中国SMICと政府系ファンド、7900億円で新工場建設

【北京=多部田俊輔】中国の半導体受託生産最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)は4日、中国政府系ファンドと共同出資会社を設立し、北京市内に新工場を建設すると発表した。総投資額は76億ドル(約7900億円)。米中対立の長期化に備え、中国国内での生産能力を高める。
SMIC、政府系ファンドの国家集成電路基金、政府系投資会社の亦庄国投の3社が出資する新会社を設立し、北京市内に半導体の大型生産拠点をつくる計画だ。資本金は50億ドルで、SMICが51%、国家集成電路基金が24.49%。亦庄国投が24.51%を出資する。
新工場の建設開始や稼働の時期は明らかにしていない。直径12インチのシリコンウエハーを活用し、中国メディアによると、初期の月産能力は10万枚を見込んでいる。市況に応じて、第2期の工場も立ち上げる予定だ。
習近平(シー・ジンピン)指導部は2015年に発表したハイテク産業育成策「中国製造2025」で半導体を重点分野に位置づけ、国内での技術開発や生産を支援している。足元、20%未満とされる半導体自給率を25年には70%まで高める目標を掲げている。
一方で、トランプ米政権は半導体を中国の「弱点」とみなし、中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)に対して米国の技術を使った半導体の供給を実質的に規制している。ファーウェイは台湾の台湾積体電路製造(TSMC)などとの取引ができなくなり、スマートフォン事業に影響が出ている。
中国はSMICを中国の半導体産業のけん引役と位置づけるが、米国はファーウェイ包囲網をSMICにまで広げている。米商務省は9月、SMICに設備などを輸出する際、事前許可を求めるよう規制した。米国防総省も今月4日、SMICを人民解放軍と関係が深い企業に指定した。
SMICの幹部は11月に開いた20年7~9月期の決算発表で「一部の設備や部品、原料などで輸出許可が必要になった。到着が遅れたり、不確実性が出たりしている」と明らかにした。米中対立が激化するなか、新工場の建設が計画通りに進むかどうか注目が集まる。