元モー娘。工藤遥 遊び心感じたツギハギのぬいぐるみ

2017年にモーニング娘。を卒業し、女優として活躍する21歳の工藤遥さん。「遊び心」を大切にする彼女のハートを射抜いたのは、ベトナムで出合ったツギハギのぬいぐるみだった。
遊び心を忘れさせない、ベトナムのぬいぐるみ
「私はぬいぐるみが好きで、見かけると、ついつい買ってしまうんです。この子に出合ったのは、写真集の撮影でベトナムに行った、19年の12月。路地を入ったところにポツンとあった小さなおみやげ屋さんに、乱雑に雑貨が入れられたカゴがあって。その深いところにほこりをかぶって埋もれていたんですよ。見た瞬間、『めちゃくちゃカワイイ!』と思うと同時に、『この子、いつからここにいるんだろう?』と同情して。『かわいそうに。連れて帰ってあげるよ』という気持ちになりました。
値段は、いくらだったかな。200~300円だったと思います。カメラマンさんやメークさんには『本当に買うの?』って顔をされましたけど、それからずっと一緒。見るたびに、『ゆるいな~、和むな~』と思いますね。我が家のゆるキャラと化しています」

頭には角らしきものがあり、背中にはトゲトゲがある。竜のようにも見えるが、口元や腹部はまるでハンカチの柄のよう。「この子」は、いったい何者なのか。
「たぶんドラゴンか何か、そういうものなんでしょうけど。ベトナムはバイクで移動する人が多いから、排ガスがすごくて、みんな手作りの布製マスクをしてるんです。これはたぶん、そのマスクの余りの布で作られたものなんじゃないかなと。だからちょっとブサイクだけど、遊び心を感じるところがたまらなく好きですね。
二十歳を過ぎてから、『遊び心を忘れちゃいけない』という思いが強くなってきたんですよ。ちょっとしたことにワクワクしたり、ささいなことを面白がられたりするだけで、心が豊かになる。それに遊び心を持っている人のほうが近寄りたくなるし、一緒にいて楽しいじゃないですか。もし『くだらない』と言われたとしても、くだらなさの先にある面白さを熱弁できたら、『よく分からないけど、面白いな、この人』と思ってもらえるはず。
そういう思いもあってぬいぐるみを買ってしまうところがありますし、カードゲームやカプセルトイにも、ためらうことなくお金を使います。最近はおにぎりの形をしていて、中に梅干しやイクラなどの具材の指輪が入っている『おにぎりん具』というカプセルトイにはまっていて、集めては部屋中に並べてますね。もちろん、着けて出掛けることもあります。いじられに行こうと思って。くだらないことを、いつまでも楽しめる大人でありたいです」


女性の強さを描いた『大コメ騒動』
公開中の出演映画は、『超高速!参勤交代』の本木克英監督による『大コメ騒動』。1918年(大正7年)に富山県の貧しい漁村で女性たちが起こした「米騒動」を描いた作品だ。工藤さんは、村の子どもたちに読み書きを教え、おかか(女房)たちに寄り添う私塾の先生・池田雪を演じている。
「雪さんは薬問屋の娘として育った、村で数少ない裕福な家の女性。おかかたちより明るめの着物を着たり、所作の勉強をしたりして、品の良さを心掛けながら演じました。
時代劇は初めてだったので、カツラや着物、いろんなことが新鮮でしたね。着物は最初、どのくらい足を開いて歩いていいのかも分からなかったんです。でも何度も着るうちに慣れて、最後は何の苦もなく着られるように。短期間でいかになじませられるかが、時代劇では大事なんだなと思いました」

日本人にとって、米は命の源。その価格が高騰して生活に窮したおかかたちは、団結して声を上げ、ある行動を起こす。現代の「#MeToo」などにも通じる、女性による日本初の市民運動とも言われるが、描かれる女性たちについて、どう感じたのか。
「最近は女性も男性と同じように仕事をしたり、意見を言ったりしますけど、それは今に始まったことじゃなく、実はずっと前からあったことなんだなと改めて感じました。私は女性の一番の強さは、我慢強さだと思っていて。母に聞くと、家族を持って働いている人と、自身のために働いている人では、職場での感覚が違うんですって。誰かのために働いて、我慢できる人はやっぱり強い。この映画は、そういう女性が大勢出てきて、女性のパワーを感じられる作品になっていると思います。
撮影現場も、主演の井上真央さんを筆頭に、現場を引っ張っていく力がある方々がそろっていて、一体感があったんです。私も先輩たちのように、『この人についていけば大丈夫』と思われる強い女性でありたいなと思いました」


テイラーのギターで猛練習
11歳のときに史上最年少でモーニング娘。のメンバーとなり、センターとしても活躍。女優転向後は舞台や映画で主演、出演を重ねる。プライベートで力を入れるのは、ギター。テイラー・スウィフトや布袋寅泰らが愛用する「テイラーギターズ」のアコースティックギターを昨年購入した。
「所属事務所に楽器に詳しい方がたくさんいらっしゃるので、何を買ったらいいか相談したんです。そうしたら、『音も形も、自分が愛着を持てるものがいい。これだ! と思ったものが一番だ』と。それでいろいろ試して、買ったのがテイラーのギターでした」

「お気に入りは、木目がきれいで、色も明るめのところ。それにちょっと小ぶりなので、女性が持つのにちょうどいいんですよ。あと、キラッとした感じの、軽やかな音が出るところも好きです。触れるようになって分かったのは、ギターは1本1本雰囲気も違うし、音も全然違うということ。作り手の思いみたいなものがダイレクトに感じられる楽器だなあと思いますね」
今、欲しいのは、ギターのトップブランドの1つ、「マーティン」のアコギ。
「この前、マーティンのギターを試しに持たせてもらったら、『うわっ! これはいい!』と……思ったんですけど、お値段が全然、かわいくないんですよね。自分がちゃんと弾けるようになってから手に入れようと思って、練習をがんばっている感じです。
マーティンギターの値段ですか? どれくらいだったかなあ……。今持っているギターが郊外の1Kぐらいの家賃だとしたら、港区の広い部屋の家賃くらいかな(笑)。それを払えるように、がんばります!」

1999年生まれ、埼玉県出身。2011年にモーニング娘。第10期メンバーのオーディションに合格して加入。17年卒業。以降、女優として活動し、18年からは『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』にルパンイエロー/早見初美花役で出演。19年に舞台『魔法使いの嫁』で主演を務めた。20年は『のぼる小寺さん』で映画初主演したほか、映画『461個のおべんとう』にも出演。2月5日に出演映画『樹海村』の公開が控える。
『大コメ騒動』

大正7年。富山の貧しい漁村で暮らす松浦いとは、出稼ぎに出た夫の代わりに家族を養うべく、米俵を担いで船に運び入れる重労働を続けていた。しかし米の値段が上昇し、いとら村のおかか(女房)たちは困窮。家族を守るため、一致団結して行動を起こす……。監督・本木克英 脚本・谷本佳織 出演・井上真央、三浦貴大、夏木マリ、立川志の輔、吹越満、鈴木砂羽、木下ほうか、西村まさ彦、中尾暢樹、工藤遥、石橋蓮司、室井滋。全国公開中
(文 泊貴洋、写真 藤本和史)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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