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21年度与党税制改正大綱の要旨 コロナ対策と経済両立

基本的考え方

わが国は、本年1月に最初の感染者が確認されて以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大と戦後最大の経済の落ち込みに直面した。感染症の爆発的な感染拡大の防止に注力すると共に、社会経済活動との両立を図る。政府は経済の再生に取り組み、感染拡大前においてはバブル崩壊後、最高の経済状態を実現していた。ウィズコロナ、ポストコロナの新しい社会をつくりデフレ脱却と経済再生を確かなものとする必要がある。

各省庁や自治体の縦割りを打破し行政のデジタル化を進め、今後5年で自治体のシステムを統一・標準化する。税制も社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)を強力に推進する。

菅内閣は成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、2050年までに温暖化ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を目指す。税制面でも支援をする。

ウィズコロナ・ポストコロナの経済再生 クラウド型システムを対象とする税制措置を創設することで「つながる」デジタル環境の構築を促進し、レガシーシステムからの脱却を図る。50年目標に向け、企業投資促進税制を創設する。

企業の研究開発投資を持続拡大させるため、コロナ禍で売り上げが減少しても研究開発投資を増加させた企業は、控除上限を法人税額の25%から30%に引き上げる。コロナ禍による欠損金は一定期間に限り、事業再構築・再編に係る投資に応じた範囲で最大100%までの控除を可能とする。

機動的な事業再構築を促す観点から、自社株式対価M&A(合併・買収)で、買収される企業の株主の譲渡損益への課税を繰り延べる。国際金融センターとして地位確立に向け海外から事業者や人材、資金を呼び込む観点から税制上の措置を講ずる。

デジタル社会の実現 接続性・クラウドの利用・レガシーシステムからの脱却などが確保された事業変革デジタル投資を促す税制を創設。クラウドで提供する自社利用ソフトの普及が拡大しているため、ソフトの取得価額を構成する試験研究費用を研究開発税制の対象にする。

国・地方公共団体における税務手続きの負担軽減のため、納税者等の押印義務を廃止する。

グリーン社会の実現 生産プロセスの脱炭素化に寄与する設備や、脱炭素化を加速する製品を生産する設備には、税制上強力に支援する措置を創設する。車体課税の今回の見直しは、次のエコカー減税等の期限到来時に抜本的な見直しを行うことを前提に、一定の猶予期間を設ける。

中小企業の支援、地方創生 中小企業の状況は厳しさを増しており、経営基盤の強化を支援する必要がある。中小企業の軽減税率の特例や中小企業投資促進税制などの期限を2年延長する。

経済の構造変化を踏まえた税制の見直し 働き方の多様化など経済社会構造の変化への対応や所得再分配機能の回復のため各種控除のあり方などを検討する。

経済のデジタル化への国際課税上の対応 経済のデジタル化への解決策は日本企業に過度な負担を課さないよう配慮し、企業の国際競争力の維持・向上につながるものでなければならない。国際的コンセンサスに基づく合意は喫緊の課題。

要 旨

<法人課税>

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制 産業競争力強化法の改正を前提に、青色申告の法人で同法の計画認定を受けたものが、同法改正法の施行日から2024年3月31日までの間に、計画に記載された中長期環境適応生産性向上設備(仮称)または中長期環境適応需要開拓製品生産設備(仮称)の取得等をして、国内事業の用に供した場合は、取得金額の50%の特別償却とその取得価額の5%(温暖化ガスの削減に著しく資するものは10%)の税額控除との選択適用ができる。控除税額はデジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制との合計で当期法人税額の20%を上限とする。

DX投資促進税制 産業競争力強化法改正を前提に、青色申告の法人で同法の計画認定を受けたものが、改正法の施行日から23年3月31日までの間に、計画に従って実施される同法の事業適応(仮称)の用に供するためにソフトウエアの新設もしくは増設をし、またはその事業適応に必要なソフトウエアの利用にかかる費用(繰り延べ資産となるものに限る)の支出をした場合は次の措置を講ずる。

取得等をして国内事業の用に供した事業適応設備の取得価額の30%の特別償却と、取得価額の3%(グループ外とデータ連携をする場合は5%)の税額控除との選択適用ができることとする。繰り延べ資産の額の30%の特別償却とその繰り延べ資産の額の3%(同)の税額控除との選択適用ができることとする。

繰越欠損金の控除上限の特例 産業競争力強化法改正を前提に、青色申告の法人で改正法の施行日から同日以後1年を経過する日までの間に同法の計画認定を受けたもののうち、計画に従って同法の事業適応(仮称)を実施するものの適用事業年度に特例対象欠損金額がある場合、その特例対象欠損金額については、欠損金の繰越控除前の所得の金額(50%超部分は累積投資残額に達するまでの金額に限る)の範囲内で損金算入できることとする。

賃上げ税制の見直し 給与等の引き上げ及び設備投資を行った場合の税額控除制度を見直す。

中小企業関連税制 中小企業等経営強化法の改正を前提に、青色申告の中小企業のうち同法の改正法の施行の日から24年3月31日までの間に中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたものが、計画に従って他の法人の株式等の取得をし、かつ、これをその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有している場合、その株式等の価格の低落による損失に備えるため、取得価格の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額は、その事業年度において損金算入できる。

株対価M&Aの特例 法人が会社法の株式交付により、その有する株式を譲渡し、株式交付親会社の株式等の交付を受けた場合には、その譲渡した株式の譲渡損益の計上を繰り延べることとする。

研究開発税制の見直し 試験研究費のうち、研究開発費として損金経理をした金額で非試験研究用資産の取得価額に含まれるものを加える。試験研究費総額に係る税額控除制度について税額控除率を見直す。

<個人所得課税>

住宅ローン減税 住宅の取得等で特別特例取得に該当するものをした個人が、その特別特例取得をした家屋を21年1月1日から22年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合には、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除及び当該控除の控除期間の3年間延長の特例を適用できることとする。

住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例は、個人が取得等をした床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満である住宅の用に供する家屋についても適用できる。

<資産課税>

教育資金などの一括贈与に係る贈与税の非課税措置 直系尊属から教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、適用期限を2年延長する。

固定資産税の負担調整措置 宅地等及び農地の負担調整措置については、21年度から23年度までの間、据え置き年度において価格の下落修正を行う措置並びに商業地等に係る条例減額制度及び税負担急増土地に係る条例減額制度を含め、現行の負担調整措置の仕組みを継続する。

宅地等(商業地等は負担水準が60%未満の土地に限り、商業地等以外の宅地等は負担水準が100%未満の土地に限る)及び農地(負担水準が100%未満の土地に限る)については、21年度の課税標準額を20年度の課税標準額と同額とする。20年度において条例減額制度の適用を受けた土地について所要の措置を講ずる。

<車体課税>

エコカー減税の見直し 排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車に係る自動車重量税の免税等の特例措置(自動車重量税のエコカー減税)について次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。

乗用自動車(軽油自動車を除く)は自動車重量税を免除し、または税率を50%もしくは25%軽減する自動車に係る燃費性能に関する要件を次のとおりとする▼30年度燃費基準に対する達成の程度が90%以上であるもの(20年度燃費基準を達成しているものに限る)▼30年度燃費基準に対する達成の程度が75%以上であるもの(同)▼30年度燃費基準に対する達成の程度が60%以上であるもの(同)。新車に係る新規検査後に受ける最初の継続検査等の際に納付すべき自動車重量税を免除する自動車は30年度燃費基準に対する達成の程度が120%以上であるものとする。

乗用自動車(軽油自動車に限る)は新車に係る新規検査の際に納付すべき自動車重量税を免除する自動車は、20年度燃費基準を達成しているものとする。

環境性能割の見直し 環境性能に応じた非課税または1%もしくは2%の税率(営業用自動車にあっては、非課税または0.5%もしくは1%の税率)の適用区分について次の見直しを行う。

自家用乗用車の燃費性能に関する要件を次の通りとする▼30年度燃費基準に対する達成の程度が85%以上(20年度燃費基準を達成しているものに限る)▼30年度燃費基準に対する達成の程度が75%以上(同)▼30年度燃費基準に対する達成の程度が60%以上(同)。

軽油自動車に係る非課税の適用を受ける要件に、30年度燃費基準に対する達成の程度が85%以上であり、かつ、20年度燃費基準を達成していることを加える。

<納税環境整備>

押印義務の見直し 提出者等の押印をしなければならないこととされている税務関係書類について、次に掲げる税務関係書類を除き、押印を要しないこととするほか、所要の措置を講ずる。(1)担保提供関係書類及び物納手続き関係書類のうち、実印の押印及び印鑑証明書の添付を求めている書類(2)相続税及び贈与税の特例における添付書類のうち財産の分割の協議に関する書類。

スキャナー保存制度の見直し 国税関係書類に係るスキャナー保存制度について、次の見直しを行う。(1)承認制度を廃止する(2)タイムスタンプ要件について、付与期間(現行3日以内)を記録事項の入力期間(最長約2カ月以内)と同様とする。

検討事項

年金課税は少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間および世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金をはじめとした各種年金制度間のバランス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランスに留意し、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。

金融所得課税のさらなる一体化については、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境を整備する観点から、時価評価課税の有効性や課題をはじめとして多様なスキームによる意図的な租税回避行為を防止するための実効性ある具体的方策を含め、関係者の理解を得つつ早期に検討する。

小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、外国の制度も参考に、正規の簿記による青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図りながら、引き続き、「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。

自動車関係諸税は2050年カーボンニュートラル目標の実現に積極的に貢献するものとするとともに、自動運転をはじめとする技術革新の必要性や保有から利用への変化、モビリティーの多様化を受けた利用者の広がり等の自動車を取り巻く環境変化の動向、地域公共交通へのニーズの高まりや上記の環境変化にも対応するためのインフラの維持管理や機能強化の必要性等を踏まえつつ、国・地方を通じた財源を安定的に確保していくことを前提に、受益と負担の関係も含め、その課税のあり方について、中長期的な視点に立って検討を行う。

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