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つみたてNISAで「リカク」してしまった君たちへ

積立王子への道(20)

投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。

マーケットは先を読む生き物なんだ

ハジメくんの言う通り、足元では世界の株式市場が加速して値上がりしている。新型コロナの感染拡大が続き、欧米主要都市や日本で再び活動制約が強化され実体経済は停滞感が高まる中での株高だ。不可解に思うだろうが、マーケットにはいつも、将来を先んじて織り込みにいく特性があるんだ。

だから市場は今、コロナ禍によって一気に進展したIT技術やサービスがコロナ終息後にもたらすであろう新たな活気ある社会状況を前提に、それを先取りして動いているわけだ。そこにワクチン開発の展望が見えたことで、終息を見越した期待の高まりが株価をさらに押し上げた。そして少し難しい話になるが、コロナ禍に対応した主要国中央銀行の強烈な金融緩和政策で、あふれ出たマネーはこぞって株式市場に向かうであろうとの想定が買い安心感となって、市場参加者を楽観的に行動させているんだ。

人は「心」に従って動いてしまう

さて、足元のように大きく値上がりするときも、逆にコロナショック時のように相場が急落する局面でも、多くの投資家は値動きそのものに反応してしまう。つまり上がればハジメくんのように利益を確定させたいと思い、下がれば損失拡大を抑えようと売却に動きたくなるのだ。それは多くの投資家が自身の感情に従って投資判断をしているからであって、言ってみれば長期資産形成における最大の敵は自身の心なんだ。

長期投資家には欲望と恐怖の感情を克服する胆力が必要になる。「リカク」しちゃった人も、損失確定で売却した人も、また再びタイミングを計って安くなったところで買い直すと言うが、それを見極めることは容易でない。下がっているときはもっと下がると感じるし、上がっているときは下がったら買おうと思っているうち、どんどん買えないまま値上がりを得る機会を失ってしまう。目先の相場の値動きはプロでもなかなか当てられないものなのさ。

利益の最大の源泉、それは市場に居続けること

米国にわかりやすいデータがある。1983年から2013年の約30年間に、米株式市場の指標(S&P500指数)は年率11.1%のリターンをあげた。ところがそこに実際投資をした投資家たちの膨大なデータの平均リターンはたったの3.69%しかなかった。なぜなら多くの投資家はそれぞれのタイミングで買い、思い思いの判断で売却しているからなのだ。

相場の上下動でタイミングを計り、さらに大きなリターンを狙おうと売買を繰り返した人もたくさんいただろう。そうした人たちが得たリターンはマーケットが提供してくれたそれよりはるかに小さなものだった。いわんや損失になった投資家も少なくないはずだ。では11.1%のマーケットリターンを得た人はいないのか。そんなことはない。この間ずっと投資を継続していた人は皆市場のリターンを享受できたわけだ。要するに投資家であり続けること、マーケットに居続けることが最大の利益を得られることだと、このデータは示してくれている。

長期投資家の強みと積み立て投資

長期的な経済成長を前提とできるなら、日々デタラメに上下する株価もやがて、成長に見合った価格水準へと収束していく。そうした株式市場の習性を知って、じっくり待つことができるのが長期投資家の強みなのだ。そして長期投資を継続するために、短期的な値動きに対する感情の起伏を克服できる行動こそが積み立て投資なんだよ。そうは言っても、今説明したマーケットの特性を理解していないと積み立て投資はなかなか続かないようで、ある金融機関の積み立て投資家の平均積立期間は2年程度だそうだ。やっぱり人間は原理原則を知らなければ、感情に負けてしまう生き物なんだね。

さあ視線を水平線の先に

ヨットでまっすぐに進むためには、ずっと遠くに視線を向けたかじ取りが肝要で、目の前の波しぶきを見てしまうと、途端にかじ取りがうまくいかなくなると言う。長期投資も同様だ。君たちふたりのゴールは何十年も先の未来で、もっともっとイノベーティブで便利な社会へと進歩することで世界経済は成長を続け、それを養分に積み立て投資の資金も相応に育っているはずだ。目先の相場の値動きに翻弄されて、目標への視線をそらしたらダメだ。みすみす長期投資の果実を損なうことになる。ハジメ君は猛省して、すぐに積み立て投資を再開すること。そしてふたりで励まし合って、立派な長期投資家を目指してほしいね。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを行っている。『預金バカ』など著書多数。

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積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。

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