スマートスピーカー アップルとアマゾンどちらを選ぶ

2020年秋に発売したアップルの「HomePod mini」とアマゾンの「Amazon Echo」はどちらも1万円強で買える注目のスマートスピーカー。球体のデザインがよく似ているが、機能の違いや、どんなユーザー向きの製品なのか、比較レビューする。
机に置いても仕事の邪魔にならないサイズ



機能と価格の面でアップルのHomePod miniと肩を並べる製品はAmazon Echoだが、省スペースに設置できる点ではHomePod miniが勝る。ところがアマゾンにはAmazon Echoと同時に発売された「Amazon Echo Dot」と本機にデジタル表示の時計を付けた「Amazon Echo Dot with clock」というコンパクトな新製品もある。サイズを比べるとこちらの製品がよりHomePod miniに近い。HomePod miniは高さ84.3ミリメートル、幅97.7ミリメートル。これに対してAmazon Echo Dotの2機種は高さ89ミリメートル、幅が100ミリメートルだ。Amazon Echo Dotは5980円、Amazon Echo Dot with clockは6980円。HomePod miniは1万1880円だから、値段の安さを優先するならAmazon Echo Dotの2機種が有力な選択肢になる。
音楽配信サービスで選ぶならアマゾン
HomePod miniは初期設定時にiPhoneが必要だが、Amazon EchoシリーズはiPhone/AndroidスマホのほかにノートPCでも設定ができる。どちらの製品もWi-Fiによる無線接続になり、有線ではネットワークにつなげないので注意したい。初期設定を済ませたら音楽を聴いてみよう。HomePod miniはAIアシスタントのSiri、Amazon Echoは同じくAlexaに話しかけて聴きたい楽曲の検索・再生を行う。

HomePod miniは音声操作に対応する音楽配信サービスが今のところApple Musicに限られている。ただ、Apple Musicにユーザー登録がない人も、AirPlay 2というアップル独自のWi-Fiを使った無線伝送技術を使えばiPhoneに保存した音楽をHomePod miniに飛ばして聴ける。Amazon MusicやSpotifyなど、Apple Music以外の音楽配信サービスの多くは、iPhone/iPadやMacからAirPlay 2を使ってHomePod miniにワイヤレスで送り出して楽しむことになる。
Amazon Echoシリーズの場合はAmazon Musicだけでなく、Spotify、Apple Music、AWAなどの音楽配信サービスが提供する楽曲を、Alexaによる音声操作で検索・再生できる。アップルのスマートスピーカーも近く他社が提供する音楽配信サービスの音声操作に対応するようだが、現時点でApple Music以外のサービスを利用しているユーザーにとって、より直感的に使いやすいスマートスピーカーはAmazon Echoシリーズのほうだろう。

バランスの良い音づくりのアップル、パワフルなアマゾン
サウンドを比べてみよう。アップルのHomePod miniは球体キャビネットの内部に下向きに配置したスピーカーが360度方向へ音を広げて豊かな音場をつくり出す。スピーカーを置いた部屋のどこで聴いても均一に、クリアでバランスの良いサウンドが楽しめる。特にクリアなボーカルときらびやかなピアノ・弦楽器のハイトーンが特徴だ。
対するAmazon Echoシリーズは小柄ながらパワフルな低音再生にたけている。上位のAmazon Echoは単体でステレオ再生が楽しめるスピーカーなので、音の分離が良く、広々とした音場を再現する。アップテンポなロックやジャズの楽曲では、ステージの熱量が伝わってくるような生き生きとしたサウンドを聴かせてくれる。半面、音量を少し下げても、存在感のある低音が響いてしまうため、朝晩の静かな時間帯に使うときには注意が必要だ。モバイルのAmazon Alexaアプリに搭載されているイコライザーから、低音のバランスを少し下げ、リスニング環境に合わせた微調整もできる。
スマート家電の音声操作はアマゾンに軍配
どちらの製品にも、Wi-Fiネットワークに接続されている宅内のスマートホーム機器を音声で操作できる機能がある。対応する製品の種類や数は今のところAmazon EchoシリーズのAlexaに軍配が上がる。例えばAmazon純正のスマートプラグ「Amazon Smart Plug」を使うと、接続されている家電機器の電源をAlexaに声で頼んで切り替えられるので便利だ。

HomePod miniはiPhoneにかかってきた音声通話を受けて、内蔵するマイクによるハンズフリー通話もできる。在宅ワークのパートナー的ツールとしても存分に活躍してくれる。一方のAmazon Echoシリーズにも、EchoデバイスやAlexaアプリを使う家族や友人に、Alexaによる音声操作でハンズフリー通話をかけられる機能がある。スマホからAmazon Echoに通話をかけることも可能だ。遠く離れて暮らす家族とのコミュニケーションにも役立つだろう。
仕事の相棒として活躍しそう
従来のAIアシスタントを搭載するスマートスピーカーはサイズも大きかったので、リビングルームのテレビ横が定位置になることが多かった。しかし今回、特にアップルのHomePod miniは、先行発売されていたHomePodよりもサイズがぐんと小さいので、筆者も机の作業スペースに置くようになった。スマートスピーカーが手元にあると、iPhoneにかかってきた音声通話をHomePod miniで応答できる。そのためハンズフリー通話を積極的に使うようになった。両手が自由になるため、そのままパソコン作業も続けられる。こちらから通話する場合はiPhoneで連絡帳から通話する相手を選び、音声通話のデバイスにHomePod miniを指定すればいい。スマートスピーカーは活用の仕方によってデスクワークに欠かせないツールにもなる。

HomePod miniはアップル製品との連携に優れているので、やはりiPhoneユーザーにお薦めのスマートスピーカーだ。音質は好みによるところも大きいが、小音量の音もしっかりと鳴らし切るバランスの良さは秀逸だ。Amazon EchoはエントリーモデルのAmazon Echo Dotと合わせて、スマートスピーカー入門機として最適な選択といえる。値段も手ごろなので、複数の部屋に設置して機器のリモコンとして使うなど、スマートホーム環境の本格的な構築にも力を入れたくなる。
いまだ新型コロナウイルスの影響に見舞われており、気楽に外出できる状況ではない。自宅で最新のスマートスピーカーでゆっくりと音楽を聴きながら、リラックスしてみてはいかがだろうか。
フリーランスライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経て独立。AI・IoTに関わるスマートオーディオ、4KにVODまで幅広いカテゴリーに精通する。堪能な英語と仏語を活かし、国内から海外のイベント取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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