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損害保険会社がDXで実現できる社会貢献とは?

読者の提案 原典之・三井住友海上火災保険社長編

原社長の提示した「損害保険会社がDXで実現できる社会貢献とは?」という課題に対し、多数の投稿をいただきました。日経COMEMO(https://comemo.nikkei.com/n/nece9ec5a18ff)でも各業界のキーオピニオンリーダーたちが今回の課題について議論しています。

紙面掲載分を含めて、当コーナーでその一部を紹介します。

■損保がいらない世界

中山 哲也(会社員 52歳) 「損害保険がいらない世界を実現する」ことが損害保険会社のニュービジネスになると思う。例えば、過去にある交差点で発生した多くの事故の事例に、その交差点に進入するあらゆる情報(自動車・自転車・ヒト・犬や猫・信号・天候・気温など)が合わされば、その交差点で今発生しようとする事故を予見することができる。それを予見した瞬間に、それらの衝突を回避するための様々なデジタル技術が予見内容とシンクロすれば、事故の発生を未然に防げるだろう。このように、損保がこれまでに蓄積してきた事故データとIoTで得た情報をDXで同期させれば、「損害保険がいらない世界」を実現することは難しくないはずだ。その時の損保の役割使命は「事故のafterからbeforeへ」、つまり発生した事故の解決から「事故そのものを防止する保険とは無縁のサービスを提供すること」に変化しているに違いない。

■健康を守る食アプリ

牧野 鼓(明治学院大学国際学部3年、21歳) 最近、親戚の1人が病気によってタバコや食事を制限しなければならなくなった。私は1日の食事の写真を撮り、送信することでAIが分析し助言してくれるアプリを提案する。アプリ登録時に身長や体重、性別、病歴などを集計した個人の健康データを基に、危険性が高い病気を予測し、その病気を防ぐための食生活をアドバイスする。食事の時間もデータに残せば、太りやすい時間帯を指摘してダイエット効果を得られるサービスにもなる。24時間応答可能なチャットを通して相談ができれば、需要は高まるだろう。指摘に従った者は保険料が安く済み、従わなかった者には病気になった場合の保険料が高くなるリスクを伴わせる。このように食事の写真などのデータを送信するだけで、その人の身体にあった食事のアドバイスをするアプリの導入は、人々の健康を守る大きな役割を持つだろう。

■通学路の最適化

曽田 昌弘(会社員、41歳) 全国には無数の道路があり、そこを無数の自動車が走っている。一方、全国に無数の学校があり、多くの児童や生徒が通学している。街を見回してみると、歩道が整備されていない危ない道もたくさんある。子供の悲惨な事故は何としても避けたい。理想は歩道の整備だが、自治体の費用負担以前に、幅員不足から物理的に歩道や路側帯を設けられない道路はたくさんある。交通事故および保険金のデータから、自動車・自転車・歩行者が交通の際に接触する可能性がある場所をあぶり出し、歩道や信号の設置といったハードの増強によらない通学路の最適化はできないものだろうか。通学路の最適化は、交差点での保護者の旗振り当番の軽減にもつながる。日本では労働力としての人手不足が深刻だが、旗振り当番だって人手である。また、通学路の最適化は、自動車を運転する側にとっても、効率的な交通につながるだろう。

【以上が紙面掲載のアイデア】

■遺伝子情報を活用した医療保険を

竹川 優衣(明治学院大学国際学部3年、20歳) 保険加入者が遺伝子情報を解析し、かかりやすい病気のリスクを調べることができる遺伝子検査をセットにした医療保険を考えた。デジタル技術の進展によって、今では遺伝子検査事業を医療機関だけでなく企業も取り扱っている。遺伝子検査を行う企業と損害保険会社が提携して個人個人のデータを共有することで、顧客の遺伝子データをもとにした医療保険や生命保険のプランを組める。遺伝子情報から発症しやすい病気や体質に合わせた保険プランを提案すれば、顧客に安心を提供できるのではないか。私の家系は骨粗しょう症になりやすい傾向にあるため、私自身もこのような保険があれば加入したいと思う。平均寿命が延びている中で自分の将来の生活に対する安心がより一層求められる。自分のリスクに合った保険に加入することは、将来の安心を手に入れることにつながる。これを技術とデータで支えられたら、保険はもっと顧客の人生に寄り添えるだろう。

■「保険×ゲーム」で未来を変える

山口 柚奈(大阪大学法学部1年、19歳) 私は損害保険を取り入れたロールプレイングゲーム(RPG)を提案する。人は車の購入や結婚など人生の転機に保険の加入を考える。しかし、私たち若者は「保険とは何か」を知る機会が少ないため、保険は遠い存在である。そこで身近な存在であるゲームとかけ合わせたらどうだろうか。例えば、体験者はゲーム内で自分の将来の夢や理想の暮らしをデザインし、実現させる。その中で人工知能(AI)が蓄積されたデータをもとにリスクを予測。そしてそのリスクを乗り越えるアイテムとして、一人一人に合った保険を教えてくれる。若い時にライフデザインを楽しく考えながら同時に保険に入る体験をする。こうして保険のメリットを主体的に知ることは、人生設計はもちろん、保険の選択・加入への意識を変える。そして加入層が広がり、保険がさらに普及することで人々の生活はより豊かなものとなる。これも一つの社会貢献ではないだろうか。

■世界全てに安心を

小林 亮太(駒沢大学グローバル・メディア・スタディーズ学部4年、22歳) 損害保険市場は日本だけではなく、世界中にあるが、まだ損害保険サービスが発展していない国もある。そこでデジタルトランスフォーメーション(DX)を使って日本の損害保険サービスを広め、世界の損害保険市場の発展を後押しすることはできないだろうか。現在、人工知能(AI)技術を活用し、最適な商品の提案を日本の人々に対して行っているように、世界各国の現地の事業家などに損害保険のノウハウなどを伝えるのだ。高速通信規格「5G」やAIなどのデジタル技術を活用すれば、渡航・滞在や外国語の習得、通訳者の派遣などの費用や時間を抑えて伝えられる。損害保険サービスが世界各国で発展すれば、損害保険市場の活性化だけではなく、今まで現地の保険面の心配により渡航を控えていた日本の事業家などに対しても海外進出の後押しができ、日本の技術力を世界に広める機会が増える。損害保険サービスが世界の安全安心だけではなく、他分野でのさらなる技術の発展を後押しする未来は近いかもしれない。

■位置情報を活用した災害保険

福井 悠斗(大阪大学人間科学部1年、19歳) 災害時、私たちはおそらくスマートフォンなど自分のネット機器を持って避難する。そこで、保険加入者の機器の位置情報サービスと保険会社のコンピュータを連携し、地図上で被災していると判断された保険加入者全員に、災害発生後すぐに一定の生活費分を自動で振込むサービスがあれば良い。振り込みはネット機器への電子マネーの形で行われるが、現金化も可能だ。保険会社は被害状況が確定してから、従来通りの保険金先払い分を除き、改めて振り込む。このサービスによって、被災者はすぐに遠方に避難しやすくなるし、そこでの生活を営みやすくなるだろう。災害の最前線、炊き出しなどの支援の場でも、電子マネーを持っている人からは少額の料金を払ってもらうことも可能になり、ボランティアの手助けになることも望める。

■DXによるサイバー保険の充実を

金沢 尚輝(明治学院大学国際学部3年、21歳) DXの活用を通じた、キャッシュレス決済を提供する企業とその利用者を守るサイバー保険が必要である。ポイント還元や、新型コロナウイルスの影響で現金を使わずに手短に支払いを済ます事ができるキャッシュレス決済の利用機会が多くなった。しかし、便利になる一方で、見えないリスクが生まれている。顧客情報の流出や第三者による不正利用が相次いで起きている。したがって、キャッシュレス決済を提供する企業とその利用者を守る保険が必要であると考える。AIのディープラーニング機能を使い、過去に発生したトラブルを学習させて再発を防止する。そのプラットフォームを損保会社が作り、キャッシュレスを提供する企業に「保険+システム」という形で提供する。保険だけではなく、リスクからも守ってくれるシステムを備えた形での販売方法である。AIは継続的に学習を続けるので、企業と利用者の双方に安心と安全を提供することができると考える。

■親として損害保険会社に期待

今 治美(会社員、45歳) デジタルトランスフォーメーション(DX)が最適な保険を選び、顧客にぴったりの設備やメンテナンスを提案して、ますます効率化するだろう。「人工知能(AI)がもたらす最適解」が当たり前になる将来、子供たちはどのように人生の困難に立ち向かうのだろうか。どれだけ技術が進んでも、人生のトラブルをゼロにすることはできない。目の前に課題が現れた時、「AIがないと何もできない」と立ちすくむようでは困る。様々なリスクやトラブルの原因と解決策などに関する膨大なデータがあり、「DXによって効率化された技術」と「リスクマネジメントに関する知恵」を有している損害保険会社にこそ、「課題を解決するための思考と行動」を育てる教育事業に取り組んでほしい。次代を担う子供たちに求められる「プログラミング的思考」は、PCの中で作られるのではなく、根拠のある知見によって育まれるのだと思う。

■交渉時間を短縮

高橋 雄一(会社員、51歳) 自動車事故を起こして発生する煩わしさとして、相手との過失割合の交渉がある。その際に保険会社や弁護士も含めて多くの費用と時間を要し、自分の時間も割かれることになる。しかし、事実は1つであり、事実が正しく認識されていれば判例等に基づきおおむねすぐ結論がでるだろう。国がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推奨しており、情報の交換を積極的にすべきである。全国に張り巡らした交通カメラ等の映像に保険会社がアクセスし、個人情報に十分配慮したうえで解決へのデータを共有してはどうか。情報さえあれば、人工知能(AI)等を駆使して状況分析が可能だ。電動化や自動運転など「CASE」や次世代交通サービスMaaS(マース)が進む関連業界と連携すれば、一層精度の高い情報が共有できて交渉時間の短縮につながるだろう。DXは業界単独で進めると困難性が高いが、横の連携を深めることで、大きく社会に貢献できると感じる。

■空飛ぶ人型ロボット

牛込 耕二(会社員、56歳) IoT技術を活用して、空飛ぶ人型ロボット(ロボ君)を開発することにより、事故時でも安心な社会を構築してはどうだろうか。障害物を検知する捜索用ドローンのように、人里離れた森の中の1軒家でも飛んで行くこともできる。ロボ君の事故時における対応はこうだ。火災や水災等が起きると光学衛星が異変を感知し、画像をロボ君に送り事故を知らせる。ロボ君はその画像を人工知能(AI)により解析し、事故現場に飛んで行く。現場に到着したら、「心配ありませんよ」とお客さまに言葉をかけて不安を取り除く。ロボ君は、衛星の情報に現場で得た情報を加えて、正確な損傷状況や損害額を算出する。同時に、修理見積書を作成し、3D映像により修理工程をお客さまに説明する。事故発生から保険金支払いに至る全行程をロボ君が完結するので、迅速な事故対応ができるのだ。

■追跡アプリの開発を

猪狩 尚斗(産業能率大学経営学部2年、20歳)認知症の高齢者や病気を抱える患者を追跡するアプリの開発をして欲しい。認知症や病気の患者を見つけて通報する際に住所を聞き出す手間を省くためだ。近年、高齢者の認知症患者は、約460万人と高齢者人口の15%を占める。そして緊急搬送件数は約660万件にのぼる。認知症の高齢者は家族に報告する際、現在地を報告しなければ保護してもらうことができない。病気で倒れた場合は会話する気力すらない可能性がある。私は祖父が緊急搬送された経験がある。当時は、祖母が買い物で留守だったので祖父が自分で救急医療機関に連絡しなければならなかった。祖父は連絡したものの、住所などを伝える気力がなかった。この時は運よく自宅の電話を使っていたので発信源から住所が特定されて救急搬送された。この経験からアプリを起動するだけで救急機関に連絡がいき現在地が特定されるアプリの実現に期待したい。

■お任せ損害保険

鬼頭 宗平(金沢大学経済学部4年、22歳) AIを使った保険商品の自動組み換え機能を提案したい。損害保険は若者や高齢者からすると、数が多くてどれに加入すべきか分かりづらいという問題がある。そこで一回の手続きで全ての補償が1つのパックになった保険商品を購入し、自動車保険や火災保険の割合をAIが自動調整してくれるものだ。年齢・性別・災害リスク・自動車の有無や運転頻度など、あらゆる個人データを基に、AIがその個人に合わせた保険のポートフォリオを一生涯のものに仕立て上げてくれる。例えば地震の多い地域に住み、車は所有しているもののあまり運転せず、持病がないAさんが居たとする。そのポートフォリオの中身は地震保険の割合が高くなり、自動車保険と医療保険は掛け金・補償金共に少ない状態になる。年齢や生活スタイルの変化とともにその割合が変わっていくという仕組みだ。国民一人一人が安心し満足できる仕組みにある思う。

■リスクを知らせる

野口 裕太(教諭、36歳) 最近、ホテル予約のために、ホテルのウェブサイトにアクセスしたところ、日によって細かく値段が設定されていた。ダイナミックプライシングが身近になってきたと実感した。損害保険の世界でも、顧客のリスクに応じた細かな値段設定がなされることはできないのだろうか。大まかなくくりでカテゴリー化され、個々の細かな状況を考慮しない損害保険では、保険者、保険会社双方にとって無駄が多くなるのではないか。損害保険会社は会社の性質上、膨大なデータを保有している。そのビッグデータをAIなどの助けを借りながら、ホテルの金額のような、「個に応じた値付け」に生かされればいい。損害保険会社はいずれ「保険金を支払う会社」から「リスクを予想して、その確率を消費者に注意喚起する会社」へと変貌するかもしれない。事故や災害などはないに越したことはないが、予防できればそもそも損害は極小化される。

■DXで製造業を支える

増野 秀夫(自営業、64歳) コロナ禍はすぐには終わらない。大規模な災害も毎年やってくる。そして一部の地域の機能が停止すると、製品供給自体が世界的に止まる。製造拠点を分散させればリスク回避が可能だが、その結果オーバーヘッド(間接費)が増し、製品価格が高くなる。だが交通システムの無人化が進み、物流がより低コストになり、大規模な拠点の多様化が実現すれば、リーズナブルなコストが実現できる。それを可能にするのは損害保険会社が持っているデジタル化されたリスクデータである。各損害保険会社が協働し、製造業向けに次世代通信規格の「5G」をベースに、各社が保有するデータを利活用するDXシステムを構築すると、あらゆるモノがリスク回避された状況でネットにつながる。システム稼働率の向上やメンテナンスコストの抑制もできる。またそれらの機器を無線接続することで、通信機能を利用しての遠隔操作も可能になる。コロナ禍にあっても新型ウイルスと共存できる。

■「予言」への対価に

小林 雅彦(会社員、41歳) 「リステック」によって事故発生を未然に防げれば、保険会社、保険契約者、道路利用者など、幅広い人々が恩恵を受け、大きな社会貢献となるだろう。例えば、ドライブレコーダーの映像と全地球測位システム(GPS)のデータに加え、高速道路に多数ある監視カメラの映像、自動料金収受システム(ETC)の情報、スマホの位置情報などを組み合わせれば、事故が発生しやすい場所、時刻、天候、混雑状況などの挙動の変化等から、あと数秒後に迫った事故の危険性を割り出して警戒アラートを出せるのではないか。それに従って速度を落とした結果、事故を未然に防ぐ「予言への対価」は「事故後の保険金」よりも価値が高く、自動運転の時代には求められる技術だ。一人ひとりにカスタマイズした警戒アラートをスマホに届ける技術を磨くことで、津波や水害の避難の際に、TV・ラジオや自治体からの情報よりも避難の実効性を高められると考える。

■減災DX

平林 思問(会社員、40歳) 損害保険というと災害や事故が起こった後の対応が主だ。今後は「減災」に損害保険がDXで貢献できるのではないか。自然災害では被保険者が自宅の場所はもちろん周辺の地域の地形など詳細を送る。損保側では今まで支払いがあった実績と照らし、リスク診断から、どのような天候の状況で起こりやすいかなど減災に向けたアドバイスを行う。また実際に災害が起こりやすい状況になった場合はリスクの度合いに応じて携帯アプリなどで本人にアラートを鳴らす。事故では被保険者は自身の運転をドライブレコーダーで録画したものを送る。会社側は今まであった事故のビッグデータと照らしあわせて、運転のスピードや判断タイミングの状況等から運転の診断を定期的に行う。このように、損害保険会社はさまざまな実績データと定期的に照らし合わせをすることで、災害のかかりつけ医のような役割となり、減災が可能になると考えられる。

■災害リスク抑えるアクションプラン

大住 智範(会社員、49歳) 近年の気候変動は、頻発する自然災害という形で我々の生活に甚大な影響を及ぼしている。損害保険はその際の経済的な損失を補てんし、迅速な復旧に向けた支援を行う重要な役割を担っている。デジタルトランスフォーメーション(DX)により、損害保険会社がこのような気候変動リスクをあらかじめ分析するだけでなく、リスクを最小限に抑えるアクションプランを提案すればさらなる付加価値を生むと考える。例えば、地表面や海水の温度、炭酸ガス濃度、偏西風の挙動といったマクロ的なデータ等を人工衛星からデータを入手する。さらに、各地域において作付けした穀物の発育状況といったミクロ的なデータを入手し、双方のデータを人工知能(AI)で解析する。損害保険会社は解析結果をもとに、災害リスクの高い地域の農業経営者に収穫時期までのスケジュールの見直しを提案することによって、リスクを最小限に抑えた精度の高いアクションプランを示すことができる。

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