリコーン製の製品が登場しました。シリコーンといえば、一時期電子レンジで簡単に調理できるシリコーン製の鍋がブームになったことがありましたが、今回登場したまな板は、調理道具にはあまり使われたことがなかった高級なプラチナシリコーン製。哺乳びんの口や、医療用の道具に使われている素材で、プラチナを触媒としています。ゴム特有のにおいもほとんどないのが特徴。

驚いたのは除菌の方法です。くるっと丸めて、鍋で煮沸したり、電子レンジでチンしたりすることで、しっかりと除菌(除菌率99.9% 日本ラボテック調べ)ができるのです。
厚みが5ミリなので、丸めるのは簡単。さらに高温で煮沸しても曲げくせがつきにくく、反り返ることもないので長く使えます。

実際に1カ月ほどずっと使用したのですが、シリコーンなのにしっかりしていて厚みもあるので、包丁のあたりが良く、食材を問題なく切ることができます。音を吸収するため、包丁の音も響かず静か。家族が寝静まった夜中に使ったとしても、うるさいといわれることはないでしょう。ゴムなので、食材がすべらず、切りやすいんです。改めて良い商品だと思いました。
木製なのに、半永久的に抗菌性があるまな板


トラモンティーナは、創業110年のブラジルの総合料理道具メーカー。ブラジリアンバーベキューのシュラスコ関連の道具が豊富なことで知られています。強度と耐久性のあるタイガーウッド製のカッティングボードは、トラモンティーナを代表するシュラスコシリーズのひとつ。
一見、普通の木製カッティングボードですが、これは、半永久的な抗菌加工が施されているもの。その技術がすごいんです。
まな板(カッティングボード)は、まず木材を乾燥させなくてはいけません。この段階でまな板の品質が決まります。乾燥が中途半端だと加工途中で割れてしまったり、反り返ってしまうこともあります。とても時間がかかる作業なんです。
シュラスコ カッティングボードは、木材を乾燥させた後に、抗菌剤を塗布してしみ込ませ、それからまた乾燥させるという工程を何度も繰り返して作られています。何度も繰り返されることで、抗菌剤が木材の中まで浸透しているので、表面を削っても抗菌性は持続するということなのです。
1カ月間、わざと洗って少しの間放置したり、湿度の高い環境に置いたりして試したのですが、黒カビなどはつきませんでした。
ローストビーフなど、塊肉の調理におすすめです。そのままプレートとしてテーブルに置いても、木目が美しいのでおしゃれに決まります。
プロが信頼、天然由来の抗菌性を持つイチョウのまな板

日本製のまな板は、天然由来の抗菌性を持つ木材を使用することが多いのですが、その代表的なものがヒノキとイチョウです。どちらも抗菌作用があり、カビが生えにくい特性がありますが、香りがあるヒノキに対して、イチョウはあまり香りがなくて食材にも移りにくいことから人気が高まっています。
イチョウはほどよく軟らかいので、包丁の刃のあたりがやさしい。弾力があり、切り跡がついてしまっても自然と元通りになっていく。適度な油分を含んでいるため、水はけもいいんです。
昔からプロが使っていたもので、決して手ごろな価格ではありませんが、汚れたら削り直しができること、厚みがあるので長く使えることから、愛用している人も多かった。それが、最近、家庭用にと指名買いする人が急増しています。


理由は使い勝手の良さ、長く使えることはもちろんですが、中でもウッドペッカーの「いちょうの木のまな板」は、工芸品のように形が美しいことも人気の理由です。1枚ずつ職人によって仕上げがされているので、手触りもやさしく、包丁が当たる音も「トントン」と軽くて心地いい。
私にとってこの音は、母が作る朝ごはんの音。懐かしくてほんわかする、そんな癒やし効果もあるような気がします。
今注目されている3種類のまな板を見ると、衛生面での安全性をしっかり見極めながらも、生活を楽しみたいと思っている方が本当に増えてきたんだなと感じます。ぜひ、あなたの生活に合った、長く付き合える1枚を選んでください。(談)
(文 広瀬敬代、写真 菊池くらげ)
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