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菅田将暉 俳優・音楽・ラジオ、使う脳いい感じに違う

菅田将暉インタビュー(下)

NIKKEI STYLE

日経エンタテインメント!

2020年は主演した映画『糸』が22億円を突破した。『MIU404』では不敵な悪人ぶりが話題となった青年・久住役として出演。また、映画『STAND BY ME ドラえもん 2』の主題歌『虹』を担当した。前回の「菅田将暉 『コラボの年にしよう』と考えていなかった」に引き続き、今回はラジオの仕事や今後の展望などについて聞いた。

◇  ◇  ◇

近年の菅田将暉にとってのもう1つの核となる仕事がラジオだ。17年から始まった毎週月曜深夜1時からの『菅田将暉のオールナイトニッポン』は、4年目に突入。自粛期間中も休むことなく続けられた。

あの期間のラジオは"最後の砦"

「あの期間の僕にとって、ラジオは最後の砦でした。稼働できることが少ないなか、週に1回のラジオで世の中とつながれている感じがしたし、頭を動かすことで仕事の感覚を思い出させてもらえました。

お芝居の現場にいたりすると、1週間の感覚がないんですよ。自分が今どこにいて、何時で、何人なのか。僕にとって、そんな人として当たり前のことを感じられるのが、『オールナイトニッポン』なんです。時事的なことも知ることができますし、今みんなが何を考え、何が流行しているのかも分かる。最初の頃は、『僕はこんなに何も知らないのか』と、世間とのズレのようなものをかなり感じていました。今は、ただただ月曜の深夜に、どうでもいいことを言って笑う。それだけです(笑)。ただでさえみんな、月曜って憂鬱じゃないですか。

ラジオは4年目ですが、小栗(旬)さんもやってましたし、俳優がそもそも偶像でしょう? 崩れようがないんですよ。ここでの自分が素なのかと聞かれたら、プロレスというか。個人的には、もの作りと変わらない感覚ですね」

20年は春以降、SNSを使った俳優側からの発信が非常に増えた年でもある。これまでなかなか見ることができなかった俳優の素が知れるコンテンツは非常に一般受けがいいが、菅田はこの状況をどう感じているのか。

「コロナをきっかけにみんなが発信できる場を求めた結果ですよね。単純に時代の変化だと思います。僕としても『確かにそうなるよな』という印象。これから、もっと増えていくんじゃないでしょうか。でも大人数でのコミュニティの数は変わらずに、少人数のコミュニティが増えていく感じがします。それぞれの好みに合わせて好きな場所を選べて、見たいものを発信してくれる人がいなければ自分でやる。そういう環境が整っていくことで、1人ぼっちの人が減る。それが1番大事なことだと思います。

ただ僕がこれ以上、何かを発信する場所を増やすことはないです。もう既に、わりと手一杯なので(笑)。でも、しんどさはないです。俳優と音楽活動とラジオと、それぞれにいい感じで使う脳が違うからバランスがいいんだと思います」

「ただ、興味のあるもの作りを、これからもジャンルに関係なくやっていきたいなと思っているだけ。食事でもそうじゃないですか。赤いやつ、緑のやつ、黄色いやつ、みたいな。バランスよく食べているのが、1番調子がいいんです(笑)」

では、仕事ではない菅田自身にとっての2020年はどんなことを考え、どんな影響を与えられた年になったのか。

「撮影予定だった作品がなくなったり、延期になった作品も何本かあって、改めていろいろ考えましたよね。

もともと夏に2カ月オフを取る予定だったんです。『海外の古着屋を回って、フェスまみれだ~』って、インプットするつもりで。それに合わせて海外絡みの仕事もいくつかあったんですけど、全部できなくなって。そこはすごく残念でした。

エンタテインメントはお米や野菜みたいに食べなきゃ生きていけないというものではないですが、似たような存在でもあるというか。ないと寂しいものでもあると思います。でも、自粛期間中に家でずっと考えていると、『あれ、俺、俳優やりたいのかな、やりたくないのかな?』という発想になってくるんですよ。3、4カ月お芝居していないという状況はここ10年なかったことですし、動けるのは音楽とラジオだけ。

考えれば考えるほど『映画に興味を持てなくなったらどうしよう? 人の人生演じて何がオモロいんだろう、って結論になってしまったらどうしよう。ヤバい!』って。でも最終的には『やりたい』と思えたので、ホッとしました。危なかったです(笑)。でもきっと、そうやってあの期間で引退を決意された方は本当にいらっしゃるのかもしれないと思いました」

2021年はもしかしてサスペンスイヤーかも

「僕が踏みとどまった理由は、『やらなきゃ』という勝手な使命感もありました。これまでに演出家の蜷川幸雄さん、監督の青山真治さんや山田洋次さんなどにお世話になって、身近なところだと小栗旬さんなどの大先輩たちの背中も見てきて。直接教わった次の世代の僕らがそこで学んだことを体現してつないでいかないと、途絶えるものもあるよなぁと。勝手に跡取りみたいな気持ちになっている部分もあって『今、僕が逃げちゃマズいよな』と思ったんです。それだけが理由じゃないですけど、真っ先に思い浮かんだのはそこでしたね。もちろん託されているのは僕1人じゃないです。仲間もいっぱいいるし、僕以上に背負ってくれている人もたくさんいます。

それと一概には言えないですけど、芸能界は本当に楽しい世界なんですよ。小さい頃から見ていた『ドラえもん』の主題歌を歌わせていただけるような、そういう夢もいっぱい見させてもらえていますし。一時期『芸能界はしんどい。ブラックだ』みたいな風潮もあったじゃないですか。それに『いや待ってくれよ』と思う部分もあったんで、『じゃあ全力で楽しんでやる!』って。これも勝手にですけど、その姿を見せることが多分、今は必要なことなのかなって思ったんです。今のこの状況から生まれてくるものだってたくさんあるだろうし。

だから、自粛期間中にやったことって、いろいろな方に連絡を取りましたよ。過去にお世話になった監督や友人、洋服屋さん。それで『何ができるだろうね』ということを話しました。それも僕が今後も活動を続けたいと思えた要因の1つだと思います」

その上で菅田が抱く今後の展望を聞くと、「うーんあんまり考えてないんだよなぁ。どうしたらいいと思います?」と言いつつ、次の言葉を紡いでくれた。

「21年に控えている作品で見ると、サスペンスイヤーかもしれません。20年になくなってしまったものもいくつかありましたけど、それでもお芝居三昧の年にはなったと思います。1年間はまた引き続きたくさん頑張って、またタイミングが良ければ海外での休暇を計画しようかなと。

海外でのお芝居にはもちろん興味があるし、最近はアジアなどにも本当に面白い作品がたくさんあるので、日本だけじゃない活動も、いつかはやりたいなと思っています。でも正直『これぐらいのバランスで』とか『この年は音楽だけで、こっちではお芝居だけで』ということは、本当にあんまり考えていなくて。ずっと縁でつながってきたものですから。自分が作りたいなと思うものって、自然とそのときどきに合わせて出合うものなんだと思います。

20年の『糸』『浅田家!』のあったかい映画2作もそう。単純に来た作品の一部分を見てそう言っているだけなのかもしれないですけど、僕の中ではそういうもの。そんな流れはきっとこれからも変わらないので、僕はその都度、順応してやっていきます。それでたまに、100個に1個ぐらい、ちょっと自我を出してエゴをぶちまけていこうかなぁっていう感じですね。音楽もお芝居も」

(ライター 松木智恵、日経エンタテインメント! 平島綾子)

[日経エンタテインメント! 2020年12月号の記事を再構成]

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