心許せる友ほしい 大学1年「オンラインだけでは…」
コロナ下のU22座談会(1)

新型コロナウイルスの感染拡大に揺れた2020年。不安定な状況のなか、大学入学、就職活動、入社という節目を迎え、新しい世界へ一歩踏み出したU22世代はどう過ごしたのか。12月中旬にオンラインで開いた「コロナ下のU22座談会」1回目の主役は大学1年生。入学式は中止、キャンパスへの立ち入りも制限され、授業もオンラインという「新常態」の大学生活を振り返ってもらった。(司会はU22編集長・安田亜紀代)
Aさん 東京都内にある国立大商学部に在籍する女性。体育会応援部に所属。
Bさん 都内私大の国際系学部に入った女性。多様性に関心。
Cさん 都内の私大経済学部の男性。就活相互支援の学生団体でリーダー役。
Dさん 九州にある国立大法文学部の女性。学生向けメディアの運営団体に所属。
――オンライン授業の日々、どうでしたか。
Bさん 春学期は講義の録画が一方通行で配信されて、それを見て課題を提出する形でした。課題の数も多くて、気付いたら夜中ということも多く……。親は会社、妹も普通に中学へ行って、自分は家にいるのになぜか忙しく、ずっとパソコンの前に張り付いている状況。しかも友達も全然いなくて、精神的にすごくきつかったです。秋学期はZoomなどを使った双方向の授業が増え、課題も少し減り、ようやく気分転換に散歩できるぐらいの感覚になりました。
Cさん 課題はそれほど多いわけではなかったですが、先延ばしにしちゃいますね。何よりも最初に困ったのは、授業の履修登録です。辞書みたいに分厚いシラバス(授業の概要が載った資料)が家に届いて、いきなり1週間後が締め切りですと言われて……。全然わからないのでツイッターで大学の先輩を見つけて、質問しまくりました。授業はやはり友達と一緒に受けたいなというのはありますが、一方でオンラインになったことで通学時間がなくなり、その分、自分の時間が増えたというメリットはあるかなと思います。
Dさん 私もほとんどオンライン授業で、みんなはどこまで理解できているんだろう?というのも見えないから、本当に孤独感があり、友達のありがたみを初めて知りました。オンラインだとスマホを途中で見ちゃったり、他の画面に変えちゃったりして、集中力も切れやすい気がします。
SNSに「#春から○○大」
――高校まではすぐそばに友達がいて一緒に学んでいる感覚があったと思います。大学の友達づくりはどうしましたか?
Aさん 私は部活に入っているので、部活の人とは仲良くなれましたが、それ以外の人たちとはそんなに親交を深められていないし、仲良くしようというモチベーションが低いというか、ヨコのつながりが希薄だなって思います。
Cさん 「#春から○○大」というハッシュタグを付けてSNSを使っている人が多いので、それを片っ端からフォローしました。SNSをきっかけに知り合った同級生で、LINEを交換して、Zoomでちょっと雑談する、ということはやっていましたね。
Bさん おそらくハッシュタグから始まり、4月には学科の100人以上のグループLINEができていました。ただ、みんな一斉に自己紹介や出身校を書いて「友達になってください」とメッセージがワーッと流れてきて、ちょっとこわいなと思い……。私は会ったこともない人とつながる意義を感じなくて、あまりやっていませんでした。夏休みから語学で同じクラスの子とZoom会やったり、実際に遊びに行ったりして、友達関係はようやくそこからでしたね。家庭によっては「こんなコロナの状況で誘う子なんて」と言う親もいそうだなと思って、遊ぶといっても気を使いながら恐る恐る、でした。
Dさん 私もSNSは怖くて使えませんでした。偏見かもしれないですが、ツイッターは主張の言い合いが多いイメージがあって、私には向いていないなと。結局、いま一番仲良くしているのは、高校で仲良かった友達ですね。もしコロナが収束して、旅行しようと思ったら誘うのは高校の友達だと思います。
Cさん 同じです。悩みを相談したり、こういう思いがあるという深い話をしたりするのは高校の友達です。大学の友達は授業でわからないことがあったら聞くとか、事務連絡みたいな感じのやりとりが多いですね。本当は大学にも心を許せる友達がほしいですけど。
Aさん 思うに、つらいことを一緒に経験すると、つながりって強くなりますよね。大学の部活も、前期はオンラインでの練習で、あまり同級生と仲良くなれなかったのですが、夏に対面練習が再開されてから仲良くなれました。私もSNSでできた友達もいますけど、「オンライン=世界」みたいになっちゃうことって弊害も大きいなって思います。
――オンラインの弊害とは。
Aさん ツイッター上で「質問箱」という匿名で質問できるサービスがあるのですが、大学生もよく使っていて、その中で他の人を傷つける投稿があったり、友人のすごくプライベートな情報が流されたりするのを見ると、みんな心が不安定なのかなと感じます。他にも友達の写真を勝手に複製してSNSで偽アカウントが作られたり、くだらないいじめみたいなのがあったりするんですよ。同じ大学というだけでフォロー関係になっていて、つながりの垣根が低いからこういう事態が起きているのかなと。
Dさん 私も友達から聞いたのですが、大学の学科のグループLINEも誰かに荒らされて消滅したらしいです……。
Cさん 僕の学科も1年生のグループLINEがあったのですが、変な人が入ってきて、自分のユーチューブ動画を連投し出すというカオスな状況になって、僕は抜けましたね。
――結構穏やかじゃない事態が起きていたんですね。色々と不安定な状況のなか、自分自身の大学生活で、コロナの影響で困ったことや、残念だったことってありますか。
Cさん 自分が今入っている学生団体のイベントはコロナ以降、Zoomでの開催になっていて、それだとどうしても熱量や盛り上がりに欠けるなと感じます。
Aさん 今の大学を選んだ理由の一つは交換留学制度だったんです。選抜があるので英語の勉強を頑張っているのですが、今年の交換留学は中止で、再開のめどが立っていません。受験勉強のモチベーションだったので、それはすごく大きいです。大学院に進んででも、絶対留学したいので、それは諦めたくないですね。
Bさん 私は何か学んだことや経験したことも人に話したいタイプなので、人に会って刺激しあえないのがとても消化不良でした。そもそも高校で所属していたオーケストラの引退公演がコロナで中止になってしまったこともひきずっていましたね。しかも入学後は授業がすごく大変で、情報に押し流される感じ。自分が好きだったことがどうでもよくなっちゃうぐらい、無気力になっていました。
オンラインイベントで「好きなこと探し」
――Bさんが言うように、モチベーションが下がる、という人は多かったかもしれません。せっかくのキャンパスライフが始まらないなか、皆さんはどこに活路を見いだしましたか。
Bさん 夏休みに少し余裕が出てきて、このままじゃだめだという思いから、本当は気分が乗らないけど色々イベントに参加したんです。高校のときに交流のあった外国のオーケストラと一緒にオンラインで合奏するイベントに参加したり。あとは大学で多様性をテーマにしたイベントがあって、企画運営に手を挙げたんです。私は障害者の方の生活がコロナでどう変わったのかということをテーマにパネルディスカッションを企画しました。とりあえず何か興味あることは続けて、小さな成功体験を積み重ね、気持ちも少しずつ前向きになってきました。
Aさん 高校までの勉強って机で勉強するというタイプのものが多いですが、大学になってからはそれだけが学びじゃないなと思って、学外の人と話したり、企画に参加したりするタイプの多面的な学びの機会を増やすようにしました。たまたま同じ学部の先輩が主催した座談会に参加したことがきっかけで、起業家や社会人との勉強会に参加できるようになり、今まで会ったことないタイプの方から、生き方の選択肢を聞いて人生勉強をしていました。
Cさん 僕も大学の外に活路を求めて、いろんなところに足を突っ込んで好きなもの探しをしてきました。自粛期間中はオンラインサロンに参加して、面白い社会人や学生とたくさん出会えました。もともと自分は保守的な性格でしたが、感性に優れた方など、違う価値観に触れたのは刺激になりました。こういうところでインプットできたことを、今は学生団体でアウトプットしている感じです。
Dさん 私は1年生の間は好きなことを見つける期間で、2年生以降にそれを極めるというふうに考えていました。だから、自分が所属している学内情報サイトを運営する学生団体でもミスコンテストの運営やフリーペーパーの作成など色々なことに手を出しまくっていました。最近はホームページのデザインに興味があります。私が提案したデザインが採用されることも多く、これが向いているのかもしれないと思って、もっと勉強して究めていきたいなと思っているところです。
(つづく)
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