教育資金が不足! 「国の教育ローン」を利用するには

年明けの緊急事態宣言の発令で、受験の実施が心配されましたが、大学入学共通テストは予定通り1月16日、17日で実施されました。教育費がまとまってかかる時期であることを、再認識した親御さんもいらっしゃったのではないでしょうか。
今回の入学試験は、緊急事態宣言の影響もさることながら、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、収入に大きな打撃を受けた人が多かったことも心配されます。収入不足から貯蓄を切り崩す生活となり、教育資金が不足してしまったというご家庭もあるでしょう。
大学では合格発表の後、1~2週間で入学金や前期分の授業料を振り込み、入学手続きをしなくてはなりません。奨学金の申し込みをしたとしても、受け取れるのは早くても入学月からですから、入学手続きには間に合いません。
この資金不足の助けになるのは、「教育ローン」です。特に「国の教育ローン」は金利が低く、民間の金融機関の教育ローンを利用するよりも有利な面があります。
「国の教育ローン」とは?
「国の教育ローン」は政府系金融機関である日本政策金融公庫が取り扱う、家庭の教育に関する経済的負担の軽減と教育機会の均等を目的とした、公的な融資制度です。中学校卒業以上のお子さんのために利用でき、借りたお金は大学などの入学金だけではなく、学用品の準備や定期券代など学習に必要なことに使えます。金利は1.68%の固定金利で、返済期間は最長15年。お子さんが在学中は、利息のみ返済していくこともできます。比較的負担が少なく融資が受けられますが、利用するには親の年収制限があります。
このローンを利用できる世帯年収(夫と妻の年収の合算)の上限は、利用するお子さん1人の場合で790万円、2人の場合は890万円。お子さんの数が増えると年収の上限は上がります。また、自宅外通学となる、親が単身赴任をしている、介護認定を受けている人の費用負担をしている、新型コロナの影響を受け収入が下がっているなどの条件をどれか一つ満たしていれば、世帯年収の制限は990万円まで緩和されます。また、新型コロナの影響による減収で利用する場合は、返済期間を18年まで延長することが可能です。
借入可能額は、お子さん1人につき350万円まで。2人なら700万円です。この借入可能額も利用するお子さんの人数によって増えていきます。留学などの一定条件があれば1人に付き450万円まで借入可能額が増えます。
さらに、国のローンですから民間の金融機関のローンが利用しにくい一人親世帯、交通遺児家庭、年収200万円以下の低収入の方も利用できます。世帯の条件により異なりますが、金利が1.28%と低くなる、返済期間が18年に延長される、保証料が減額されるなどの優遇措置が適応されます。
合格発表後に申し込んでも間に合うか
国の教育ローンは、郵送で申し込むことができるほか、今はインターネットで24時間、申し込みすることもできます。準備しておく書類は、確定申告書や源泉徴収票などの親の所得のわかるもの、お子さんが入学する学校の合格証書、授業料納付通知書、住民票、預金通帳などです。世帯年収の条件緩和などを希望する場合は、追加の書類が必要になることもあります。
融資までの期間は、申し込みを受けて審査までに10日、利用者の金融機関へ入金するまで10日の合計20日ほどの期間がかかります。状況によりそれ以上の日数がかかるかもしれません。教育資金不足に気が付いたら、受験の前でも申し込みができますから、早めに手続きをしましょう。
もし、申し込み後に状況が変わり、借り入れは必要なくなった場合はキャンセルも可能です。
借りすぎには注意、返済を考えた利用を
教育費を準備するにはよい制度であると捉えた人もいるかもしれませんが、教育ローンはあくまで低利で借りる「借金」です。借入可能額が大きいからと言って上限いっぱい借りるのではなく、必要なだけ借りるようにしましょう。
ご家庭の状況により、事前に日本学生支援機構の奨学金を申し込んでいる方も多いことでしょう。同じく国の機関から借り入れをすることになるのですが、国の教育ローンは奨学金と併用が可能です。唯一「入学時特別増額貸与奨学金」だけは併用できないのですが、毎月の奨学金は併用できるので、国の教育ローンと奨学金をどのように利用するかは、よくお子さんと話し合って決めましょう。
借り入れ可能な金額が大きくなりますので、借り過ぎてしまうと当然ながら返済が困難になります。必要最低限と思われる金額を借り、あとはお子さんが奨学金を受ける、アルバイトなど収入を得て賄うなどが可能かを検討していくと、親、お子さん双方の返済負担が大きくなりすぎずにすみます。教育ローンは親の債務で、奨学金は子どもの債務です。十数年返済していくために、借りる前に、毎月いくら返していくことになるのか、それは可能なのかをシミュレーションで確認しておきましょう。国の教育ローン、奨学金、両方のサイトでシミュレーションができます。
民間の金融機関の教育ローンは一般的に国の教育ローンよりも金利が高いもの。審査、融資までの期間が短いとうたっているものもありますので、借り入れを急いでいる人はそちらを利用しがちかもしれませんが、金利が高いと返済負担が大きくなります。日ごろからお付き合いのある金融機関で優遇を受けて教育ローンを利用するなどならよいかもしれませんが、将来的に負担が大きくなると思われるローンの利用は避けたいもの。
目先の問題を解決するために飛びつくよりも、教育ローンの内容を調べ、返済のことまで考えて計画的に利用していただきたいと思います。

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