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中古住宅を安く買う 21年は「任意売却物件」に注目

榊淳司 後悔しない住まい選び(3)

2020年は新型コロナウイルスに明け、コロナで暮れそうです。21年はどうなるでしょう? 海外ではワクチンが開発されて、一部で接種が始まっています。ワクチンが期待通りの効果を発揮すれば、21年の終わりごろにはコロナが収束するめどが立つのではないでしょうか。しかし、そのめどがつくまでは、日本の経済にマイナスの力が強く働くのは間違いなさそうです。それは不動産市場にも大きな影響を及ぼします。

21年初めか年央に市場へ?

20年、首都圏の不動産市場ではコロナに起因する様々な特異現象が見られました。在宅でテレワークをするスペースを確保するために広さや部屋数を求めた戸建て住宅の購入や、共用施設が充実している湾岸のタワーマンションへの一時的な需要が目立ちました。しかし、そういった動きも一巡すれば落ち着くはずです。

一方、残業やボーナスの減少、非正規雇用の雇い止めなどによって、不幸にして住宅ローンの返済に行き詰まっている人々が増えている事実もあります。21年にはそういった人々の「任意売却物件」が中古住宅の市場に出ることになるでしょう。

住宅ローンの返済が困難になると、金融機関は返済計画の延長や元金返済の一時的な猶予に応じてくれます。しかし、ローンを組んでいる人の収入の状況が改善しない場合、ローンの担保となっている物件であるマンションなどを売却し、ローンを精算することになります。これが任意売却です。

金融機関によって多少異なりますが、元金返済の一時的な猶予などの期間は半年から1年程度になることが多いようです。となると、21年の年初から年央にかけて任意売却物件が市場に出始めることが想定されます。

任意売却物件、成約期間などに条件

任意売却物件が市場に出る場合、普通の中古マンションと変わらない形で売り出されます。当然、「SUUMO(スーモ)」や「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」といった不動産情報サイトにも出てきます。しかし、多くの売り出し物件のなかでどれが任意売却なのか、インターネット上で判別するのは極めて困難です。

たいていの場合、任意売却物件には売却条件に制約が課されています。それは「○月末日までには売却を成約させなければならない」という時間的な縛りです。任意売却に至るのはローンの返済に窮している人がほとんどなので、定められた期間内に売却を成立させたいと考えるのが通常です。

逆に言えば、買い手にとってはそういう物件の価格交渉はやりやすくなります。つまり、これから中古マンションを購入しようとする側にとっては、任意売却物件を見つけて価格交渉をすれば、相応の値引きを引き出せる可能性があることになります。

買取再販、割引率は高くなるが……

このような購入方法はまるで人の弱みに付け込むようで、罪悪感を抱く人もいるでしょう。ただ、売り主は定められた期間内に普通に売れなければ、無理にでも売却を成立させなければなりません。その場合は「買取再販」が専門の業者に売ることになります。

買取再販の業者は、そういった物件を安く買い取って高く売ることで差益を稼ぐ業態です。スピーディーに売却することを主眼に置いているので、業者の買値は高くて市場価格の8割、安い場合は6割から5割になります。ということは、一般の人からの売り出し価格の、例えば1割引きで買う場合よりもかなり安くなるのです。

このため、任意売却物件を1割程度の値引きの状態で売ることができれば、売り主にとってはローンの精算がよりスムーズに進む、という考え方もできます。

売り主と直接つながっている業者を探す

では、市場に出ている多くの中古のマンションや戸建てのなかで、どれが任意売却物件なのか、見分けるヒントを説明しましょう。

前述の通り、ネットを見ているだけでは任意売却物件を見つけることはほぼ不可能ですが、入り口はやはりネットにあります。気に入った物件が見つかったら、例えばスーモなら「お問い合わせ先」、ホームズなら物件詳細情報に「取引態様」という項目があります。そこで「専属専任媒介」あるいは「専任媒介」となっている物件を選んでください。

売り主が1社とだけ媒介契約している物件で、そういう業者は売り主から直接売却を依頼されています。そこが「仲介」となっている場合、直接売り主につながっていない場合がほとんどです。そのような場合、そのサイト内やほかのサイトで同じ物件を「専属」や「専任」で出ていないか探してみることです。あれば、その業者に連絡すべきです。

売り主と直接つながっている業者は、売り主の事情を知っています。任意売却であれば、それも承知しているはずです。どこまで値引きが可能かも、売り主と打ち合わせ済みであるケースもあります。つまり、そういう業者を通した場合の価格交渉はスムーズです。

市場をしっかり観察、有利な購入を

ところが、ただの「仲介」の場合は、売り主との間にさらに別の「専属」なり「専任」の業者が入ることになります。交渉をするにも、これらの業者を介することになるので、やや複雑になります。

また、業者によっては交渉を仲介することを面倒くさがり、事情も分からず「値引き交渉はできません」などと説明してしまうケースも多いものです。

21年は任意売却物件が多く中古市場に出てくる可能性があります。買い手としては市場をしっかり観察しながら、より有利な購入をめざすべきでしょう。

◇ ◇ ◇

「一生の買い物」といわれる住まいの購入。誰しも失敗はしたくないでしょう。戸建てやマンションの最新情報のほか、販売業者などの事情にも精通する榊淳司氏が、後悔しない住まいの選び方をアドバイスします。

榊淳司
住宅・不動産ジャーナリスト。榊マンション市場研究所を主宰。新築マンションの広告を企画・制作する会社を創業・経営した後、2009年から住宅関係のジャーナリズム活動を開始。最新の著書は「限界のタワーマンション(集英社新書)」。新聞・雑誌、ネットメディアへ執筆する傍らテレビ・ラジオへの出演も多数。

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