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屋台風中華に人気イタリアン 丸の内テラスで世界周遊

NIKKEI STYLE

年が明けて、2回目となる非常事態宣言が発令された。終息の兆しが見えないコロナとの生活だが、感染対策をとりながらも新しい味がお目見えしている。今回取り上げるのは感染者数が夏場のピーク時から落ち着いた昨年11月5日にオープンした「丸の内テラス」の新しい味。地下鉄の大手町駅直結の、三菱地所みずほフィナンシャルグループ、全国銀行協会による共同建て替えプロジェクトで開業した新施設だ。飲食店は7店入っている。広報担当者によれば、飲食店のテナントは「これまで丸の内エリアの商業施設になかった新業態」を選んだそう。今は、営業時間を短縮するなど自粛につとめているが、コロナ明けの楽しみということで、紹介したい。

まず1店目は1階と2階にまたがる「MARUNOUCHI BASE(マルノウチ・ベース)」。ゆったりしたソファ席とカウンターバーで、ステーキやチーズたっぷりのハンバーガー、オイスタープレートをクラフトビールやワインと提供。いわゆる「カッコいい大人のアメリカンダイナー」だが、2階に上がると広いスペースに卓球台が置かれ、ずらりと並ぶダーツバーやゴージャスなカラオケルームもあり、度肝を抜かれる。ビックエコーを運営する第一興商が作った「丸の内エリア初の大人の遊び場」なのだそうだ。

「レストランやバーで飲食するだけ、またはその後にダーツバーやカラオケで遊ぶ、と様々な使い方ができる新業態です。今は国の要請に従い時短営業中ですが、解除後は丸の内を訪れる多くの大人のお客様に来ていただきたいです」(チーフマネージャーの各和良太さん)

2店目は1階の「ジャンピングパンダ」へ。モダンでクリーンな店内と、あやしげに光るネオンが外からも見えて「なんだか面白そう」とドキドキしてくる。麻布十番の高級四川料理店「飄香(ピャオシャン)」のシェフで中華料理界の重鎮、井桁良樹さんの料理を酒とカジュアルに楽しめる中華バルだ。四川のマーボー豆腐とよだれ鶏が二大看板メニュー。

マーボー豆腐は、一口目はそうでもないが、ビリビリした辛さが後追いで来て、食べているうちに全身から汗が吹き出す。ほんのり甘みも感じる複雑な辛さにまた一口、と止まらない。白酒(パイチュー)に山盛りのトウガラシを漬け込んだ酒で作る「麻辣ハイボール」も、目が白黒する刺激感がやみつきに。アジアの屋台街で楽しく飲んでいるような、不思議な高揚感が湧いてくる。

「マカオやシンガポールなどアジアの都市では流行っているものの、まだ東京には少ない中華バルを丸の内に作りたいとオープンしました。本格中華をつまみに気軽にお酒を楽しめる新業態です」(総責任者の森田法義さん)

隣の「YOTTERIA GAKU(ヨッテリア ガク)」へ。アジアから一転、ヨーロッパに飛んできたようだ。イタリアの中部地方マルケ州で修業を積んだ、オーナーシェフの小林岳さんの料理をイタリア全20州のワインと味わえるトラットリア(イタリア語で大衆食堂)だ。大阪で長らく営業していた人気店だったが、丸の内テラスの開業に合わせ移転。まだオープンから間もないが、大阪時代のファンや「以前大阪で食べて、今回の東京進出を聞いて来た」という客がすでに訪れているという。

小林シェフは豚肉が得意で「自家製ソーセージ」や銘柄豚のロースト、豚肉の希少部位のグリルなどがメニューに並ぶ。ディナーのみ注文できる「イベリコ豚 ホホ肉のラグーソース 自家製タリアテッレ」(1600円、税別)をいただいた。もちもちの自家製パスタに濃厚なラグー(肉を煮込んだソース)がたっぷりからみ、深いおいしさに感激。この日、筆者はすでに結構食べており、まだ続けて食べなければいけないのにフォークを運ぶ手が止まらない。イタリアの風景画が飾られた優雅な店内も居心地が良い。これは女性が大好きな店だろう。

「店名のヨッテリアは、トラットリアに『寄ってみて』『酔っ払って』をもじった造語です。格式張ったスタイルでなく『丸の内のイタリア食堂』の感覚で、料理とワインを楽しんでいただけたらうれしいです」(小林さん)

フランス・パリを代表する有名レストランの一つ「タイユヴァン」も、老舗名店のサービスやクオリティーを気軽に楽しめるカジュアルダイニングとしてお目見えしている。ワインとそれに合わせたビストロ・ブラッスリー料理が味わえる「ESPRIT de TAILLEVENT(エスプリ・ド・タイユヴァン)」だ。こちらは、当欄で詳説しているので、「老舗の味とワイン手軽に 丸の内テラス・タイユヴァン」をお読みいただきたい。

5店目は、本格的なパエリアやタパス(小皿料理)とワインを提供するスペイン料理店「バル ポルティージョ デ エスパーニャ」だ。「スペインバルは都内にたくさんありますが、タパス発祥の地で、スペイン最古のバルがあるアンダルシア地方に行って研究し、現地のバルを再現したのが当店です」(マネージャーの幸地ディエゴ エドアルドさん)

店名の「ポルティージョ」とはスペイン語で扉や入り口の意味。ドアを開ければそこはスペイン、という店づくりを目指したそうだが、土色の壁に高い天井、壁の一面にワインボトルが飾られた様は圧巻で、スペイン現地で飲むとこんな気持ちになるのかな、とイメージが浮かぶ。雰囲気だけでなく味も自慢で、代官山や銀座、中目黒にある系列店ではミシュランガイドのビブグルマンを5年連続で獲得している店もあり、同じメニューをここでも食べられる。

パエリアが特に充実しており、イカ墨を使ったものや魚介と鶏肉のミックスパエリアなど、常時20種類以上を取りそろえる。特に人気だという『イベリコ豚希少部位"セクレト"ときのこのパエリア』(2600円、税別)を赤ワインといただいた。セクレトとはその店の秘密(肉の部位など)を意味するそうで、ほんのりピンクに焼き上げられたイベリコ豚とキノコはうま味たっぷり。コメはだしが染み込んでいるが、粒が立って歯応えを残し、コクのある赤ワインにぴったりだ。

「外から見て『うわ、なんかスペインだ』と気づかれるお客さまが多く、オープン当初は予想以上の方に来ていただきました。終息後にぜひ、丸の内のスペインバルを味わいに来てください」(幸地さん)。なお、同店は現在、緊急事態宣言を受けて休業しており、2月8日から再開を予定している。

最後はぐんと上層階へ。9階と最上階の10階に入るモダンフレンチ店「THE UPPER(アッパー)」だ。レストランの位置もアッパーだが、シドニーの世界的デザイン事務所が手がけたというオシャレな内観もアッパー。大きく取った窓や最上階のテラス席からは周囲のオフィスビルがよく見えて開放感たっぷりだ。

『ミシュランガイド大阪2021』で二つ星を獲得、国際的な賞も受賞しているスターシェフの高田裕介さんをパートナーシェフに迎え、同店の徳島亨シェフが作る美しく独創的なフレンチが売りだ。

シグニチャーメニューの『ティアン・ド・クルジェット』(1650円、税込み)を食べてみた。鮮やかな緑と黄色がパズルのように組み合わされ、一見お菓子のようだが、野菜の前菜(ズッキーニの重ね焼き)だ。フランス南東部のプロヴァンス地方の郷土料理にヒントを得たという。

モダンな空間で食べるスタイリッシュな料理。思わず「東京にいるのを忘れますね」とつぶやくと、「まさに『世界を旅している気分になるレストラン』が同店のコンセプトです。海外旅行が難しい今、ぜひ当店でリフレッシュしていただければ。日本の女性客や近隣のビジネスマンが来店されていますが、近い将来、海外の観光客の方にも『丸の内で感じる新しい東京』を体験していただきたいです」(PRマネージャーの飯島大輔さん)。こちらも現在、緊急事態宣言を受けて休業中。再開は2月9日を予定している。

以上、丸の内テラスの飲食店を紹介した。お世辞抜きにどの店も味わい深くて新しい。ワクワクする場所で食べたり飲んだりすると、大きな活力が湧いてくるのだと実感した日でもあった。こんなに面白い場所が閑散としているのはとても残念。フードライターとしては1日も早くコロナ禍が終息することを願ってならない。

(フードライター 浅野陽子)

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