
DX時代の覇権、技術だけでは握れない 伊藤亜聖氏
パクスなき世界 東大准教授
[有料会員限定]
急激に進んだデジタル化(DX)は世界をどう変えるのか。中国をはじめ新興国の動向に詳しい東大の伊藤亜聖准教授に聞いた。
- 【関連記事】
――新型コロナウイルス禍のDXは新興国をどう変えていますか。
「可能性とリスクの双方を増幅している。インドは生体認証IDを利用して多くの貧困層に給付金などの支援をしたし、インドネシアでは遠隔医療サービスが立ち上がった。いずれもコロナ前から用意されていたDXが開花した。一方、新興国にはインターネットのアクセスに乏しく、端末を持たない人も多くいる。特に低所得層との間のデジタル格差は深刻になった」
――データ保護のあり方など、DX時代のルールは国によってバラバラになりがちです。
「モノの貿易が中心だった時代の地域統合は関税引き下げがどの国にも利益をもたらすという国際貿易論の共通理解があった。後発国や特定産業の保護を認めながらも大筋での自由化という方向性があった」
「一方、デジタルサービスの国境を越えた拡大は、

新型コロナウイルスの危機は世界の矛盾をあぶり出し、変化を加速した。古代ローマの平和と秩序の女神「パクス」は消え、価値観の再構築が問われている。「パクスなき世界」では、どんな明日をつくるかを考えていく。