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転職戦線異状ありミドル○若手X コロナで急募DX人材

「ミドルの転職は特定の人材に求人が集中している」と語る、「ミドルの転職」の天野博文編集長

30代後半から50代のミドル世代の転職事情に変化がみられるようだ。新型コロナウイルスの影響が転職市場にも及ぶ中、求められる人材像や、転職を成功させるポイントは何か。35歳以上が対象の転職サイト「ミドルの転職」(運営はエン・ジャパン)の天野博文編集長に聞いた。

◇  ◇  ◇

――新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、求人件数はどのように推移していますか。

「当社には、35歳から50代をメインターゲットとする『ミドルの転職』と、若手の未経験層が対象の『エン転職』という転職サイトがあるのですが、2つのサイトに掲載する求人数の推移を比較すると、新型コロナウイルスの感染が拡大して以降の違いが顕著に表れています。若年層向けでは4月から5月にかけ、求人件数が前年同月比4~5割程度落ち込んだのに対し、ミドル向けはその期間に前年同月比2割以上の増加。その後も前年同月実績を上回り、これまでのところ、コロナ禍による求人件数の落ち込みはほとんど見られません」

「若手の求人が減少した背景としては、未経験者は育成に時間とコストがかかるので、採用を手控える企業が多かったこと、若手未経験層を大量に採用してきた業界(小売り、飲食など)でコロナの影響が特に大きかったことが挙げられます。一方、コロナの影響でビジネスモデルの転換や業績の立て直しを迫られた企業では、戦力になる社外人材を急いで採用したいというケースが増えており、即戦力人材が中心のミドルの求人件数の伸びにつながっているようです」

「ミドルへの求人件数はコロナ前から高い水準にありました。人材紹介大手3社の転職紹介実績(日本人材紹介事業協会調べ)のデータで比べると、2019年度下期において『41歳以上』は17年度下期比で約6割増、全体の増加率(約3割)と比べても伸び幅が特に大きくなっています。ミドルへの需要が伸びている背景としては、主に2つの要因があります。第一に、ミドル世代の多くは就職氷河期世代にあたり企業内の人材層が薄く、マネジメントを任せたい世代にもかかわらず社内に適材がおらず外部登用が進んでいるという点。第二に、業界の垣根がなくなり、経験豊富な人材を社外から採用する必要が出てきた点。例えば、自動車メーカーがIT(情報技術)人材を大量に採用するようになったケースなどが該当します」

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ミドル世代への求人が伸びている業界、職種

――ミドル世代への求人が伸びている業界、職種は。

「特に伸びが目立つのはIT業界やIT関連の人材です。掲載求人数ベース(20年11月)でITエンジニアのほか、ITコンサルタント、SE(システムエンジニア)など幅広くIT人材への需要が伸びており、掲載求人数は2年前の約2倍になっています。コロナ後、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化に向けた求人案件が大幅に増え、今後数年かけて起こると予想していた求人増がここ数カ月で起こっているようなイメージです」

ミドルへの求人は緊急事態宣言下でも堅調だった

「コロナ前と比較すると、あらゆる業界でIT人材の採用が増えているのが特徴です。たとえば、(売り上げ減に直面し)対面販売からネット販売へのシフトを急速に進める小売業界や、デジタル化が遅れていた官公庁などでもIT人材を外部から採用する意欲が高まっています」

「ITのほか、営業職は売り上げを担う部門として、景気に関係なく求人が多いほか、テレワークが広がったことで業務量が増えた総務や人事関連の求人も伸びています。ただ、ミドルへの求人が総じて堅調な一方で、足元の成約数は人材業界全体でマイナスになっていると思います。ITやDXなど、求人が一部に集中しており、該当要件に合わない求職者などはなかなか転職が決まらず、人材のミスマッチが起きている状況だといえるでしょう」

――ITをはじめ、求人数が多い分野のスキルや経験を持たないミドル人材にとって、転職が厳しくなっているのでしょうか。

「率直にいって、厳しいといわざるをえません。コロナの影響で、より即戦力を求める企業のニーズが顕著で、採用側の目線も上がっているからです」

「転職活動がなかなかうまくいかないときは、どこの会社で自分の能力を生かすか、いま一度考えてみるとよいでしょう。たとえば、都市部の大手企業に限ると、特定分野の即戦力人材にニーズが集中している面がありますが、中堅・中小やベンチャー企業、地方企業に視野を広げると、やや事情が異なります。これらの企業では、ITなどの専門的なスキルだけでなく、これまで大手企業で培ってきた様々な経験(事業開発、組織づくり、顧客開拓など)が評価されることが多いです。大事なことは、会社の規模、業界、場所にとらわれず、自身の持っている能力をいかせる場所を探すことです。その結果、年収などの条件が良い企業に巡り合うかもしれません」

2021年以降のミドル世代への求人ニーズ

――自分の能力を最大限に生かせる転職先を探すうえで重要なポイントは何ですか。

「まず、自身の人材としての客観的な相場観を知ることです。そのためにはこれまでのキャリアの棚卸しが必要になります。経験してきたこと、自分ができることを整理し、転職サイトを見たりスカウトが届いたりすると、自分に対するニーズがつかめてくると思います。そのうえで、採用企業側に自身の強みを的確に伝えられるよう、準備しておきましょう」

「今、コロナ禍で企業が求めるのは、とにもかくにも『即戦力』です。採用してすぐ活躍できる人材、長期にわたって会社に貢献してくれる人材であることを、上手にアピールできるとよいでしょう。ミドル世代は過去の経験やノウハウを生かすことを期待されることが多く、新しく何かを始めるよりも過去の経験から見いだした強みをアピールしたほうが効果的だと思います」

――2021年以降、ミドル世代への求人ニーズがどのようになるとみていますか。

「コロナで転職市場も影響を受けていることは事実ですが、労働力人口の減少という構造要因は変わらないため、経済の復調とともに回復傾向に転じ、転職人口のすそ野が広がり、中長期では再拡大局面を迎えるとみています。また、企業が短命化することに伴い、雇用の流動性が高まり、未経験者の内部育成から、即戦力を外部から採用する流れが継続するであろうということも転職市場の拡大要因になるかと思います」

「2021年に関しては、先日、当社が200の転職エージェントを対象にアンケートをしたところ、35歳以上のミドル世代の求人募集が『増加すると思う』との回答が42%、『減少すると思う』が30%、『変化はないと思う』が28%で、意見が分かれました。コロナの影響がいつまで続くかが読めないことが大きいと思います」

「ただ、私個人としては、20年とほぼ同じ要因で、21年も求人件数の伸びが続くとみています。また、採用企業がミドル世代に求めるスキルとしては『高いレベルの業務執行能力』『専門性』『課題解決力』『判断力』などが上位に挙がりました。転職を希望するミドル人材にとって、求人件数の伸びほどは追い風が吹いているとはいえないかもしれませんが、自分のこれまでの経験を棚卸しし、持っているビジネススキルを磨き、場合によっては転職先候補の目線を広げる。この作業を根気強く続け、自分の能力と経験が最も生かせる転職先をみつけてほしいと思っています」

天野博文エン・ジャパン「ミドルの転職」編集長
2005年エン・ジャパンへ中途入社。中途採用支援の法人営業、マネージャー職を経て、15年から人材紹介エージェントへのアドバイザリー業務に従事。16年から現職。ミドル層専用の転職求人サイト「ミドルの転職」や若手ハイキャリアのための 転職サイト「AMBI」を運営。

(日経転職版・編集部 宮下奈緒子)

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