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「マーケティングは後手必勝」ワークマン式ヒットの法

NIKKEI LIVEイベント 土屋専務に聞く

NIKKEI MJ
「ワークマンプラス」は女性客が多い(千葉県松戸市の店舗)
 日本経済新聞社はNIKKEI LIVE「危機がヒットを生む コロナ禍の『ヒット番付』」をオンライン開催した。作業服国内最大手で、女性向けの新業態が好調なワークマンの土屋哲雄専務が登壇。好調の理由を問われ、「機能と低価格にこだわり、5年間は他がまねできない商品を作っている」などと話した。

「競争しない」強い分野に特化

10月に横浜市の商業施設にオープンしたワークマンの新業態「#ワークマン女子」。女性向け商品を充実させたこの店は、ワークマンの好調をけん引する「ワークマンプラス」に続き、大勢の来店客でにぎわっている。

当初はコンセプトショップだったが連日、整理券を配布する盛況ぶりをうけ、2021年はすでに10店の出店を決めたことを明らかにした。「あまりにも良いので400店を達成したい」

土屋専務は女性からの人気を予測して新業態を立ち上げようとしたわけではないと説明。「今は変化の時代なので後から気付いた」と話す。「#ワークマン女子」を開いたきっかけは、「ショッピングモールの中に入るワークマンプラスで女性のお客さんが多かった」ことだ。

「#ワークマン女子」の1号店

ビジネスでは先手必勝がよしとされることも多いが、土屋専務は「(ワークマンは)声のする方に進化する」「後手必勝と思う」などと語る。「AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)ブームだが、最初にやるとゼロから作る必要がある。後からやればパッケージ化されたものを利用できる」

ワークマンが成功した理由として、商品群を大きく拡大しないまま、見せ方を変えることで客層の拡大に成功したこともある。「#ワークマン女子」も「女性のものを前に出しただけ。(専用の)女性向け商品を作ったことはない」という。

ワークマンの土屋哲雄専務(中村直史編集委員と対談)

ワークマンは個人向けの作業着に特化してきたことで、「40年間競争をしていなかった。逆にいうと誰と競争しても負ける」(土屋専務)。

自社の強みと自負するのは、他社が手掛けない、機能性があって低価格というゾーンだ。高価格で機能性に優れた商品ゾーンには国内外のアウトドアブランドがひしめき、競争環境は厳しい。

そのかわりワークマンは「低価格と高性能の2つの軸は外さない」。土屋専務はワークマンが支持される理由の1つとして「5年間は他社に追いつかれない価格にしている」ことを挙げた。「追いつかれると値引き処分しないといけない。だから最低5年は他社がまねできないものをつくる」

商品開発やマーケティングでは「アンバサダーマーケティング」という手法を導入している。自社製品の熱心なファンで、ブログやユーチューブ、ツイッター、インスタグラムなどで同社製品の情報発信をしている人に「製品開発アンバサダー」になってもらい、製品の機能開発に参加してもらう方法だ。

クオリティー守るため「納期設けず」

土屋専務の近著、「ワークマン式『しない経営』」の題名にあるように、ワークマンは現在「しない経営」を掲げている。その意味は「1つのことに集中するために他のことをしない」。戦略的に他社の手掛けないゾーンを狙うのもその考えに基づく。「作業服で大きな法人向けマーケットも最初から捨てて、個人マーケットしかやらない」

「社員にストレスをかけない」ことも重要で、「納期を守れば、クオリティーが落ちる。クオリティーを守りたいから1年かけてもいいといっている。頑張れと言ってしまうと、残業が発生し、病気になってしまう」。

こうした目先のスピード感にとらわれないことも強さの要因のようだ。「#ワークマン女子」についても、土屋専務は「(日経MJヒット商品番付の)横綱をとろうと頑張ってはいけない。来年ダメなら再来年と言ったように、時間にとらわれない自然体な姿勢が大切だ」と語った。

「ポツンと一軒家」郊外店に注目

NIKKEI LIVEでは、「ニューノーマル時代のヒットの法則バトル」と題して、土屋専務と中村直文・日本経済新聞編集委員がセッション。ヒット商品の変遷やコロナ禍で支持される商品について語り合った。

中村「1970年代から90年代初めまではモノがヒット商品の中心だった。最近はモノのヒット商品があまりない」

土屋氏「ワークマンは20世紀型。アウトドアで着るモノや道具を安くして、その分、バーベキューの肉は高いものを買ってもらう、という考え方で商品を作っている」

中村「コロナ後も消費者の生活は厳しくなりそうで、価格破壊は今後も求められそう。安い商品へのニーズは根強く残る」

土屋氏「(2020年の)日経MJヒット商品番付に郊外店が入っていたが、これは今後のキーワード。今はショッピングセンター(SC)に午前中に来たら午前中のうちに帰る、というように長居しなくなった。商圏の狭いSCが売れていて、大商圏(のSC)は厳しくなっている。そういう中で我々は『ポツンと一軒家』的な取り残された場所にある郊外店が多い。究極の『3密』回避だとも言える。郊外志向はヒントになる」

中村「コロナ禍では先が見通せない中、改めて自分を再発見する時代となった。キーワード的に言うと、3つの『元(もと)』がポイントになった。自宅やホームタウンの『足元』、スマホの『手元』、そして『目元』だ。もう1つのキーワードが『1人』。1人で楽しめるかが重要だ」

対談するワークマンの土屋専務(左)と中村編集委員

土屋氏「ヒットを作る立場からすると大きな仕掛けを作るのは難しくなっている。30人、40人で会議をするのも難しい。既存のモノの見せ方を変えるといった拡張型イノベーションが今後重要になりそうだ」

中村「環境に配慮したからといって、売れるわけではない。プラスアルファの価値がいる。日本企業はコストパフォーマンスに強いが、もう少し遊び心や文化性、アート性が必要だ」

土屋氏「会社の方針は『値上げをするな』。企業努力によって達成した方が美しいが、消費者に転嫁していては企業の存在意義がない。最近再生繊維の糸を使ったり、ジーンズのブリーチ(色落ち)をレーザー加工でしたりしている」

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